BCPとは?緊急事態でも企業が事業継続するためのその重要性

最終更新日 : 2020-03-12 Box

近年、BCPを策定・導入する企業が増えていますが、BCPとは具体的に何を意味するのか理解できていない人も多いかと思います。そこで、ここでは近年注目を集めているBCPの意味と、なぜ導入する必要があるのかについて解説していきます。

BCPとは?

BCPとは、Business Continuity Planの頭文字を取った略語で、日本語では事業継続計画と言います。企業が何らかの緊急事態に直面したときに、被害を最小限に留めて事業を継続したり、早期復旧を図ったりするための方法を取り決めておく計画のことを指します。

企業にとっての緊急事態には様々なものが挙げられますが、最もイメージしやすいのは地震や台風、豪雨といった自然災害でしょう。また、停電や新型インフルエンザなどのパンデミック、サイバーテロといった外的リスクもBCPにおける緊急事態に含まれます。

加えて、企業が抱えているのは外的リスクだけではありません。企業は、食中毒や異物混入、製品の大量リコール、従業員の不祥事といった内的リスクも抱えています。

このように、企業の業務が停止する恐れがある緊急事態には様々なものがありますが、どのような事態が発生しても業務を止めないための方法を策定し、緊急事態が起きた場合に向けて準備しておくことがBCPの基本的な概念です。

また、BCPは、緊急事態が発生した際の対応マニュアルそのものを指すこともあります。さらには、BCPは単にマニュアルそのものを意味するだけではありません。基本的に、作成したマニュアルは、情報が古くならないようにアップデートを繰り返す必要があります。

加えて、定期的に訓練を実施して従業員に緊急時の対応を習得させておくことも重要です。このような、作成したマニュアルを保守・点検・運営するための業務全般もBCPが持つ意味に含まれます。

BCPとBCMの違いとは?

BCPについて考える際に、よくセットで使用される概念にBCMがありますが、これらは混同されがちなので違いについて理解しておきましょう。

BCMとは、Business Continuity Managementの略称で、事業継続マネジメントなどと訳されます。BCPは、いざ緊急事態が発生した際に役に立つものである必要があり、単に策定しただけでは意味がありません。

そのため、作成したマニュアルの見直し及び改善や、従業員を教育するための訓練、緊急時に使用する設備の点検・整備といった活動を定期的に実施していく必要があります。このような、策定したBCPを常に役立つ状態にするためにマネジメントしていくのがBCMという概念となります。

つまり、BCMとは緊急事態に備えるための活動全般のことを指す概念で、BCPはBCMの一部ということです。BCPは策定しただけでは機能しないので、策定後はBCMが機能しているのかを確認することが大切です。

BCPの導入が必須な理由

ここまで、BCPという概念の意味と、BCMとの違いについて解説してきましたが、近年BCPを導入する企業が増えているのは何故なのでしょうか。ここからは、BCPの導入が必須と言える4つの理由を紹介していきます。

(1)事前に決定しておくことで冷静な対応ができる

地震などの自然災害や火災などの緊急事態が発生した場合、事前に避難する方法や避難場所などを決めておかないと、顧客や従業員を命の危険にさらすことになります。

自然災害などが発生した場合、冷静になることが非常に大切ですが、特に発生直後は混乱が生じやすいため、避難の指示が出せなかったり、普段よりも誤った判断をしてしまったりする可能性は高まると言えるでしょう。その結果、顧客や従業員を守れなかったという最悪のケースにつながる恐れがあります。

しかし、事前に緊急事態が発生した場合の対処方法をまとめたマニュアルがあれば、マニュアル通りに行動すれば良いという心理状態になるため、冷静に行動することが可能となります。

そのため、自然災害などに対する対処方法を決めておくとともに、従業員に対してマニュアルの内容を浸透させておくことが大切です。

(2)いつ、何が起きるかは誰にもわからない

企業の業務が停止する可能性がある緊急事態には様々あることは前述したとおりですが、いつ何が起こるのかは誰にもわかりません。特に、日本では毎年のように大規模な自然災害が発生しているため、いつ自社が被害を受けるような災害が発生してもおかしくない状況です。

しかし、いざ緊急事態が発生してから、対処方法を考えていては正しく対処できない恐れがありますし、仮に正しい対処方法を思いついても手遅れであることがほとんどでしょう。

そこで、自然災害やサイバーテロ、従業員の不祥事といった緊急事態が起こったときに、どのように対処するのかを決めておくことで、適切な対処を迅速に行うことが可能となります。迅速に行動を開始することで、かりに業務が停止してしまったとしても、早期段階での復旧につながります。

そのため、どのような企業であっても、緊急事態への対処方法を決めておくことは必須であると言えるでしょう。

(3)供給連鎖を止めない企業努力が求められる

供給連鎖とは、商品を製造するための原材料の調達から、消費者の手に渡るまでの一連の流れのことで、サプライチェーンとも呼ばれます。近年は、供給連鎖における全ての業務を自社だけで行うのではなく、業務の一部を外部に委託するアウトソーシングも一般的になりつつあります。

しかし、供給連鎖における業務の中で、どこか1か所でも業務が停止してしまうと、事業全体が完全に停止してしまうという事態に陥りかねません。

例えば、原材料を調達する業務が停止してしまえば、生産などの業務も停止してしまい、消費者に商品が届かないという事態につながり、場合によっては社会全体に影響が及ぶ可能性があります。

そのため、どのような緊急事態が発生したとしても、供給連鎖を止めないための企業努力が社会から求められており、これがBCPを導入する企業が増えている要因のひとつとなっています。

(4)取り引き先、顧客などステークホルダーの信頼を得る

BCPを策定し、それを公にすることで、外部に向けて危機管理能力がある企業であることを示すことが可能です。これにより、取り引き先や顧客、株主といったステークホルダー(利害関係者)からの信頼を得ることにつながります。ステークホルダーから信頼を得ることは、事業を継続・発展させていく上で非常に重要な要素のひとつです。

また、現在BCPを策定・導入することは、法律で義務付けられているわけではありませんが、近年はBCPを導入する企業が増加傾向にあり、その流れは今後ますます加速していくことが予想されます。

そのため、今後はBCPを導入していないことが、企業の信頼度を低下させる要因になる可能性は非常に高いと考えられます。このような社会の変化に対応するためにも、今のうちにBCPを導入する必要性は高いと言えるでしょう。

BCP まとめ

企業の業務が停止してしまう恐れがある緊急事態には、自然災害やサイバーテロ、従業員の不祥事といったように様々なものが挙げられます。このような緊急事態はいつ起こるのか誰にもわかりませんが、いざ発生したときにのためにBCPを策定しておくことは非常に重要です。

また、BCPを策定することは、供給連鎖を止めないための企業努力として社会から求められているものになっているとともに、ステークホルダーからの信頼を得ることにもつながります。

ただし、BCPは単に作成するだけでは意味がなく、緊急事態が発生したときに機能するように、定期的に見直しと改善を図るとともに、従業員に浸透させるための訓練を実施しておくことが重要です。

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