ABC分析とは?そのデータ分析手法を解説
ここでは、企業が商品を販売し管理する際によく用いられる考え方であるABC分析について紹介します。これは決して複雑なものではなく、一通りの内容であれば一度読むだけでもほぼ理解することができるくらいに基本的なものであり、さらには単に商品の販売や管理以外の場面でも様々な応用が利くという汎用性の高さも注目点の一つです。
別に販売や管理に直接携わる人だけではなく、一般的な知識として持っておいても良いレベルと言えるでしょうから、少しでも興味のある人は読み進めてみてください。
ABC分析とは
ABC分析とは、簡単に言えば商品を例えば売上高の大きさによってランク付けをして分類することを指します。複数の商品を扱っている企業とか小売店において、どの商品も全て等しい売上高になっているというようなことは普通あり得ません。
ある商品はいわゆる売れ筋であって数多く売れ、売上高も大きいけれども、ある商品は1日に1個売れるかどうかだというように、商品によって差があるのが当然です。
このような場合、売上高の高い順に商品を並べ、累積の売上高が例えば60%に達するところまでの商品グループをAグループ、それを超えて次に例えば90%に達するところまでの商品グループをBグループ、そして売上高の残り10%を占める商品グループをCグループとするといったように、売上高に占める重要性の高い順にランク付けをして分類することがABC分析と呼ばれています。このABCは別に何かの英単語の頭文字という訳ではなく、単に順番を表しています。
ABC分析の考え方
このABC分析の考え方は、パレートの法則と呼ばれるものがベースになっています。パレートというのはイタリアの経済学者の名前で、80:20の法則とも呼ばれています。経済学で出てくる様々な指標とか数値などにおいて、その8割は実は構成要素中の2割が生み出しているという経験則です。
良く引き合いに出される話が働きアリの法則と呼ばれるもので、一つの巣の中の働きアリのうち、わずか2割のアリが全体の8割の食糧を集めてくるといった話は聞いたことのある人が多いでしょう。
商品販売の話に当てはめれば、わずか2割の商品が全体の8割の売り上げを上げているというようなことになります。ここで言いたいことは要するに、数ある商品の全てに等しく労力やコストをかけるのではなく、大きな比重を占める重要性の高い商品を重点的に考えなさいということです。
ちなみに、重要性というのは必ずしも売上高だけに着目すべきとは限りません。利益率としたほうが良い場合もあるでしょうし、売上個数としたほうが良い場合もあるでしょう。
ABC分析の手順
ここまでの説明でABC分析の基本は理解したとしても、具体的にどのように分析をすれば良いのかはまだイメージが湧きにくいかもしれませんので、その手順を紹介しましょう。これも別にさほど難しいことではありません。
ABCの分類
まずは商品をABCのグループに分類しなければなりません。この際に考慮すべき要素としては、まずはどのような数字に注目するかということです。先ほどから主に売上高に着目した説明をしてきていますが、別に売上高に着目するしか方法がないわけではありません。ですがこれは最も基本的な要素であることは間違いないでしょうから、特に理由が他にないのであれば売上高に着目して分類すれば良いでしょう。
どの数字に着目するかということと並んで考慮すべき要素として、ABCの各分類をどこで切るか、つまりどこまでの商品をAグループに入れ、どこまでをBグループ、どこから先を最後のCグループに入れるかということがあります。先ほどの説明では70%までをAグループ、70%から90%までをBグループ、90%以降をCグループとしましたが、これはあくまで一つの例に過ぎません。
グループ分けをする目的は分類することでそれぞれ異なった戦略を取りやすくするためですから、そのことを考え、まとまりのあるグループができるように配慮する必要があるでしょう。
極端な話をしますが、ある企業では極めて重要な大型製品が一つあり、単一のその商品だけで売り上げの80%を占めている一方で、他には1%の売り上げを占める商品が合計20品目あったとしますと、上のような分類の仕方では適切なグループ分けが行い難いのは明らかでしょう。これは極端すぎる例ですが、戦略を取りやすくなるような区分とする必要があります。
パレート図の作成
分類分けができれば、パレート図を作成して視覚化します。パレート図とは一種のグラフであり、売上高に着目するのであればそれぞれの商品がどれだけの売り上げを上げており、総売上高に占める割合がどの程度なのかが数字の表ではなくて視覚的に分かるようにしたものとなります。
言葉で説明すると難解に思えるかもしれませんが、売上高の多い順に左から商品を並べ、それぞれの売上高を棒グラフで示します。同じグラフ内に重ねるようにして、累積の売上高構成率を折れ線グラフにして示したものが即ちパレート図と呼ばれています。パレート図を見ると、左から売上高の高い順に商品が並んでおり、棒グラフは階段状に右下がりになっています。
一方で折れ線グラフのほうは累積の売上高率ですから、左から順に右肩上がりになっており、一番右のところで当然ながら100%を示すことになります。A,B,Cの各グループごとに棒グラフを色分けするなどすればより分かりやすいでしょう。
エクセルを使ったABC分析
ABC分析はエクセルを使って行うことも十分に可能です。特に高価なアプリケーションソフトなどは必要ありませんし、エクセルに高度に習熟しているような必要も特にありません。
この程度の作業はエクセルにはお手の物で、多少なりとも慣れた人であればそれこそ朝飯前の作業のはずです。それぞれの商品の商品名と売上高を表として入力し、並べ替え機能を利用して売上高の大きい順に並べかえれば第一段階は完成です。どこでグループ間の線引きをするかというのは先ほど述べたとおり自分で決定する必要がありますが、累積の売上高構成率というのもエクセル上での簡単な数式で求めることが可能です。
パレート図を作成することもエクセルで容易に行うことができます。データさえあれば、それを元にほぼ全てマウスでの選択という作業だけでパレート図を作成するグラフ作成機能がエクセルには備わっているためです。少しでもエクセルで表作成とかグラフ作成をしたことがある人なら簡単でしょう。
ABC分析の他の管理方法
ABC分析というのは、もちろん単に分析をすることに意味があるのではなく、分析した結果としてグループごとにどのような戦略を取るのかということが重要です。そして、率直に言えば、さして売上高に貢献していないCグループの商品群にはあまり労力やコストをかけずにやっていきましょうというのが通常の戦略になるでしょう。
ですが、ABC分析は絶対的な手法でも何でもなく、他の管理方法もあることを忘れてはいけません。一つの例がロングテール理論です。ロングテールという言葉の説明は省略しますが、要するにCグループに分類された商品群と同じような意味合いを持っています。
従来の商品管理手法では、Cグループは労力やコストばかり食う割に売り上げに貢献せず、従って場合によっては取り扱いを中止しようかということにもなりがちでした。ところが例えば実店舗を有さずネット販売に特化しているような形態の小売業においては、別にこのような商品群であってもそもそも大して労力やコストがかかっている訳ではないというケースもあります。
ネット販売であれば、店頭在庫はAグループであってもCグループであっても持っていないからで、こういうケースはそれに即した管理方法を取るのが適切でしょう。
まとめ
商品の販売や管理の戦略を立てる上で重要な分析手法であるABC分析について紹介してきました。どのようなケースであっても当てはまることでしょうが、複数のものに常に等しく労力やコストをかけるというのは、効率性という意味では適切でないことが多いです。
そういう戦略ではなく、重要なものは何かを見極め、それに大胆に大きく力を入れることが効率的だというのは非常に分かりやすく、また説得力のある話でしょう。
重要でないものはそれなりのやり方で細々と続けていくだけで十分であり、それで別に失うものは大きくないでしょうし、場合によっては切り捨ててしまったほうが全体としては良い場合もあるでしょう。そのような戦略的判断を支援してくれるのがABC分析です。