電子署名とは?電子印鑑との違いやメリット・デメリットを解説

最終更新日 : 2020-10-29 Box

ここでは電子署名について紹介します。コロナウイルスが契機になったという人も多いかもしれませんが、これまでの紙の上に自筆のサインとか印鑑を押すということがなかなかに煩わしく、このインターネット全盛の時代にこのようなサインや署名も電子的にできないものかと考えている人は少なくないでしょう。

実はそのためには電子署名というものが別にコロナウイルスの発生などとは無関係にそれ以前から存在しています。

そこで、これについて理解を深め、いざ自分が利用するとなったときに戸惑うようなことのないようにしておきましょう。

一方で、サインや署名というのは自分自身を証明する大事なものでもあり、電子という目に見えない形で行うことに不安もあるかもしれませんが、根拠のない不安は解消できるようにしましょう。

電子署名とは?

電子署名とは、分かりやすく言えば紙の上の自筆サインや印鑑などとは異なり、電子的に作成された文書に対して同じく電子的に付され、自筆のサインや印鑑などと同じ役割を果たすものということになります。

これはある意味でイメージはしやすいかもしれませんが、もう少し突き詰めると、そもそも紙の上の自筆サインや印鑑は何のためのものなのかということから考える必要があります。

これは、その文書が正式なものであることを、サインや押印をした人が認めるという意味合いがあるでしょう。

電子署名であっても全く同じです。紙の上にあって人間の目にもはっきりと見えるものか、それとも電子的であるかという違いはあるものの、役割としてはその文書が正式なものであると認めるために付されるということです。

正式なものというのはいろいろな意味がありますが、例えば内容が間違っていないこととか、確かに自分が作成したり承認した文書であるということになるでしょう。

電子署名と電子サインとの違い

電子サインは電子署名と似たような意味合いで用いられている用語ですが、最も大きな違いは第三者機関による認証を経ているかどうかにあります。

電子署名の場合は、確かにその署名をしたのが本人に間違いないということを第三者機関が予め認証することが求められています。

これにより成りすましなどを防ぐようになっています。一方で単なる電子サインというのは、昨今ではいろいろなところで利用されていますが、例えば宅配便の受け取り時とか、スポーツクラブへの入会時などに、スマホやタブレットの画面上でタッチペンにより自分のサインをすることがあるでしょうが、このようなものは確かに電子ではあるものの、第三者機関の認定を受けていませんので厳密には本人性が担保されていないという違いがあります。

電子印鑑との違い

電子印鑑というのもまたよく混同される用語です。電子印鑑とは、電子上で作成された文書に対して同じように電子的に、一方では見た目上は実物の印鑑であるかのように押せるスタンプのことを指します。

これも、PDFファイルなどに赤い印鑑を電子的に押せるようになっているのを知っている人もいるでしょう。

ですが、これもやはり間違いなく本人によって正式なものであると認められたものかという点では怪しいとすぐに分かるでしょう。

本人ではなくてもその気になりさえすれば誰でも押せてしまいますし、コピーして別の文書に貼り付けるようなこともさほど難しいことではないからです。

そういう意味では、電子印鑑があってもその文書が正式なものであると認めるには根拠に欠けるということになります。

電子署名の仕組み

さて、ではこのように電子署名が付された文書は正式なものであると認められるためには、どのような仕組みが必要なのでしょうか。

タブレット上の電子サインやPDFファイルの電子印鑑とは異なる仕組みがそこには取り入れられています。ですが、その説明に入る前に、正式なものであると認められるために電子署名にはどのような要素が必要なのかをはっきりさせておきましょう。

一つは既に説明しています。つまり、その電子署名をした人が間違いなく本人であるという要素です。

当たり前のことですが、本人とは別の人が使える電子署名では困るでしょう。ですが、これだけでは実は足りません。

その電子署名をしたのが確かに本人であっても、署名した後に文書そのものが改ざんされていたり、あるいは電子署名が電子的にコピーされて別の文書に貼り付けられていたりするとどうなるでしょうか。

本人が電子署名した時点では間違いなく正式な文書であったとしても、これでは最終的にその電子署名のある文書が正式なものである保証がありません。

これを担保するために必要な要素がタイムスタンプであり、その電子署名がなされた時点を証明するものとなります。

電子署名がなされた時点が証明されれば、文書自体がなぜかそれよりも後に作成や改訂されているということになればそれは不適切と言えます。

この、本人性と、タイムスタンプの2点について、第三者機関である認証機関が確認し担保しているのが電子署名です。

電子署名の制約

電子署名には制約があります。それはまさに先ほど説明した内容そのものとなります。電子サインや電子印鑑であれば、アプリケーションのセッティングさえしておけば、使いたいときにすぐに使うことができます。

ですが電子署名はそうはいきません。本人性とタイムスタンプを確保するため、認証機関の関与が必須となります。

自分だけですぐに使えるわけではないというのは確かに大きな制約と言えるでしょう。

ただ、本人性の確認については電子署名を行う都度得る必要はありません。予め本人確認を一度済ませておきさえすれば、その後は毎回確認を得る必要はないということです。

これに対してタイムスタンプは、その性質上もその都度確認を得る必要があります。

電子署名をしたその時点を証明するためには、当然のことですが予め確認を済ませておくというようなことは物理的に不可能です。

実際には、電子署名をする都度認証を受け、その時点のデータが暗号化されて含まれる電子署名データを受け取るという仕組みになっています。

暗号化されているため、たとえ表面上の署名日時を改ざんしても内部データとの食い違いが生じ、そのような悪事を働いてもすぐに分かってしまう仕組みになっているということです。

電子署名法とは?

電子署名法とは2001年に制定された法律で、電子署名に対して法律上の地位を与えるものとなります。

いくら電子署名が既に書いたように仕組みや手続き的には紙の上のサインや印鑑と同等の効力を持っていたとしても、日本は法治国家ですから法律上の裏付けがなければ実際の社会で使うことはリスクが大きすぎるのは理解できるでしょう。

この法律では、原則的に、電子署名は紙の上の自筆サインや印鑑と同様に扱う旨が規定されています。

つまり、21世紀に入った時点で、既に電子署名には法律上の地位がしっかりと与えられ、自筆サインや赤い印肉の印鑑と同じですということがはっきりと明確にされているということで、そんなに昔からなのかと驚く人がいるかもしれません。なかなか普及が進まないのは何でも書面を重視する日本人の気質が表れているのかもしれませんが、それこそコロナウイルスが契機となって物事が前に進むというようなことが起こるかもしれません。

電子署名のメリット

電子署名のメリットというのはあまり説明を要しないかもしれません。

書面上での自筆のサインや印鑑の押印は、少なくともその書面が手元になければできません。テレワーク中であっても印鑑一つ押すためにわざわざ会社にいかなければならないという人もいるでしょう。

どうしても自宅にいて書面に押印しなければならないという場合には、その書面を自宅まで郵送などで送ってもらい、押印してまた相手先に送り返すといったことが必要になります。

これらが全て電子的に行えるとなるといろいろな意味で仕事のスピードアップにつながるでしょう。

また、ある意味で電子署名は紙の上の印鑑よりも確実性が高いということも言えます。自筆サインはともかくとして、その印鑑は本当に本人が押したものでしょうか、ということが問題になることもあるからです。

日本人は印鑑に対する信用性が極めて高いですが、その気になりさえすれば本当はその印鑑を押すべきでない別人がこっそり借りて押印するようなことも物理的には可能だからです。

ですが、電子署名の場合には間に第三者的な認証機関が関与しているということもあり、印鑑の貸し借りに相当するようなことは事実上不可能になっています。

電子署名のデメリット

電子署名のデメリットですが、何よりも利用にあたって第三者の認証機関を経由する必要があるというのは間違いなくデメリットと感じられるでしょう。

使いたいときにすぐに使えない、自分自身の即座の判断だけで使えないというのは煩わしく感じるものでしょう。

ですが、これは電子署名が本当に確実で信用のおけるものにするために必要なことですから止むを得ません。

また、使いやすさというものとはちょっと別の話にはなりますが、法律上、電子署名が認められておらず、書面が必須とされている文書があります。

ある種の契約書などがこれに該当しますが、このようなものは電子署名をしたくても行うことができず、デメリットと言えばそうなるでしょう。

電子契約サービスの有用性

さて、このような電子署名を取り入れた電子契約サービスの有用性ですが、既にある程度説明しているとおり、業務のスピードアップや効率化が期待できます。

紙の契約書に押印するとなると、まず文書を2通作成し、押印した上で相手方に送付して同じように押印、うち1通は相手方で保管し、もう1通は送り返してもらってこちらで保管といったように、文章で書いているだけでもかなり煩わしい作業が必要になりますが、電子の場合にはここまで煩雑な作業にはなりません。

作業のスピードアップや効率化だけではなく、契約書そのものが電子化できるというのも有用でしょう。

大量の契約書が発生するような会社の場合、用紙代や印刷代などの他、契約書を保管することも一苦労で多大なスペースを必要とすることもありますが、電子であれば広いスペースなど不要ですし、後から検索することも紙に比べれば容易です。

さらに、契約書にはその内容に応じて収入印紙を貼付することが求められていますが、電子契約にあたっては収入印紙が不要ということも法律で定められています。

これまで収入印紙代がかなりかかっていたという会社の場合、その削減効果も決して無視はできないでしょう。

特に取引金額が大きな契約を多数締結しているような会社の場合、契約書の用紙代や印刷代、保管スペースの問題ももちろんあるけれども、実は収入印紙代が削減できることが現実的には大きなメリットになると考えられることも多いようです。

電子署名まとめ

ここまで電子署名について紹介してきました。電子署名は、電子サインや電子印鑑と間違えられることもよくありますが、単なる形式上のものではなく、確かにその電子署名をしたのが本人であり、その日時に署名したということを第三者機関が認証しているという点で、署名された書類が正式なものであることを確実に担保できるものとなっています。

そして、それが社会上も通用するということは法律でも担保されています。第三者機関を利用するという煩わしさがあるものの、業務のスピードアップ、効率化、用紙やインク、保管スペースの削減などメリットのほうがはるかに大きいと言えるでしょう。

これからの時代、いつまでも紙に赤い印鑑ということに固執するのではなく、電子署名を大いに活用していきたいところです。

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