ERMとは?その内容と必要性について大解説!
近年、IT技術の急速な進歩や経済のグローバル化などに伴って、企業が抱えるリスクは多様化しています。このような背景により、近年注目が集まっているのがERMというリスクマネジメントの手法です。ここでは、ERMの基本から、その重要性やメリットなどについて解説していきます。
ERMとは?
ERMとは、Enterprise Risk Managementの略称で、日本語では全社的リスクマネジメントや統合リスクマネジメントなどと呼ばれています。その名の通り、ERMとはリスクマネジメントの手法のひとつで、企業が経営をしていく上で起こる可能性があるあらゆるリスクに対して、企業全体で管理するという体制のことを指します。
従来のリスクマネジメントでは、リスクの種類によって個別の部署が対応するのが一般的で、例えば、財務関係のリスクがあると考えられる場合は、財務関係の部署がその管理を担当していました。これに対して、ERMではリスクの種類を問わずに、企業全体でリスクマネジメントするのが特徴です。
大まかな流れとしては、まず外的要因や内的要因などのリスクを把握することから始めます。そして、そのリスクが起こり得る可能性や、それが企業に与える影響がどの程度なのかを確認し、その対処方法を検討します。
リスクへの対応方法としては、大まかに低減・保有・回避・移転の4つがあり、発生可能性と影響度に応じて適切な方法を選択しなければいけません。その後は、継続的にモニタリングしつつ、リスクを評価・報告をして、検証と調整を繰り返していくのが基本的な流れです。
ERMの重要性
近年、企業を取り巻く環境は大きく変化しており、それに伴って企業が抱えるリスクは多様化・複雑化・巨大化しています。例えば、IT技術の進歩によって深刻化するサイバーテロによる情報漏えいのリスクは、一昔前では考えられなかった脅威の代表例でしょう。
また、情報漏えいのリスクだけでなく、虚偽の決算報告書の作成といった不正行為、食品業界における異物混入など、企業の信頼を損なうリスクは多種多様です。
さらには、為替変動による損失といった財務上のリスクや、海外進出失敗や買収失敗といった企業戦略上のリスクといったものも挙げられます。加えて、近年は東日本大震災などの大規模な自然災害が世界各地で起こっており、甚大な被害が予想される首都直下地震は、いつ発生してもおかしくないような状況です。
このように、企業が抱えるリスクは様々で、挙げればきりがありません。そのため、リスクマネジメントを実施することは、企業にとって欠かせないものであると言えるでしょう。
しかし、多様化・複雑化・巨大化するリスクに対して、各部門ごとに管理するという従来の方法では問題が生じることも多くなったため、企業全体でリスクマネジメントを実施する重要性が高まっています。
ERMの特徴
ERMは、各部門ごとに実施されるリスクマネジメント方法とは異なり、企業に属する全ての人の足並みを揃えることができるのが最大の特徴です。
基本的に、リスクの捉え方というのは各部門によって異なるため、ある部門においては深刻な脅威と捉えていたとしても、別の部門では大きな問題ではないと考えているというケースは意外と多いかと思います。
しかし、ERMであれば、企業全体で何がリスクとなり得るのかや、企業に与える影響度がどの程度なのかといった考え方を統一できるため、効率的で効果的なリスクマネジメントが可能となります。
また、異なるリスク同士でその影響度を比較して、優先順位を決定することができたり、複数の管理方法を連携させることで、より効率的なリスクマネージメントが可能になったりするのが特徴です。
ERMのメリット
ERMのメリットとしてはいくつか挙げられますが、最大のメリットは管理漏れが無くなることです。各部門ごとにリスク管理を実施していた場合、どうしても管理漏れが起こる可能性があります。
その結果、もう少し注意しておけば防げたであろう事故や不祥事によって、企業の信頼を失墜させる事態に陥る恐れがあります。しかし、企業全体でリスクマネジメントを実施するEMRでは、多角的な視点でリスクを把握するため、管理漏れの恐れを限りなくゼロにすることが可能です。
また、仮に事故や不祥事が起こったとしても、企業全体の足並みが揃っているため、迅速に対応して被害を最小限に留められるというメリットもあります。このように、リスクマネジメントは、企業全体で実施した方が効果的であると言えます。
ERMの必要性
現在、何のリスクマネジメントも実施していないという企業は存在しないでしょうが、今現在でも従来の部門別の管理方法を実施している企業は多いかと思います。
しかし、前述したように企業を取り巻く環境は日々変化しており、それに伴って企業が抱えるリスクは多様化・複雑化・巨大化しているため、従来の部門別の管理方法ではリスクに対して対処しきれなくなっているのが実情です。
また、会社法では大企業に対して内部統制体制の確立を求めていますが、ERMはこの要求の多くを満たすことができるという側面もあります。
ERMの相乗効果の最大化
従来の各部門別にリスクマネジメントを実施するという手法でも、場合によっては十分に機能することもありますが、各部門が協力・連携すれば相乗効果によって、より高い効果が期待できます。例えば、複数の部門において、似たような事故のリスクがあった場合を考えてみます。
仮に、その事故がある部門において起こった場合に、部門間で協力・連携の体制が整っていれば、すみやかに事故が起こった原因や経緯といった情報が共有されることで、別の部門で事故が発生するのを未然に防ぐことができるでしょう。
このように、企業全体でリスク管理に関する情報や経験、知識といったものを共有することで、相乗効果の最大化を図ることもERMの役割のひとつと言えます。
まとめ
企業全体でリスクマネジメントに取り組むERMは、多様化・複雑化・巨大化するリスクに対応するために欠かせない手法となりつつあります。
ただし、ERMを実施するには、各部門の理解と協力が必要不可欠です。もしも、各部門のトップがERMの必要性や重要性について正しく理解していないと、役に立っていないのではないかという疑問や、負担が大きいといった不満が出る恐れがあります。
このような疑問や不満が出てしまうと、ERMの効果を最大限得ること難しくなるでしょう。そのため、まずは社内全体にERMの意義を浸透させることが大切です。
また、ERMを導入する際は、いきなり理想の形を追求するのではなく、段階的に導入して、問題点を少しずつ改善していくことで社内に定着しやすくなります。