プロスペクト理論とは?行動経済学をマーケティングに活用する方法

最終更新日 : 2021-03-17 Box

プロスペクト理論は不確実性下における意思決定モデルの1つとして有名な理論ですが、これはマーケティングに活用することが可能です。

ここでは、プロスペクト理論の詳細とプロスペクト理論をマーケティング活用する方法まで解説します。

この理論やそれをマーケティングに取り入れることは難しいと思われがちですが、基礎的な知識や事例を参考にしながら学びを深めていくと問題ありません。

これらの知識を身につけ、ビジネスに活用することをおすすめします。

プロスペクト理論とは

そもそも、これがどういったものであるのか理解できていない人は非常に多いです。

理論の内容を簡単に説明すると、「目の前に提示されたものの損失度の度合いによって、人々の意思決定は変化する」という内容だと言えます。

プロスペクトは日本語で、期待や予想、見込みなどの意味を持っており、プロスペクト理論は予想される利害額や確立などの条件が意思決定に関わっていることを示した理論であると理解しておきましょう。

意思決定は全て合理的に行われるわけではなく、感情や感覚による歪みを伴っています。

小さな確率ほど大きく見積もり、大きな確率ほど小さく見積もってしまうという認知の歪みがあり、プロスペクト理論は意思決定の不合理さを徹底的に観察して示された理論です。

投資家を例とすると、収益が出ているときは損失を回避して利益を出せるのに、損失が出ていると取り返そうとして大きなリスクを取ってしまうという行動が該当するでしょう。

コンコルド効果

コンコルド効果はプロスペクト理論と類似したものであり、事業失敗と理解していながら投資がやめられなかった超音速旅客機コンコルドの名前が由来となっています。

失敗に終わると予測することができていながら、それまで投資した金銭や時間、労力を取り返そうと投資をやめることができなくなってしまった心理を表した言葉です。

損失を出している状況でありながら、リスクを取ってしまう点がプロスペクト理論と類似しています。

ただし、コンコルド効果は間違っていることが分かった上での行動ですが、プロスペクト理論は何故かリスクを取る行動が正しく思えるという認知の歪みが生じているといった違いがあることを知っておくべきです。

意思決定基準1 価値関数

プロスペクト理論では、意思決定の際に認知の歪みが起こっていることが示されています。

意思決定を歪ませる非合理的なノイズの影響があると言えますが、このノイズに該当するものは2種類あり、そのうちの1つが「価値関数」です。

価値関数は価値の感じ方の歪みを表した関数だと言えます。たとえば、人間は得をしたときの嬉しさよりも、損をしたときのガッカリ感のほうが強くなりがちですが、こういった歪みを示す関数です。

5万円をもらうという臨時収入があった場合と、5万円が入った封筒をなくしてしまったという場合では、後者のほうが心を揺さぶられてしまうケースが多いと言えます。

同じ金額でももたらされる価値である嬉しさやガッカリ感は金額と正比例ではないです。

経済学者の研究によると、損失がもたらす影響は利得のおよそ2.25倍だとされています。

価値関数をグラフにしてみると損失があったときのほうがグラフの傾きが急であり、損をした際のショックのほうが大きいことが分かるはずです。

価値関数に注目すると意思決定基準を明らかにすることができます。

意思決定基準2 確率加重関数

「確率加重関数」は確率の感じ方の歪みを表したものであり、高い確率は低く、低い確率は高く感じられるという歪みです。

宝くじの高額当選確率は2,000万分の1ですが、実際よりも大きく見積もるので意外と当たりそうだと考える人が多いと言えます。

一方で、手術を行うときに成功率は99%ですと言われると、失敗するかもしれないと不安になる傾向が強いです。

およそ40%がターニングポイントとなっており、約40%以下の確率は実際より高く、それ以上は実際よりも低く認識されることが多いと知っておきましょう。

個人個人でターニングポイントとなる数値は異なっていますが、いずれにしても確率の感じ方にも歪みが生じることは誰にでも当てはまります。

プロスペクト理論ではリスク下では人々の意思決定に不合理さが生まれるとされていますが、その裏づけとなる基準の1つが確率加重関数であると理解しておくことが大事です。

先に説明した価値関数と確率加重関数によるバイアス、つまり偏りが二重に作用することも多く、こういった心理傾向をマーケティングにも活用することができます。

コンコルド効果もプロスペクト理論もリスクを取ってしまうという点では同じだと解説しました。

意思決定基準を考慮して考えてみると、プロスペクト理論の場合は、価値関数や確率加重関数の影響を受けており、これらの心理傾向によって無意識のうちに価値や確率の感じ方に偏りが生じてしまうことが分かるはずです。

プロスペクト理論の意思決定基準を理解しておくと、コンコルド効果はプロスペクト理論のように無意識にバイアスがかかってしまうのではなく、全てを承知した上で敢えてリスクがある行為に出てしまうという違いがあることがよく分かるでしょう。

プロスペクト理論をマーケティングに活用する方法

プロスペクト理論はマーケティングに活用することができます。

ここまで説明したような理論の中身だけを知っていても活用することが難しいはずなので、これから紹介する言葉の内容や具体的な活用方法を覚えておくと良いです。

①フレーミング効果

フレーミング効果はプロスペクト理論を情報伝達の分野で応用しています。

表現方法が違えば受け手に与えられる印象が変わるという心理効果であり、意味が同じでも表現が違えば印象アップを狙えるはずです。

「600人中200人が確実に得をする政策」と「3分の1で全員が得して、3分の2で誰も得しない政策」であれば、前者の政策を選ぶ人が多い傾向があります。

一方で、「600人中400人が確実に損をする政策」と「3分の1で誰も損をしないが、3分の1で全員損をする政策」であれば、後者を支持する人が多いはずです。2つの例から分かりますが、利益に関する情報は確実性の高い表現、損失に関する情報はリスク表現が好まれがちだと言えます。

マーケティングの際にも、利益と損益のどちらを伝えるのか考慮し、表現方法を変えることによって有利に話を進めることができるようになるはずです。

②フィア・アピール

フィア・アピールはプロスペクト理論の利得より損失を重く評価する傾向を応用したものだと言えます。

フィアは恐怖を示す言葉ですが、「この商品を買わないと損をする」と顧客が被る損失をアピールすると購買意欲が高められます。

「この美容液で肌の潤いがアップします」というアピールよりも、「この美容液を使わなければ肌の潤いが失われます」と表現するほうが顧客の購買意欲を掻き立てると知っておくべきです。

保険商品であれば「事故に遭ったら遺された家族はどうなりますか」といったフィア・アピールが有効ですし、害虫駆除の場合も「シロアリによってマイホームが危険な状態かもしれません」というようなフィア・アピールが使えます。

「期間限定」「数量限定」のようなアピール方法もこれに該当し、手に入らないかもしれないという危機感を煽って購買意欲を掻き立てていることを知っておくと良いです。

いたずらに危機感を煽ることは控えるべきですが、上手く活用すれば様々な商品やサービスのアピールが効果的に実施できます。

③リスクリバーサル

リスクリバーサルはフィア・アピールの反対だと考えて良いです。

顧客の不安を取り除くことによって、購買意欲を高めるという技術です。

商品を購入する前には「効果がなかったらどうしよう」「損をするかもしれない」というような不安を抱くことがありますが、これらの不安を取り除くことがリスクリバーサルだと言えます。返金保証や分割払い、カスタマーサポートや修理保証などはリスクリバーサルです。

こういった保証などを用意しておくことで、顧客が安心して商品を購入できる環境を用意し、売上やサービス利用に繋げることができます。

実際に商品を見たり触ったりすることができない通販では、特にリスクリバーサルが重要だとされていることを理解しておくと良いです。

 

フレーミング効果・フィア・アピール・リスクリバーサルの3つは、プロスペクト理論を応用したものであり、それぞれがビジネスに役立てることができるものとなっていると説明しました。

情報伝達分野で応用したフレーミング効果は、表現方法で受け手に与える印象を大きく変えることが可能です。「顧客の10%だけ効果に満足していません」と正直に書いたとしても、「なんて誠実な企業なのだろう」と思ってもらうことはできません。「10%の人がダメだったならイマイチな製品なのだろう」と判断されるはずです。

これを「顧客の90%以上の人が満足しており、多くの人がリピートしています」と書き換えると、先ほどよりかなりポジティブな印象になります。

フィア・アピールは顧客が被る可能性のある損失を提示することでサービスの利用を促進する手法であり、「良いことがありますよ」と伝えるのではなく、「商品を利用しなければこういった悪いことがあります」と伝えることで効果が発揮されることをきちんと理解しておきましょう。

リスクリバーサルは顧客の不安を取り除く手法であり、「商品を購入しても損することがない」と示すことがサービス利用に繋がります。

プロスペクト理論を利用したマーケティング例

プロスペクト理論を利用したマーケティングは数多くあります。

フレーミング効果やリスクリバーサルなどでも簡単に説明しましたが、ここからは、マーケティング例について更に詳しく紹介するので、自社に取り入れられるものがないかどうか探してみると良いです。

①返金保証

「気に入らなかったら全額返金保証」「美味しくなかったら返金」などのアピールを見かけたことがあるかもしれませんが、これが返金保証に該当します。

興味がない商品や効果などに不安がある商品でも、「買ってみよう」という気持ちにさせることが可能です。

「最悪、全額返金されるから」という心理が顧客の中で働いており、結果的に購入のハードルを下げることに成功しています。

過去に「美味しくなかったら返金」というキャンペーンを実施した飲食店は、返金率が0.2%でした。

取り扱う商品によりますが、返金可能でも実際に返金されるリスクはそれほど大きくなく、返金保証を実施するメリットのほうが大きい傾向があると言えます。

②期間限定

期間限定キャンペーンを実施するサービスは非常に多いです。

スーパーやコンビニの商品だけでなく、スポーツジムの入会や不動産物件の購入などでもこのキャンペーンが実施されていることがあります。

あらゆる業界で取り入れることができる方法であり、「期間限定中にサービスを利用しなければならない」という利得を取ろうとする顧客の心理をつくことが可能です。

かなり身近な方法ですが、これもプロスペクト理論を活用したマーケティングとして知っておくべきだと言えます。

③ポイントサービス

ポイントサービスもプロスペクト理論を活用しており、ポイントには使用期限が設けられていることが多いです。

ポイントの存在を忘れた頃に「今月ポイントが失効します」というメールを送ると、顧客は「ポイントを使用しなければ」という損失を回避する心理状態になり、買うつもりがなくてもポイント消費のために商品を購入するようになります。

カードタイプのものなどは存在が忘れられやすいですが、近頃はアプリやメールと連動させていることが多く、これによってプロスペクト理論を活用したマーケティングを実施する企業が多いです。

④他社比較

他社比較も非常に重要なプロスペクト理論の応用だと言えます。

たとえば、自社と競合他社の顧客満足度が90%以上だったとき、数値を操作することはやってはいけないことです。

ですが、「自社のサービスは90%以上のお客様に満足していただいており、競合他社の類似サービスは10%のお客様が他社サービスへ移っています」と表現することはできます。

自社サービスが優位のように見えますが、実際にはどちらとも顧客満足度が90%以上であることを示しており、表現を変えることで自社を優位に見せることが可能です。

⑤希少性

希少性のアピールもプロスペクト理論をマーケティングに応用する際に重要だと言えます。

魅力的なオファーの機会を逃すことは顧客にとっての大きな損失だと感じさせることができるので、希少性のアピールが効果的です。

理由もなく「残り何個です」「残り何時間です」と表示しても胡散臭いだけですが、「1年で3kgしか収穫できない栗を使ったタルトです」などと、明確で正当な希少性をアピールすると顧客の心を揺さぶることができます。

プロスペクト理論まとめ

プロスペクト理論はマーケティングにも活用できる意思決定モデルの1つであり、マーケティング部門に在籍しているビジネスマンであれば理解しておくべき理論です。

しかしながら、この理論は難しいと思われることが多く、マーケティング部門に所属するビジネスマンでも詳しく理解していないことが多いと言えます。

プロスペクト理論の名前だけ知っていても意味はありません。こういった理論があるそうだという情報を持っていた場合でも、それをビジネスに繋げることはできないです。

確かに、プロスペクト理論の解説だけを見ると難しく感じられるかもしれませんが、ビジネスと絡めて具体的な話を見ていくと分かりやすいと感じる部分、自社にも取り入れることができそうだと感じる部分が多くあるはずなので、概要だけ見て難しそうだと諦めてはいけません。

具体的にマーケティングでプロスペクト理論が活用されている例としては、返金保証・期間限定キャンペーン・ポイントサービス・希少性のアピールなどをあげることが可能です。

返金保証はリスクリバーサルの1つだと言えます。期間限定キャンペーンやポイントサービス、希少性のアピールは、いずれも利用しなければ損をする恐れがあるという、人間の損失を嫌う性質や損失を回避したがる性質を考慮した仕組みです。

販売したいものがあっても上手く注目してもらうことができない、購入や情報拡散といったアクションに繋がらないというケースは多いと言えます。

興味を持ってもらって購入や情報拡散などのアクションを期待するのであれば、いずれかの手法、もしくはいくつかの手法を組み合わせてアピールすることが効果的です。

1度購入してくれる人はいるけれど2度目の購入に繋がらないのであれば、ポイントサービスの導入が効果的だと言えます。

ポイントが付与されると次回はポイントを消費して購入しようという発想に至りますし、消費されていないポイントがある場合は有効期限をメールなどで伝えることで、「損をしないために買い物をしてポイントを使おう」というアクションを起こしてもらえるはずです。

ここで紹介したプロスペクト理論を応用したマーケティング手法は、ほんの一部にすぎません。

業界や業種に応じて採用できる内容は違っていますし、自分たちでもプロスペクト理論に基づいた顧客の心理変化を考えながら戦略を練っていくことがおすすめです。

独自のアイデアを採択した戦略を施策することができれば、競合他社と差をつけることができたり、今まで以上に多くの顧客の獲得に繋がったりする可能性があります。

プロスペクト理論を活用したマーケティング手法には、他の便利なツールと結びつけられるものも多いです。

ポイントサービスを例とすると、ポイントに有効期限を設けて期限前にメールなどで通知することが効果的ですが、これは顧客管理システムやメール配信システムなどと組み合わせて実施することができます。

社内で導入しているツールとプロスペクト理論によるマーケティング手法を組み合わせることができるケースも多いため、ツールの有効活用のためにもこの理論を積極的に活用することがおすすめです。

プロスペクト理論をマーケティングに応用させることは難しいことではありません。

先人がすでに効果的であると証明している応用モデルもありますし、理論を元に自分たちで独自の手法を考えていくこともできます。

正しい知識やマーケティングとの関連性を知らなければ苦手意識を持つかもしれないので、きちんと知識や情報を得た上で、これが活用できるようにしておくべきです。

顧客のニーズは複雑化しており、顧客満足度を満たすことは年々難しくなっています。

プロスペクト理論を応用したマーケティング手法を適用させることで顧客満足度が高められることがあると知り、積極的に取り入れられるようにしておきましょう。

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