SIPSとは?ソーシャルメディアのおける消費者心理モデル
ここでは、SNSなどのソーシャルメディアを活用したマーケティング活動における消費者の心理を表すSIPSについて紹介します。今や、マーケティング活動においてソーシャルメディア戦略が重要であることは言うまでもありませんから、SIPSを理解することは有用でしょう。
SIPSとは?
マーケティング活動においては、最終的には消費者が自社の商品やサービスを購入してくれることが一つの大きな目標になります。ですが、どんな人であっても一足飛びに購入に至ってくれるはずはありません。
お金を出して購入するものである以上、多かれ少なかれ失敗したくないという意識が働きますから、納得して始めて購入に至ることになります。つまり消費者の心理には段階があり、どの段階にどれくらいの消費者がいるのかを把握することはマーケティングの上で重要です。
どこかの段階で大きなギャップが生じているのであればそのポイントを集中的に改善するといった対策を打つことができるからです。実態をよく把握できていないと打ち手が的外れなものになるおそれも十分にあることは分かるでしょう。また、ソーシャルメディアを活用した戦略の場合、必ずしも購入が最終目標にはならないかもしれません。それ以外にも十分な貢献をしてくれるケースもあるからです。これらの考え方を含めたフレームワークがSIPSです。
SIPSの4段階
ここからは、SIPSの4段階について紹介します。おそらくもうお分かりでしょうが、このSIPSの4文字が消費者心理の4つの段階の頭文字になっており、その一つずつの段階について紹介していくことになります。
共感する
SIPSの最初のSはSympathizeであり、共感することです。ソーシャルメディアを利用する人の場合、心理段階の最初はそこで紹介されている商品なりサービスなりに共感する気持ちを持つことだとされています。
一般的な広告宣伝などのマーケティング活動においては、消費者の最初の段階は共感ではなく認識とか認知とされることが多いですが、これとの違いは意識しておいて良いでしょう。
消費者にとって、どちらかというと受動的に接することの多い一般的な広告や宣伝とは異なり、自ら能動的に利用するソーシャルメディアにおいては、単に何かの商品やサービスを知るだけでは最初の一段階目にさえ到達したとは言えず、認知するのは当然の前提として、さらにそれに対して共感を得て初めて最初の一段階目に到達したと言えるという考え方です。
つまり、ソーシャルメディアを利用したマーケティング活動においては、商品やサービスの単なる紹介だけでは不十分で、共感を得やすい情報も併せて掲載する必要があるでしょう。
確認する
SIPSの2段階目のIはIdentifyであり、確認することです。何を確認するのかと言えば、その商品やサービスに対して自分が共感したことが本当に間違っていないのか、多くの人の賛同が得られているのか、実は間違った認識ではないのかを確かめて安心しようとする行動になります。
仮に自分が本当に良いと思ったものであれば、多くの人が同じように良いと思っているものでなくても購入に至るというのは、いわゆるエッジなものであれば別にさほど珍しいことではありません。数は少ないけれどもコアなファンを得ている商品やサービスというのは当然存在します。
ですが全体から見ればこれはあくまで例外であって、ソーシャルメディアを利用するような場合には、やはり多くの人が良いと思っているかどうかに自分の行動が左右されるケースが多いことは事実です。ですからこの段階では広く称賛されていること、広く勧められているものであることがしっかりと分かるようなマーケティング戦略を取ることが重要になってきます。
参加する
3つ目の心理段階を表すPはParticipateであり、参加することです。何のことかと思われるかもしれませんが、これは複数の意味を含んでおり、それらをまとめて参加と呼んでいます。もちろん、最も分かりやすく重要な行動は実際にその商品やサービスを購入することです。
ですが、ソーシャルメディアの場合、既にこれを利用したことのある人であれば分かるとおり、購入以外にも重要で、企業側にとってのありがたい行動はあります。代表的なものとしては、いいねボタンを押すなど高い評価をするとか、チャンネル登録をする、フォローするといった行動が挙げられます。
これは確かに売り上げという意味で企業の業績に直接貢献するわけではありませんが、いわば消費者自身が企業担当者に成り代わってマーケティング活動を自主的に行ってくれているようなもので、売り上げという数字では計れないメリットを企業側にもたらしますから、重要な行動として参加するという段階にまとめることができます。
共有、拡散する
最後のSはShare & Spreadであり、共有と拡散です。先ほどの3つ目の参加するという段階を振り返って頂ければ、実は結構重複している部分があるのではないかという気もするかもしれませんが、ソーシャルメディアにおいては共有や拡散は極めて重要な段階であるために、あえて独立した4つ目の段階としているという考え方です。
そもそも、ソーシャルメディアとは共有と拡散のために存在していると言っても過言ではありません。そして、消費者がしっかりと共有や拡散を行ってくれることで、他の消費者におけるSIPSの1段階目の共感とか、2段階目の確認がよりスムーズに進むという大きなメリットがあることを忘れてはいけません。
つまり、SIPSはこの4つの段階だけで単なる一本のはしごのように捉えるのではなく、4段階目のShare & Spreadからまた1段階目のSympathizeや2段階目のIdentifyに戻って、いわば上りのらせん階段のように好循環のサイクルを構成することができるという意味も有しています。
SIPS以外のフレームワーク
マーケティング活動における消費者心理の段階を表すフレームワークは、何もSIPSが唯一の解というわけではありません。他にもいろいろなフレームワークが提唱されています。有名なものとしてAIDMAモデルと呼ばれるものがあります。
これは今から100年も前の、インターネットはもちろんテレビや電話さえも普及していなかった時代のもので、このままソーシャルメディアに当てはめることはあまり適切でないでしょうが、人間の心理というのは多少時代が変わったところで基本は大きく変わるものでないという見方もできますから、参考にはなるかもしれません。
簡単に紹介しておきますと、AIDMAもまた5つの消費者心理段階の頭文字を取ったもので、最初のAはAttentionつまり認知、IはInterestで興味、DはDesireで欲求、MはMemoryで記憶、そして最後のAはActionで最終的な購買行動を指します。
この他にはAISASモデルと呼ばれるものもあり、こちらはインターネット普及後に提唱されました。2つのAとIはAIDMAのものと同じですが、2つあるSはSearchつまり検索とShareつまり共有であり、確かにインターネット時代を反映していると言えるでしょう。
まとめ
ここまで、ソーシャルメディアを利用したマーケティング戦略モデルであるSIPSについて紹介してきました。ソーシャルメディアというのは、それを利用する人の心理も含めて一般の広告宣伝媒体とはかなり異なった特性を持っており、使い方によっては大きな威力を発揮します。
そして、SIPSモデルで重要なことは、4段階目のSから1段階目のSにまた戻るという、正のスパイラルループを形成することを強く意識することです。これが実現可能というのがソーシャルメディアの持つ最大の力で、他のマーケティング手法ではなかなか実現困難なことと言っても良いでしょう。ソーシャルメディアを利用する以上は、この力を最大限に発揮できるように取り組みましょう。