ATT (AppTrackingTransparency)とは?導入による様々な影響を徹底解説

最終更新日 : 2021-06-10 Box

Appleは、2021年4月末のiOS14.5アップデートに伴って、ユーザーのプライバシーに配慮するためのATT (AppTrackingTransparency)というフレームワークを導入しました。

ATTの導入は、モバイル広告市場に大きな影響を与えることが予想されていますが、ATTについて詳しく知らないという方も少なくないでしょう。

そこで、ここではATTの概要と、ATT導入が各方面に与える影響について解説していきます。

ATT (AppTrackingTransparency)とは?

ATT(AppTrackingTransparency)とは、ユーザーのプライバシーを守るためにAppleが導入したフレームワークです。

Appleは、ユーザーの端末にIDFAというデバイスIDをランダムで割り当てていますが、これまで広告主やデータ仲介事業者などは、ユーザーが取得拒否の設定をしていない限り、IDFAをユーザーの許可を得ずに取得することができました。

そして、取得したIDFAを使って、ユーザーの広告エンゲージメントやアプリ内のユーザー行動を分析することで、各ユーザーに適したターゲティング広告の配信などを行ってきました。

しかし、iOS14.5アップデートに伴って導入されたATTによって、広告主側はユーザーの許可を得なければIDFAを取得できなくなりました。

ユーザーの許可なしにIDFAを取得できなくなったことによって、今後は取得が非常に困難になると予想されており、多方面への影響が懸念されています。

ATT導入による影響

ATTの導入は、多方面に多大な影響を与えると予想されています。ここからは、iOSアプリの開発者・企業、広告主・マーケター、ユーザーのそれぞれが受ける影響について確認していきましょう。

1.iOSアプリ開発者・企業への影響

現在、iOS向けアプリをAppStoreに公開している開発者・企業は、ユーザーデータのトラッキングを行っておらず今後も行う予定がないケース、トラッキングは行っているがターゲティング広告目的でデータ収集をしているわけではないケース、トラッキングに基づいてターゲティング広告を表示しており今後も続けていく予定があるケースなどに分けられます。

これら中で、ATT導入の影響を受けるのは最後に挙げたケースで、今後もユーザーデータのトラッキングを行う予定であれば、アプリ内でポップアップメッセージを表示させてIDFAの取得の同意をユーザに求める必要があります。

ユーザーの同意が得られれば、ATT導入前とほとんど動作が変わらないので、いかにしてユーザーの同意率を高めていくのかが課題となりますが、アプリ開発者・企業が許諾ポップアップを表示できる機会は1回のみです。

そのため、ユーザーの同意率を高めるためにはアプリの最適化を図る必要があります。

2.広告主・マーケターへの影響

ユーザーの同意なしでIDFAの取得ができなくなったことにより、IDFAを取得できる端末は大幅に減少すると予想されています。

これにより、広告主やマーケターは、広告配信のパフォーマンス低下という影響を受けることになるでしょう。

具体的には、ターゲティング精度が悪化したり、リターゲティングボリュームが減少したりする可能性が高いです。また、効果計測の精度悪化も予想されますが、アプリマーケティングを行う企業はROASを計測することができなくなったことで、中長期的な効果計測も難しくなっています。

このような影響を受けることになるため、今後は人への広告配信ではなく、広告枠への配信などへ予算を割くケースが増えていく可能性があります。

なお、Appleは、ATTとともに新たなトラッキングソリューションであるSKAdnetworkも導入しています。

今後は、このSKAdnetworkを活用した効果計測が主流となっていく可能性もありますが、現状ではどのようになるのかは未知数です。

3.ユーザーへの影響

ATTの導入によって、iOSユーザーは個人情報の管理を厳密かつ柔軟に行うことが可能となります。

ユーザーは、インストールしたアプリごとにIDFA取得許可の有無を決定できますが、許諾しない限りIDFAは取得されないため、ATTの導入は自身のユーザーデータが広告主などに提供されることに抵抗がある方にとって非常に歓迎すべきことだったと言えるでしょう。

また、iOSユーザーが今後リターゲティング広告を目にする機会は減少することが予想されます。

しかし、リターゲティング広告の表示機会が減少することは、ユーザーが全く興味を抱かない広告が表示される機会が増加することを意味しているので、一概に全てのユーザーにとって有益とは言い切れません

リリース後、Androidへの広告費が増加

上記の通り、ATTの導入の影響は数多くありますが、ATTリリースから2週間経過した時点での調査では、一部の広告主がiOSへの予算を削減して、Andoroidへの予算を増加させたことが発表されています。

また、Post-IDFA Allianceによると、4月26日から5月9日までの間にiOS14.5ユーザーの中でIDFA取得を許可したのは36.5%に留まっており、それに伴ってCMP(1,000回の広告掲載にかかる費用)が2.4%から8.73%の範囲で低下しました。

しかし、この調査結果はiOS14.5のユーザー数が少ない時点でのものなので、今後CPMは回復していくとも予想されています。

今後はAndroidでもトラッキングを制限する可能性

現在、Androidではユーザーデータのトラッキングに制限は設けられていませんが、海外ではGoogleがAndroid OS向けにアプリのトラッキングを制限する機能を開発中という報道がなされています。

仮にAndroidでもトラッキング制限機能が導入された場合、多方面にさらなる影響が及ぶことが予想されますが、この報道によるとGoogleが開発中の機能は、AppleのATTほど厳しいものではないとされています。

これは、広告によって莫大な収入を得ているGoogleが広告主側との対立を避けるためと言われており、サードパーティによるクッキーを制限する程度のものに留まる可能性が高いようです。

ATT (AppTrackingTransparency)まとめ

2021年4月末に導入されたATTは、多くのユーザーにとっては有益なものと言えますが、アプリ開発者や広告主などには大きな影響を与えると予想されています。

モバイル広告市場は2022年までに2800億ドルに達すると言われていますが、ATTの導入はその成長率に大きな影響を与えるでしょう。

しかし、ATTの導入によって今後どのような影響が出るのかは未知数な部分も多いので、最新の動向を常にチェックしていくことが重要です。

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