年5日は義務化!知っておきたい年次有給休暇について

最終更新日 : 2020-08-17 Box

有給休暇を取って旅行に行くという人もいるのでないでしょうか。会社員など働く人に馴染み深い有給休暇ですが、実は意外とよく知らないということも多くあります。働いている人なら誰でももらえるものなのか、休暇を取得しなかったらどうなるのか等知らないことも多いです。

世界的な視点で見ると、日本人は年次有給休暇の取得率が低いという問題もあります。個人の意識によるところも大きいですが、休暇を取りにくいといった社会的な構造も関係しています。年次有給休暇について、詳しく紹介します。

年次有給休暇とは?

年次有給休暇とは、一定の基準を満たす労働者に対して企業が与えなければいけない休暇のことをいいます。仕事を始めてから6か月以上勤務していることや全労働日のうち8割以上を出勤しているなど、一定の条件を満たしていれば10日以上の年次有給休暇が付与されることになっています。

これは正社員に限らず、契約社員・派遣社員・パート・アルバイト等様々な雇用形態の労働者に適用されます。企業は従業員が有給休暇を取得している間、1日の労働時間分の賃金を支払う必要があります。正社員の年次有給休暇の日数は、勤続年数が長くなるにつれて増えていきます。

6か月以上勤務していれば10日の年次有給休暇が付与され、1年半になると11日、2年半になると12日と付与される日数が増えます。最大で20日間の年次有給休暇が付与されます。1度取得した年次有給休暇を使うことができるのは、2年間と定められています。

2年を過ぎると消滅してしまうので注意が必要です。契約社員やパート、アルバイトの人は、勤続年数ではなく労働時間によって付与される日数が変わってきます。年次有給休暇は労働者に与えられた権利なので、企業側は断ることはできません。

なぜ義務化になったのか

年次有給休暇の取得は、2019年4月から労働基準法の下で義務化されました。なぜ義務化されたのかというと、日本における年次有給休暇の取得率の低さがあったからです。日本は欧米などからみると、休暇を取らず長時間残業をしているなど仕事を重視する風潮がありました。

しかし、長時間労働によって心身を病んだりすることも多く、ワークライフバランスが推進されるようになってきました。国を挙げて働き方改革を進める一環として、年次有給休暇の取得は義務化されています。

年次有給休暇の取得率を70%へ

日本の年次有給休暇の取得率は、厚生労働省の調査によると51.1%でした。これは世界から見ると非常に低い水準です。なぜ休暇を取得しないのかというと、日本人の個々の意識も大きく関係しています。日本では長時間働くことを美徳とする風潮があるので、自分1人だけ休んでいると周りに申し訳ないと感じる人が多いようです。

特に日本人は調和を重んじるので、チームで仕事をしていると和を乱してはいけないという気持ちになります。休暇だけではなく残業も多く、毎日遅くまで仕事をしているという人も多くいます。

そういった意識を変えるのは並大抵のことではないので、付与された年次有給休暇のうちの5日分は強制的に取得するように労働基準法が改正されました。日本政府は、2020年までに年次有給休暇の取得率を70%にするという目標を掲げています。強制的に休ませるというだけではなく、休みやすい環境を整えることで年次有給休暇の取得率を上げようとしています。

有給休暇の取得率が与える企業への影響

従業員が休まない方が企業にとってプラスになるイメージがありますが、実は企業にとっても良い影響があります。仕事を休めなくて働いているばかりだと心身が疲弊しますし、ストレスも溜まります。それが仕事への意欲を削ぐことにもなりますし、人間関係など職場の雰囲気を悪くする原因にもなります。有給休暇を取得してリフレッシュすることは、ストレスを緩和して仕事へのモチベーションをアップさせてくれます。

また、最近の若い世代はワークライフバランスを重視する人が多いので、企業のイメージアップにも繋がります。人手不足は企業にとっては大きなダメージですが、休みやすい環境を整えることで優秀な人材を確保することにも役立ちます。

年次有給休暇の付与方法

労働基準法で年次有給休暇は、入社した日を基準にして一定条件を満たせば付与されることになっています。しかし、この方法だと入社日が異なる人が多いと1人1人管理しなければならないので大変です。そこで基準日を設定して管理する場合もあります。この場合には、年次有給休暇を前倒しで与えることになります。

(1)半日・時間単位の付与

年次有給休暇は、1日単位で取得するのが基本になります。ただし、半日単位で取得することもできます。例えば、従業員が午前中だけ病院に行くので休みたいという時に活用できるので便利です。旅行に出かけるので、午後だけ休みたいというような場合もあります。

それから労使協定を締結していれば、時間単位で年次有給休暇を付与することもできます。1時間・2時間といった単位で休暇を取ることができますが、30分など分単位では認められていません。

半日や時間単位の年次有給休暇を取得できるかは、その会社の制度によって変わってきます。そういった制度を設けていなければ、半日・時間単位で取得することはできません。また、時間単位だと年に5日が限度とされています。

(2)時季変更権

年次有給休暇は労働者に与えられている正当な権利なので、企業はそれを拒むことはできません。どういった理由でも付与する義務があります。レジャーに行くとか旅行に行くといった理由でも大丈夫です。ただ、家にいたいという理由でも、企業はそれを拒むことはできないのが有給休暇です。ただし、企業側には時季変更権という権利があります。

労働者が請求した時季だと著しく業務に支障が出るような場合には、時季の変更を指示することができます。例えば、同じ日に何人もの従業員が休暇を希望した場合には、全員が休むと業務に支障が出てしまいます。そういった時には別の日に休むように指示することができます。ただし、忙しいというだけでは事業に支障が出るとは認められないことが多いです。

(3)計画的付与

年次有給休暇には、事業主があらかじめ休日を指定してその日を有給休暇として付与する計画的付与という方法もあります。例えば、ゴールデンウィークの前後に休日を設け、大型連休にするというのも計画的付与に該当します。年次有給休暇を使って夏休みを設けるということもあります。

年次有給休暇の計画的付与の対象となるので、付与された日数のうち5日を除いた日数になります。計画的付与を行うことで、年次有給休暇の取得率が向上できるのではないかと注目されています。ただし、計画的付与を導入するには就業規則へ明記することや労使協定を締結することなどが求められます。

年次有給休暇の計画的付与制度における注意点

年次有給休暇の計画的付与制度では、5日間だけは労働者が自由に日程を選択できるようにしなければなりません。例えば10日付与される人の場合には、5日間は計画的付与の対象となりますが残りの5日間はいつ休むか自由に選べます。年次有給休暇が20日間付与される人の場合には、15日間が計画的付与の対象となり残りの5日間は自由に選択できるようになります。

計画付与を導入することで、周りを気にせず休みやすくなるというメリットがあります。自分だけ有給休暇を取りづらいと感じている人は多く、周りも休みであれば自分も休んでも罪悪感を感じにくくなります。全員が一斉に休みを取るのであれば、休んだ人の分を別の人がカバーする必要もありません。引継ぎが必要ないので、その分の時間やコストを省くことにもなります。

また、事業者側にとってもメリットがあり、労務管理がしやすくなるので事業を計画的に進められます。計画的付与には、企業全体で一斉に付与する場合と班やグループ別に分けて交代制で付与する場合、シフトなどを組んで計画的に個人に付与する場合とがあります。企業全体で休みを取るのは、工場などで一斉にストップした方が効率的な職場などに向いています。

主に製造部門などで活用されることが多いです。企業全体といっても、事業所や支店ごとに付与するという場合もあります。企業や事業所全体で一斉に休むのが難しい場合には、グループやチームごとに休む方法が適しています。お正月やお盆、ゴールデンウィーク、シルバーウィークなどに組み合わせることで、大型連休にもすることができます。

土曜日や日曜日、祝日などに合わせて連休にすることも可能なので、サービス業や流通業など普段は連休を取りづらい人にも最適です。企業・事業所ごとに休むのもチームやグループごとに休むのも難しい場合には、計画的付与制度を活用して年次有給休暇を個人付与します。

カレンダーの並びの関係で木曜日と土曜日がお休みという場合には、金曜日を休日にして連休にするといったこともできます。こういった計画的付与制度を導入するには、就業規則に規定しなければなりません。それから従業員の過半数が組織している労働組合や労働者の過半数の代表者と書面で協定を締結する必要もあります。一度労使協定を締結すると、変更するのが面倒になるのがデメリットです。そのため締結する際には、慎重に検討する必要があります。

 

年次有給休暇まとめ

年次有給休暇は労働者の権利で、雇用形態に関わらず一定の条件を満たせば付与されます。付与される日数は、勤続年数や労働時間によって異なります。2019年4月から5日間の年次有給休暇の取得が義務付けられました。事業者が休日を設定して計画的に付与する制度もあります。

 

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