ニューロマーケティングとは?脳科学を活用したマーケティング手法を解説
インターネット技術の発展で市場が拡大しました。インターネットは変化のスピードも速く、広告が誰の目にも触れられずに埋もれることも珍しくありません。
売り上げ向上には販売促進戦略が大切ですが、いかに消費者の興味を引けるかやインターネットの変化に対応していくかは、販売戦略で頭を悩ませるものの一つです。
そうした状況の中に現れたのかニューロマーケティングであり、このマーケティング手法は人間の本能的なものを明らかにするものであり、普遍的なマーケティング手法になる可能性を秘めています。
ニューロマーケティングとは?
ニューロマーケティングとは、神経を表すニューロと商品販売活動を表すマーケティングとを組み合わせた言葉です。従来のマーケティングは消費者が言語化したり、その他何か表現できる手段で製品の評価、判断をしていました。これは今なお有効な手法ですが、人間の外面的なものしか明らかにできません。
例えば、アンケート項目には評価判断が数個しかなかったり、そもそも聞くべき項目が抜け落ちたていたりする場合があります。ニューロマーケティングは脳神経科学的に理解することで、消費者が表現できないものや無意識的なことまで明らかにできます。人間の思考や心理の深層により切り込んだマーケティング手法と言えるでしょう。
ニューロマーケティングが注目を集める理由
マーケティング手法は製品の売り上げのためには重要視すべきです。従来のマーケティング手法が人間の外面的なものを明らかにするのみでしたが、ニューロマーケティングの登場で人間の深層心理や思考といった内面をも明らかにすることが可能となりました。
ニューロマーケティングは製品のブランディングで効果的な方法になりますし、これまでにリサーチしてきたデータと照らし合わせることでその効果をより発揮することができます。
狙いが明らかすぎていて厚かましいと感じる広告などを時折目にすることがありますが、ニューロマーケティングを用いれば人間の思考や心理の深層を表現できるので、そうした厚かましい広告を創作してしまうことを避けられますし、消費者の興味をつい引いてしまうような広告を作ることが可能です。
人間の本能的なものを活用するニューロマーケティングは、時代の変化に関わりなく利用できる手法となる可能性を秘めています。
ニューロマーケティングで使用される3つの指標
従来のマーケティング手法は人間の外面的なものを明らかにしましたが、ニューロマーケティングは内面を明らかにすることを可能にしました。ニューロマーケティングの用語で言えば、かつては主観指標のみを使っていたが、加えて生理指標と行動指標を用いるようになったと言えます。
ニューロマーケティングには、生理指標、行動指標、主観指標の3つがあるということです。主観指標に加え、整理指標、行動指標という3つの相乗効果を意図したものとも言えます。
生理指標
生理指標とは、例えば嫌いなものを見てしまって「生理的に無理!」と言うときの生理のことを指します。生理的なものは自分の意志とは関係なしに反応しまいますが、その時に生じる心拍数や脳波の変化を解析するのが生理指標です。
自分の意志とは関係なしに起こるために、言葉や行為として表現されないものまでも明らかにすることができます。生理指標とは、人間の内面を明らかにするものだと考えられます。
行動指標
行動指標とは、身体や心理に起こる変化を解析します。例えば、興味のあるものを見たときに生じる視線の変化を記録するなどです。生理指標は意志とは全く関係なしに起こるものを記録しましたが、行動指標には多少の意志が入り込んでいます。
興味を引くものについ視線を向けてしまうのは誰にも経験のあることでしょう。視線の変化などは外面的にも明らかですから、行動指標とは外面と内面との中間的な事柄を理解するものだと考えられます。
主観指標
主観指標とは、アンケートなどでその人の好みなどを明らかにすることです。これは従来から用いられていた手法だと言えます。人間の外面的なものを理解するのが主観指標だと言えます。
ニューロマーケティングでは従来から用いられてきた主観指標も利用しますが、生理指標や行動指標との相乗効果を伴うので主観指標を単体で利用するよりもその効果が増していると考えられます。
ニューロマーケティングの活用事例
ニューロマーケティングにはいくつかの判断指標があってそのいずれもが人間の隠れた感情や思考を明らかにしますが、どのようにしてそれらの指標が活用されているのでしょう。
例えば、江崎グリコは長いスティック棒を前歯で噛むことによる脳血流量の変化を記録しましたが、その行為で脳が活性化するという結果が出たといいます。この結果は製品の満足度にも関わるでしょうし、頭脳を使うときの間食としてのマーケティングをも可能にするでしょう。その他にはどのような例があるのでしょう。
NTT
NTTは広告を見たときに生じる感情を明らかにしました。また、そこでは人工知能(AI)も盛んに利用されています。被験者が広告を見たときにどのような脳の活動をするかを記録し、その記録から広告をどのように知覚していたかをAIが判断、言語化し、その結果が制作者の意図と合致しているかを確かめる実験をしました。
広告を見た人がどのような印象を持ったかが明らかになることは、製品をどのように改善すべきかが判明しますし、より効果の高いものを制作できます。
別の実験では、同じ女性を異なるシチュエーションで写真に写し、その映り方によってどのように印象が変わるかという実験もNTTは脳科学的に明らかにしています。どのような印象を持たれるかがわかっていれば、どの写真をどの場面で利用すべきかが判明しますし、マーケティングにもつながるでしょう。
ペプシ・コカコーラ
2004年にマクルーアやモンタギューらが行われた実験では、ブランド名が脳の活動に影響を及ぼすということが明らかになりました。コーラが好きだという被験者に、ブランド名を明かして飲んだ場合と明かさないで飲んだ場合とで脳の活動がどのように変化するかという実験を行いました。
ブランド名を明かして飲んだ場合には前頭葉が活性化したのに対し、ブランド名を明かさないで飲んだ場合には脳の活動に変化がなかったといいます。同様の実験をペプシ好きに行っても結果は同じであったといいます。
VOLVO
車メーカーのVOLVOは、かっこよさについての実験を行いました。男女の被験者に複数の画像を見せてその脳波を計測しました。男性は泣いている赤ん坊よりもかっこいい車に感情をより動かされることが、女性は反対に泣いている赤ん坊に感情を動かされたことが判明しました。
また、男性はかっこいい車を運転することが自信につながる傾向にあることも明らかになったといいます。
ニューロマーケティング まとめ
近年の情報機器の進歩は目覚ましいものがあり、AIをはじめとする機会が人間社会に進出しつつあります。機械とどう向き合うかを考えることが必要になってきますが、ニューロマーケティングはその一例と言えるでしょう。かつてないほどのスピードで変化する社会に対し、反対に変化しないものを見極めるという対応策は必然と言えるかもしれません。
ニューロマーケティングは、感覚という時代によって変化するものではなく、脳の活動といった生体反応を重視することでより人間の本質的な部分に迫ろうとしています。時代が変わっても変化しない人間の本質を明るみにし、それをマーケティングへと応用することはある種の普遍性を秘めた試みだと言えないでしょうか。