事業を成功させるためのKSFとは?そのメリットなどを解説
近年、企業が事業を成功させるためには、KSFを定めることが必要不可欠となりつつあります。
しかし、KSFというキーワードを聞いたことがあっても、その意味は何となくでしか理解できていない人も少なくないでしょう。そこで、ここではKSFについて、初心者向けに解説していきます。
KSFとは?
KSFとは「Key Success Factor」の頭文字を取った略語で、事業を成功に導くための要因のことを指します。
現在、経営戦略や販売戦略、マーケティング戦略などを立案することは事業を成功に導くためには必要不可欠となっていますが、KSFを明確にすることで様々な戦略立案に活かすことが可能です。
しかし、KSFは業界や企業によって異なるため、KSFを明確化させるには、市場の動向や顧客のニーズ、競合企業の動向などの外部環境と、自社の内部環境を分析する必要があります。
KSFを明確化させる手法としては、外部環境と内部環境を漏れなく分析できる3C分析・PEST分析・SWOT分析・バリューチェーン分析といったフレームワークを活用するのが一般的です。
KBFとは?
KSFと混同されがちなワードにKBFがあります。KBFとは「Key Buying Factor」の略語で、消費者が購入を決定する際に重視する要素や判断基準のことです。
商品やサービスの価格や機能、ブランド力などが代表的なKBFですが、近年はインターネット上の口コミなどもKBFに含まれるようになっています。
一般的に、KBFは消費者によって異なります。価格を重視する人もいれば、機能を重視する人もいるように、KBFは人や環境によって異なるため、KBFを抽出する際は初めにターゲットを明確化することが大切です。
また、KBFを導き出すことはKSFを明確化するヒントとなります。抽出したKBFをもとにして、自社で実現可能なものや、他者との差別化できる部分を整理していくことで、KSFが明確化されていきます。
KSFの必要性
KSFを設定する必要性は、日増しに高まっています。現在は、昔のようにモノを作ったり、サービスを提供すれば売れるという大量生産大量消費の時代ではありません。
市場にはモノやサービスが溢れているため、ターゲットを明確にしたり、他者との差別化や他者への優位性を築いたりしなければ、多様化する消費者のニーズに対応することはできないでしょう。
そのため、事業を成功に導くには、消費者に如何にして利用してもらうのかという戦略を立案することが必要不可欠です。
しかし、現代社会において消費者の購買行動は急速に変化しており、戦略立案には迅速性が求められるため、分析からKSFを抽出して、すみやかな事業戦略を立案する必要性が高まっています。
KSFのメリット
ここまでは、KSFの概要とその必要性について解説してきましたが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、KSFを設定することで得られるメリットについて紹介していくので、ひとつずつ確認していきましょう。
(1)プロジェクト自体の速度が高まる
KSFを設定する1つ目のメリットが、プロジェクト自体の速度が高まることです。 KSFを設定することは、事業戦略の目標を定めることと同じと見なせるため、やるべきことが明確化されます。
すると、プロジェクトに関わる全ての人が同じ目標に向かって行動することになるため、プロジェクトの速度が高まるというメリットが得られます。
特に、現在はインターネットやスマートフォン、SNSなどの普及によって、以前よりも市場の動向が目まぐるしく変化する時代です。
市場の動向にいち早く対応できなければ、競合他社に負けてしまう可能性が高まるでしょう。
そのため、現代社会において事業を成功させるには、迅速に事業戦略を立案して、プロジェクトの速度を高めることが重要となっています。
(2)事業全体のブレがなくなる
KSFを設定する2つ目のメリットが、事業全体のブレがなくなることです。
前述したように、KSFを設定することは事業戦略の目標を定めることと同じことと見なせますが、目標を定めることは事業を進めていく上での核となるため、事業全体のブレがなくなります。
しかし、核となる明確な目標が無いまま事業を進めていくと、成功する可能性が不明確な事業を展開してしまうといったリスクを抱えることになります。
事業の成功が不明確になるだけでなく、企業のブランディングも難しくなるため、消費者獲得も困難になるでしょう。
どのような事柄にも当てはまりますが、まずは目標を明確に定めて、そこに向かってブレずに進んでいくことが重要となります。
KSFの要素
KSFは業界や企業によって異なりますが、どのようなものが要素となるのでしょうか。一般的に、KSFはバリューチェーンに沿って考えられることが多く、主に7つの要素に分けられます。ここからは、バリューチェーンに沿ってKSFの要素について確認していきましょう。
(1)調達
バリューチェーンの中でも調達が重要となる業界が、石油業界やダイヤモンド販売業界、レアメタル業界などです。これらの業界では、消費者の満足度を満たすことよりも、如何にして調達するのかが事業を成功させる要素となります。
石油などの調達ルートを確保するには、政情が不安定であったり、民主主義が浸透していないといった国の政府と関係を築く必要がありますが、これは難易度が非常に高いため競合他社への優位性を築ける要素となり得ます。
(2)研究開発
医薬品や航空機、精密機器といった業界において重要となる要素は、研究開発です。これらの業界では、最新の技術を調査することや、新たな製造技術を開発することが事業を成功に導く要素となります。
例えば、医薬品業界では、消費者の健康上の問題を解決することが求められる業界なので、治療効果の高い医薬品を開発することが何よりも重要です。
また、法規制をクリアするための臨床試験も必要となります。さらに、特許切れした医薬品をもとに安価なジェネリック医薬品を開発することも具体的なKSFとなります。
(3)生産
バリューチェーンにおいて生産が重視されるのが、鉄鋼や造船、半導体、石油化学などの業界です。これらの業界では、低コストで製造する方法や、工場などの設備の規模、高品質で製造する技術、労働生産性などが競合他社への優位性を構築できる要素となります。
また、低コストに製品を生産するには、工場をどこに設置するのかといった要素も重要です。さらに、市場の動向に合わせて柔軟に生産する能力も、具体的なKSFとなり得る要素でしょう。
(4)品揃え
百貨店やコンビニ、部品メーカーなどの業界では、品揃えが重要です。 特に、百貨店やコンビニなどの業界においては、品揃えが代表的なKBFとなります。
消費者にとって、目的の商品があった場合に、どこで扱っているか分からないから、とりあえず何でも売っている百貨店やコンビニを覗いてみようというケースは非常に多いはずです。
そのため、仕入先との関係性を強化したり、優秀なバイヤーを雇ったりして、品揃えを充実させることが重要となります。
(5)広告、宣伝
化粧品や日用品、アパレルといった業界では、ブランド力や認知度を高めるための広告・宣伝が重要な要素となります。
例えば、化粧品業界においては、研究開発によって優れた商品を製造することも重要な要素となりますが、多くの消費者を獲得するには、有名なモデルを起用したり、テレビCMを数多く流したりした方が重要でしょう。
広告・宣伝に力を入れて、ブランド力や認知度を高めておくことで、消費者からの信頼を得ることが可能です。
(6)販売
保険や自動車、家電製品などの業界では、販売力や販売網が重要な要素です。 例えば、生命保険などの保険業界においては、他社との差別化も必要となりますが、担当者の販売力の方が事業を成功させるためには重要となります。
そのため、優秀な人材を採用したり、教育したりして販売力を強化することが必要です。 また、家電製品業界では、店舗での販売力を高めるだけでなく、ネット通販などの販売網を拡大させることも必要と言えるでしょう。
(7)サービス
法人向けのOA機器やエレベーター会社などでは、サービスの充実度が重要です。
例えば、法人向けのOA機器においては、数年間のリース契約を結ぶことが多いため、扱う製品の機能や品質とともに、定期的なメンテナンスなどのアフターサービスや、サポートセンターの充実度が顧客の購買意思決定を左右します。
そのため、利用期間中に顧客に快適に使用してもらうためのサポート体制を充実させることが、事業の成功を左右する要素となります。
まとめ
事業を成功に導くための要因であるKSFを設定することは、多様化する消費者のニーズや、急速に変化する市場の動向に対応するために必要不可欠になりつつあります。
KSFを設定することで、プロジェクト自体の速度が高まったり、事業全体のブレがなくなったりするメリットが得られますが、KSFは業界や企業によって異なります。
そのため、外部環境と内部環境を分析して、バリューチェーンのどの要素を重視するのかを見極めることが重要です。
また、市場は常に変化しているため、KSFも常にアップデートしていかなければ、あっという間に市場の変化に対応できなくなります。
したがって、KSFを設定したからと言って安心せずに、常に自社のKSFを設定し続けていくことが重要です。