【2023年更新】バリューチェーンとは?意味や事業戦略のための分析方法を徹底解説!
自社の強みを見出して育てるためには、バリューチェーン分析という手法を用いることができます。
バリューチェーン分析は既に多くの企業で取り入られており、マーケティングを成功させるために理解しておくべき手法です。
ここではバリューチェーン分析の基本的な情報から実施方法、事例などを説明するので自社で活用するときの参考にしてください。
バリューチェーンとは?
バリューチェーンとは、ハーバードビジネススクールの教授であるマイケル・ポーター氏が用いた言葉です。
彼は自著の競争優位の戦略にてバリューチェーンという言葉を使用し、世界的にこの言葉が広まるようになりました。
原材料を調達してから顧客にサービスや商品が到達するまでに企業が行う全ての活動を、1本の鎖のようなチェーンと考えることができます。
モノのチェーンはサプライチェーンと呼ばれていますが、価値を含めたものをバリューチェーンと考えることが可能です。
多くの場合、調達から消費者のもとに届くまでには複数の企業が携わることになりますが、複数の会社のバリューチェーンが繋がって産業全体のチェーンが完成することも理解しておきましょう。
バリューチェーン分析で得られるメリット
企業がバリューチェーン分析を実施することで、いくつかのメリットを得ることができます。
具体的なメリットを解説するので、バリューチェーン分析の実施前に理解しておきましょう。
1.自社の強み・弱みがわかる
バリューチェーン分析によって、どのプロセスにおいてどういった価値が生み出されているか把握できるようになります。
活動ごとにバリューチェーンを切り分けて考えることになるため、自社の強みや弱みがある場所を明確に認識できるはずです。
強みや弱みを調べる手法は他にもありますが、工程ごとの付加価値や問題を知るために便利だと言えます。
バリューチェーン分析の結果を踏まえてマーケティング戦略を考えることで、既存の戦略よりも効果的な戦略を立てられるようになるでしょう。
2.競合の動向の予測・差別化ができる
競合他社の動向を予測したり、差別化を実現したりするためにもバリューチェーン分析が有効です。
バリューチェーン分析は自社のことを詳しく分析するためだけの方法だと勘違いしている人も多いですが、競合他社のバリューチェーンを自社で分析し、自社のものと比較することによって動向の予測や差別化を実現できるようになります。
深く自社について分析することができたとしても、他社と同じようなやり方になったり、他社より劣っているやり方であったりすると意味がありません。
バリューチェーン分析を実施するときには、自社だけでなく競合他社についても調査していくことによって、より充実した分析を行えるようになると理解しておくべきです。
3.経営資源の効率化
経営資源の効率化が実現できるというメリットもあります。
バリューチェーン分析では経営資源についても詳しく調べることになるため、自社が有している経営資源を洗い出し、有効に活用するための戦略を考えることが可能です。
優れた経営資源を保有していたとしても、存在や使われ方が明確でなければ適切に使用されていない可能性があります。
こちらの分析方法を用いるのであれば、自社の経営資源を細かく正確に把握することができ、効率化のために計画を立てられるようになります。
4.利益の最大化
バリューチェーン分析は、利益の最大化に繋げられるというメリットもあることを知っておくと良いです。
強みや弱みを理解した上でマーケティング戦略を立てたり、経営資源を有効に使えるようになったりするので、顧客満足度の上昇やコストカットなどを成功させられる可能性が高まります。
素晴らしいアイデアに感じられても、バリューチェーンを意識することなく思いつきでアイデアを取り入れてしまえば上手くいかないリスクが高いです。
実施した分析の結果を踏まえて改善していくことで、企業の現状を踏まえた戦略が考えられるので利益の最大化に繋がります。
バリューチェーンの構成要素
この分析方法では、構成要素に分けて調査を行うことも理解しておかなければなりません。
バリューチェーンの構成要素について解説するので、それぞれについて理解が深められるようにしておきましょう。
1.主活動
構成要素の1つには、主活動があります。企業活動において直接的な価値を生む活動が当てはまりますが、企業や業種ごとに該当する内容は異なる点に注意が必要です。
製造業を例に考えてみる場合は、購買・製造・物流・販売・サービスの5つの主活動をあげることができます。
主活動に含めるものは明確に決定されているわけではないため、自社で直接的な価値を生み出すプロセスだと判断する場合は主活動に分類して良いです。
もともと、バリューチェーン分析は製造業を中心に考案された手法なので、製造業以外では変更が必要となってもおかしくありません。
製造ではなく輸入した商品を売るなど他の方法でサービスを提供している場合は、主活動に含める内容を柔軟に変えてみてください。
2.支援活動
支援活動はバリューチェーンのもう1つの構成要素ですが、こちらは主活動をサポートするための活動です。
経営企画や財務、経理のような全体に関係する活動を行っている全般管理や商品設計や開発に関係する技術開発、人事や労務に関係する人事管理、原材料の仕入れや交渉を行う調達活動の4つが該当します。
直接的に価値を生み出す仕事とは言えませんが、商品やサービスが顧客に到達するまでに間接的な支援を行っている重要な活動です。
主活動と支援活動の内容が混ざってしまうと精度の高い分析を実現することができないので、支援活動の内容を正確に把握し、自社のバリューチェーンにおける間接的な支援活動を明確化しておくことが大切だと言えます。
バリューチェーンとサプライチェーンの違い
バリューチェーンとサプライチェーンは混同されやすいですが、全く違ったものであることを理解しておかなければなりません。
原材料の調達から販売までを含めた一連の流れに関することである点は同じですが、重視する部分は全く違っています。
サプライチェーンはモノやお金の流れに焦点を当てていますが、バリューチェーンは全ての活動を価値の連鎖として考えていることが特徴的です。
個々の活動が集合して企業活動が成り立っているのではなく、全ての活動は繋がっていると考えているのがバリューチェーンだと言えます。
焦点を当てている部分が異なっているので、実際に分析できる内容は大きく違っていることを知っておくと良いです。
アプローチ方法が違うだけでなく、達成できる内容にも違いがあるので、正しく使い分けることができなければ期待するような分析を行うことができません。
バリューチェーンとエコシステムの違い
エコシステムもバリューチェーンに似た言葉だとされていますが、これは企業同士が共存や協調を実現するための仕組みです。
企業同士の連携や連鎖がもたらす収益構造に焦点が当てられており、違う業界の企業を含む複数の企業で構成されていることが特徴だと言えます。
バリューチェーンの場合は自社だけで完結させることができますが、エコシステムを考える上では企業同士の連携が必要不可欠である点が異なるでしょう。
スマートフォンとスマートフォンアプリは、連携や連鎖によって莫大な収益構造を生み出しているシステムの1つだと言えます。
バリューチェーンとビジネスシステムの違い
ビジネスシステムもバリューチェーンと類似している言葉だと言われるケースが多いですが、これは製品やサービスが顧客に到達するまでの過程を指したものであり、事業活動の構造と過程が重視されていることを理解しておくべきです。
バリューチェーンは価値の連鎖を示していますが、ビジネスシステムは企業活動全体の構造やプロセスに着目しているという違いがあります。
ビジネスシステムはあくまでも効率的に企業活動を進めていくためのシステムであり、バリューチェーンのように価値に関しては考慮されていないことを理解しておくと良いです。
バリューチェーン分析の仕方
バリューチェーン分析を実施する前には、分析のやり方を正しく理解しておくことが大切だと言えます。
詳しいやり方を紹介するので参考にしてください。
1.自社のバリューチェーンの作成・把握
まずは自社のバリューチェーンの作成と把握を行う必要があります。
先ほど述べた主活動と支援活動のピックアップ作業を行うステップです。対象事業に関係した全ての活動を分類し、直接的な価値を生み出しているかどうかで主活動と支援活動に分けます。
主活動に関しては細分化が必要であり、より細かく書き出していくことで自社のバリューチェーンを正確に作成することが可能です。
製造業であれば購買なら材料選定と配送、製造なら加工と検品、販売は商品説明と決済などに細分化することができます。
2.コストの洗い出し
バリューチェーンが把握できたのであれば、コストの洗い出しを行うステップに進むことが可能です。
活動ごとの収益性や費用を把握するために重要なプロセスだと言えます。表計算ソフトなどを使用して、活動ごとのコストを一覧にすれば簡単に洗い出せるはずです。
同じ活動を複数の場所で行っている場合は、合算した金額を記入しておく必要があります。
コストを洗い出した後には各活動に費やしているコストの比率を計算したり、どのような要因に影響したコストなのか調べたりしておくことも大事です。
3.強み・弱みの分析
次は強みや弱みの分析に移ることができます。主活動と支援活動の両方で、それぞれ強みと弱みを出していくことが大事です。
商品企画を例にあげるのであれば、強みは商品開発スピードの速さ、弱みは他社デザインを参考にすることによる独自性の低さなどをあげることができます。
支援活動の全般管理を例とするのであれば、社員に裁量権が正しく付与されていることで意思決定が迅速という強み、情報共有が不十分であるという弱みをあげることもできるでしょう。
例を参考に、自社の強みと弱みを考えてみてください。
4.VRIO分析をする
VRIO分析も行っておく必要があります。経営資源の競争優位性を知るために活用できる手法であり、経済価値と希少性、模倣可能性と組織の4つに対する評価を行うことになると知っておくべきです。
4つの項目を順番に評価しますが、外部環境の機会活用や脅威の無力化に繋がる経営資源を持っている場合は経済価値があると判断できます。
同じ経営資源を持つ企業が少なければ希少性があり、獲得や開発が困難であれば模倣可能性は問題ありません。
更に、経営資源を活用できるだけの組織があれば、持続的に競争優位性が保てると評価できます。4つの評価で不十分な部分が多ければ、競争劣位であることが分かるはずです。
5.バリューチェーン分析を元にした検討
バリューチェーン分析を実施すれば終わりというわけではありません。
分析結果を参考にして、施策を検討することが大切だと言えます。
価値を重視して深く分析を行うことができているので、自社の強みを活かした施策、問題点が改善できるような施策を考えられるはずです。
バリューチェーン分析の注意点
便利なバリューチェーン分析ですが、実施の際には注意点があることを知っておく必要があります。分析はバリューチェーンを切り離して分析することになりますが、前後に問題がある可能性を疑うことも大事です。
場合によっては全体の流れを考えながら分析を進めていくことになります。
簡単に意思決定をしてはいけないことも重要で、コストが高い場合は削減すれば良いと安易に考えるかもしれませんが、コストをかけることが価値に繋がっているケースも多いです。
短絡的な考えを持たないことが、成功に繋がると言えます。
バリューチェーン分析の事例
バリューチェーン分析の分析事例を紹介します。事例を参考にすることで、自社でも上手く実施できるようにしておきましょう。
1.トヨタ
トヨタは独自のバリューチェーン分析の結果、モビリティカンパニーへ変革することを決定しました。
既存のバリューチェーンを維持拡大させながらも、情報通信技術を活用した取り組みを推進していくことを発表しています。
単に自動車をつくるだけではなく、マイカー以外の移動をシームレスに繋ぐサービスを開始しており、カーシェアリングやライドシェア、定額制のサブスクリプションサービスなどの提供を開始していることが特徴的です。
メンテナンスや保険、リースに関するバリューチェーンの確保も進めており、トヨタのバリューチェーン分析の例を参考にすると、他社とは違った強みで顧客を満足させられるような会社を目指していることが分かります。
2.IKEA
有名な家具量販店であるIKEAもバリューチェーン分析によって経営改革を成功させた企業の1つです。
IKEAのような家具量販店には設計・調達・製造・物流・販売という流れがありますが、同社は物流に注目し、物流コストを下げるために完成品での販売をやめたところ、輸送コストと在庫保管コストの両方を削減することができました。
顧客が自分で家具をつくるというバリューを付加したことで、物流における効率化を実現することができた例です。
手間が増えるので顧客満足度が低下すると思うかもしれませんが、節約されたコストが販売価格に反映されること、自分で家具をつくることで愛着がわくことで顧客満足度が低下することもなかったため、IKEAのバリューチェーン分析による改革は大成功だったと言えます。
バリューチェーン分析まとめ
バリューチェーン分析は自社の強みと弱みの両方を知ることができ、強みを育てたり弱みを改善したりするために役立てられる分析方法です。
利益を向上させたい場合や同業他社に負けたくない場合は、バリューチェーン分析を実施してみることをおすすめします。
基本的な特徴から実施方法、事例まで紹介したので、これらを参考にすれば自社でもバリューチェーン分析をスムーズに行えるはずです。
積極的にこの手法を用いることによって、より良いマーケティング活動が実現できるようにしてください。