オンラインで本人確認できるeKYCの選び方とおすすめ10選
金融業界を中心にeKYCを取り入れるケースが増えてきました。
まだ広く普及しているものではないので、名前だけ聞いたことがあるという人も多いはずです。
今後はますますeKYCが普及していくことが予測されるので、紹介する内容を参考に基礎的な知識を身につけておきましょう。
おすすめのサービスも紹介するので、導入の際には参考にしてください。
eKYCとは?
eKYCは「electronic Know Your Customer」の略称です。
「電子的に顧客を知る」と訳すことができます。以前から、KYCは本人確認手続きをあらわす言葉として知られていました。
そこに電子の意味があるelectronicという単語がつくことで、電子すなわちオンライン上で行う本人確認という意味を持つようになったと言えます。
KYCは犯罪による収益の移転防止に関する法律に準拠して行われるものであり、不正防止のためにも非常に重要な手続きです。
従来は対面でなければこの手続きを行うことが難しかったのですが、技術の進歩やシステム整備のおかげで、現在ではオンラインにてKYCが実施できるようになったと知っておきましょう。
eKYC導入の背景
eKYCが導入された背景には、本人確認が厳格化したこと、非対面手続きが重要視されるようになったことがあげられます。
テロ資金対策や振り込め詐欺対策として、これまで以上に本人確認を厳格に行うべきだと考えられるようになりました。
2017年以降、犯罪収益移転防止法が何度か改正されており、その中でオンラインだけで本人確認が完結できるようになったと言えます。
2020年からは新型コロナウイルス感染症の影響もあり、非対面や非接触の手続きが求められるようになったことも後押しとなったと言えるでしょう。
初めは金融機関で採用されたやり方でしたが、不正防止や感染症対策として金融機関以外でもeKYCが導入されるようになっていると言えます。
eKYCの利用シーン
多くの身近なことでもeKYCは取り入れられているので、具体的な利用シーンを知っておくと良いでしょう。
金融機関での口座開設が代表的なものだと言えますが、それ以外ではクレジットカードや保険、携帯電話の新規申し込みでもeKYCが使われています。
犯罪収益移転防止法を意識しなければならない業界は金融業界だけではないので、この法が適用される業界を中心に利用されることが多いです。
チケット販売サービスや行政における手続き、SNSやアプリの会員登録などでeKYCが普及していくことが予測されるでしょう。
利用シーンから分かるように、身近な様々なサービスでeKYCの普及が進んでいたり、今後の普及が予測されたりしています。
eKYCの種類
eKYCには2つの種類があり、大きく分けてブラウザ型とアプリ型があります。
ブラウザ型は利用者にホームページからアクセスしてもらう方法で、ホームページとeKYCシステムを事前に連携しておくことで本人確認が可能となります。
アプリ型は利用者にアプリをインストールしてもらう方法で、eKYCシステムが組み込まれたアプリがあれば連携は必要ありません。
サービス提供者はアプリ取得画面のリンクを用意しておく必要がありますが、アプリだけで処理できるので便利です。
eKYCを導入するのであれば、どちらの種類が自社に合っているのか見極める必要があります。
eKYC導入のメリット
ここからは、eKYCを導入することのメリットを紹介していくので、取り入れるかどうか迷っている場合は参考にしてみてください。
1.顧客の離脱率の低減
eKYCの導入によって、顧客の離脱率低減を期待できるようになります。
申し込み作業が面倒であれば、申し込みをやめてしまおうと考える顧客がいてもおかしくありません。
実際に、郵送手続きの手間、すぐに確認が終了しないことのストレスなどを理由に申し込みをやめてしまう人は少なくないです。
サービス利用の意思があったとしても、登録前にやめられてしまうと意味がありません。eKYCが導入されていれば、顧客はスムーズかつストレスフリーな本人確認を体験することができます。
簡単かつ楽に本人確認が済ませられるので、面倒さを理由に離脱する顧客が減っていくでしょう。
2.業務効率化・コスト削減
本人確認業務の効率化とこの業務におけるコストの削減も、導入することのメリットです。
昔ながらのやり方では、書類を郵送したり送られてきた書類を確認したりする作業に膨大な時間がかかります。
eKYCであればこれらの手間を削減することができるため、大幅な作業時間の短縮が可能です。
時間が削減できるだけでなく、コストの削減にも繋がります。
必要な作業が減ることで人件費を節約することもできますし、オンラインに切り替えることで郵送費用を削減することも可能です。
業務効率やコストを見直したい場合にも、eKYCの導入を検討するべきだと言えます。
eKYCを使った本人確認の方法
eKYCを使用した本人確認のやり方を紹介するので、この仕組みを導入するなら参考にしてみると良いでしょう。
1.「本人確認書類の画像」と「本人画像」
まずは「本人確認書類の画像」「本人画像」で確認する方法があります。
顧客から写真のある本人確認書類と本人の顔などが分かる画像を送信してもらい、これらを照合することで不正な申し込みでないかどうか判断することが可能です。
運転免許証やマイナンバーカード、スマホで撮影された画像が使用されることが多いと言えます。
画像を添付して送信してもらうだけでなく、ビデオ通話サービスを利用して確認する方法を選ぶことも可能です。
2「本人確認書類のICチップ情報」と「本人画像」
「本人確認書類のICチップ情報」「本人画像」の2種類で確認する方法もあります。
運転免許証やマイナンバーカードには、ICチップが組み込まれており、これを顧客が読み取る方法です。
FeliCaやNFCなどを用いて、スマホで読み込むことができます。
顧客から送信されたICチップ情報の正しさを確かめるためには、秘密鍵で暗号化済みのICチップ情報の送信を受けて、公開鍵によって復号して判断する方法が選ばれることが多いです。
3.銀行照会
本人確認書類やICチップ情報とともに、銀行照会で確認することもできます。
銀行で顧客の本人特定事項の照会を行ってもらう方法です。顧客から銀行情報を受け取った後に銀行で照会を行い、その顧客が所有者で間違いないか、銀行で本人確認が行われているか確認します。
既に他のサービスで本人照会が行われているのであれば安心です。
銀行だけではなく、クレジットカード会社でも同じような方法で情報の照会を行ってもらうことが可能です。
4.顧客名義口座への少額振込
顧客名義の口座へ少額振り込むことによって確認する方法もあります。
本人画像やICチップ情報と一緒に預貯金口座の情報を受け取り、サービス提供者はその口座に少額の振り込みを行い、顧客から振り込みを特定するための画像を受け取るケースが多いです。
銀行の協力が必要なだけではなく、少々手間がかかる方法だと言えます。
そのため、現在存在しているeKYCサービスでは、他のやり方が選ばれるケースがほとんどだと知っておきましょう。
eKYCサービスを選ぶポイント
eKYCサービスはたくさんあるので、その中から最適なものを選ぶ必要があります。
サービス選定時のポイントを紹介するので、自社に最適なものが見つけられるようにしておきましょう。
1.eKYCのタイプ
ブラウザ型かアプリ型かチェックしておくことが大事です。
eKYCサービスで提供されているものは、導入可能な形式に違いがあります。
導入できないという問題を避けるために、組み込む先に合っているかどうかの事前確認が必須です。
ブラウザ型とアプリ型のどちらを選ぶか考えるときには、自社ではどちらタイプが開発しやすいのか、自社の顧客からはどちらのタイプが好まれそうかというポイントで選んでいくことをおすすめします。
2.本人確認方法の対応種類
本人確認方法の対応種類も重要です。運転免許証とマイナンバーカードに対応しているeKYCサービスが多いですが、健康保険証を始めとする他の書類は非対応となっているケースもあるので注意が必要です。
もしも、運転免許証やマイナンバーカード以外の選択肢を用意したいと考えているのであれば、利用したいeKYCサービスでどういった書類に対応してもらえるのか細かく確認しておく必要があります。
健康保険証などに対応しているサービスは少ない傾向があるので、気をつけておきましょう。
3.コスト面
eKYCサービス選定時には、コスト面も気にしておく必要があります。継続的に使用していくことを考えたときに、予算オーバーとなってしまうことがないか確認しておくことが大事です。
ただし、価格の安さを最重視することはおすすめできません。
安いものは必要な機能や仕組みがない可能性もあるので、必要な機能を備えた上で予算内であるかという点を意識しておくと良いです。
4.カスタマイズ性
カスタマイズ性も大切なポイントだと言えます。
企業ごとに求めるeKYCサービスの内容は違っているはずですが、カスタマイズ性が高ければ自社にフィットするシステムで運用できるようになるはずです。
反対にカスタマイズ性が低ければ自由な使い方ができないので、eKYCサービスに求めることを明確にした上で期待するようなカスタマイズ性があるかどうかチェックしてみてください。
おすすめのeKYCサービス10選
これからは、おすすめのeKYCサービスを紹介します。
特徴や機能、価格について紹介するので、選定時の参考にしてください。
LIQUID eKYC
LIQUID eKYCはウェブとアプリの両方に対応したサービスです。
ハイレベルな顔認証やAI画像処理が可能であるだけでなく、特許出願済みの優れた真贋判定技術を有していることが特徴だと言えます。
個人番号通知カードや健康保険証、住民票に対応していることも特徴的です。
日本語と英語の両方に対応しているため、海外ユーザーが多い場合でも利用しやすいサービスだと言えます。
チェックボックス形式で容易に作業が進められますし、判断に迷った項目はスーパーバイザーにエスカレーション確認できる機能もあるので便利です。
初期費用は0円で1件当たりの価格は約50円の設定ですが、機能や利用条件などで価格に違いがあるので、気になる場合は直接問い合わせて見積もりを出してもらうことをおすすめします。
ProTech ID Cheker
ProTech ID Chekerを使えば、既存のウェブサイトにて本人確認認証が可能です。
タグ設置による簡単な作業で導入できますし、希望に応じてデザイン変更や基幹システム連携にも対応してもらえます。
管理画面は直感的に操作できるデザインなので、初めてeKYCサービスを利用する場合でも安心です。
本人確認書類の厚みまでチェックしたり、顔を正面だけでなく指定した角度に傾けて撮影したりする機能が搭載されており、より不正を防ぎやすい仕組みが採用されていると言えます。
値段については公表されていません。導入する企業の希望を踏まえた上で料金が伝えられる仕組みとなっているので、ProTech ID Chekerが気になる場合は問い合わせで詳細を確認してください。
LINE eKYC
LINE eKYCは利便性が高いeKYCサービスの1つです。
LINE公式アカウントの運用を行っている企業は多いですが、公式アカウントにもeKYCを導入することができます。
既存のウェブアプリや申し込みフォームなどに組み込むことも可能ですが、これらがない場合はLINE公式アカウントをつくってeKYCシステムを取り入れる方法もおすすめです。
審査過程では必要に応じてAIを設置できるので、自社の審査方針に合った使い方が可能となります。
APIで提供されているため、初期費用を抑えやすい点が魅力です。
オンプレミスにも対応しているため、自社の状況に合わせて選べます。費用に関しては要問い合わせとなっているため、公式ページから相談してみてください。
GMO顔認証eKYC
GMO顔認証eKYCは、現時点でスマホウェブブラウザに対応しているeKYCサービスであり、今後はアプリにも対応していく予定です。
電子証明書認証局を25年以上運営しているサービスが提供しているものなので、高いセキュリティ性を期待することができます。
API導入に対応しており初期費用は無料となっているので、開発費用を抑えたいと考えている場合にGMO顔認証eKYCはピッタリです。
既存サービスへ取り入れることも可能なので、柔軟な導入が可能だと言えます。
確認回数に応じた課金体系が用意されており、対応件数の下限設定はありません。
回数ごとのプラン料金は公開されていないため、問い合わせによって確認する必要があります。
TRUSTDOCK
TRUSTDOCKは、手厚いサポートを求める企業にピッタリのeKYCサービスです。
導入時だけでなく運用中も強力なバックアップ体制があるので、安心して運用することができます。
運用後の状況に応じて判断基準などを調整できる点も安心のポイントです。
定期的な報告だけでなく、分析に基づいた改善などのアドバイスを受けることもできます。
高い技術による正確な判定はもちろんのこと、時間を問わず1件5分程度の素早い確認を実現できるところも大きな魅力です。
初期費用と月額利用料金を支払うことになりますが、契約内容によって費用は大きく変わります。
希望する内容でコストは違ってくるので、まずは相談して見積もりを出してもらいましょう。
Digital KYC
Digital KYCは、顔認証制度世界1位を6回も受賞しているサービスによって提供されています。
顧客と本人確認書類を同時に撮影したり、書類の厚みを調べたりするための機能が搭載されていることが特徴的です。
運転免許証以外に在留カードを始めとする多彩な確認書類をカバーしているところもおすすめの理由だと言えます。
SDK形式で提供されるため、開発者がアプリに組み込むだけで簡単にeKYCを導入することが可能です。
BPOサービスも提供してもらえるため、本人確認作業の負担を大幅に減らすことができます。
こちらも利用料金は公表されていません。Digital KYCの利用を検討する場合は、料金の問い合わせが必要です。
Polarify eKYC
Polarify eKYCはアプリとブラウザの両方に対応しています。
世界最高水準のアルゴリズムが採用されており、政府機関や金融機関でも利用されているeKYCサービスです。
画面デザインや手続き方法を自由に決めることができるため、カスタマイズ性の高さを期待する場合にもおすすめだと言えます。
OCRやBPOといった外部サービスとの連携も可能です。導入を希望する場合、要件定義や基本設計からスタートし、開発とテストを経て導入が可能となります。
企業の要望に合わせて取り入れる内容が決まるため、料金プランは公表されていません。
Polarify eKYCを選びたい場合は、希望を伝えた上で料金を教えてもらう必要があります。
Deep Percept for eKYC
Deep Percept for eKYCは柔軟性が高いサービスです。
データ連携方式や周辺システムとの連携まで任せることができ、自社に合った内容に仕上げてもらうことができます。
業務に応じた必要な機能を追加してもらえるので、痒いところに手が届くブラウザ型eKYCサービスを求める場合にピッタリです。
採用されている照合システムやAIエンジンは全て自社開発された精度の高いものであり、こまめにアップデートや修正が行われている点も嬉しいポイントだと言えます。
優れた真贋判定機能も備わっているため、安心して導入することが可能です。
費用に関しては問い合わせが必要となっているため、利用を希望する場合は公式サイトから連絡する必要があります。
ネクスウェイ本人確認サービス
ネクスウェイ本人確認サービスはeKYC業務支援をワンストップで行うサービスです。
書類審査や確認記録の保存、転送不要郵送物の発送など、本人確認に必要となる全ての業務を任せることができます。
部分的に利用することもできるので、自社に必要なサービスだけ選んで利用することも可能です。
ブラウザ型とアプリ型の両方に対応しているため、どちらを希望する場合でも利用できます。
月ごとに利用プランを変更できるため、申し込みが多いタイミングだけ処理件数が多いプランに変更できて便利です。
クラウドサービスなので多額の初期費用が発生することはありません。料金は依頼内容ごとに違っているため、利用前に直接費用を尋ねる必要があります。
イセトーKYCソリューション
イセトーKYCソリューションは、ブラウザ上で動作するeKYCが導入できるサービスです。
本人画像の撮影ではランダムにポーズが指定されるため、不正防止対策もバッチリだと言えます。
柔軟に業務の切り出しを行うことができるため、自社に最適な方法で取り入れることが可能です。
音声とイラストガイドがあるので、ユーザーにも嬉しい仕様となっています。
料金を知りたい場合は、イセトーKYCソリューションに直接訪ねる必要があることを知っておきましょう。
eKYCの事例
eKYCを既に導入している企業もあります。たとえば、LINE Payでも本人確認をオンラインで済ませることが可能です。
本人確認方法は2通り用意されており、本人名義の口座を登録する銀行口座での確認、もしくは身分証明書と顔を一緒に撮影した写真を送信する方法があります。
審査で承認されると確認が完了となりますが、最短数分で審査が終わるため、実際に利用している人からは利便性が高いと高評価です。
メルペイでもeKYCが採用されています。登録できる銀行口座がない場合でも、アプリでかんたん本人確認という仕組みを利用することで、オンラインにて簡単に本人確認を完了させることが可能です。
撮影の際には顔を傾けるように指示される工夫が取り入れられており、不正防止対策がきちんと行われているeKYCであるところが高く評価されています。
eKYCまとめ
eKYCを取り入れることによって、本人確認の精度を高めることができたり、この業務に携わる社員の負担を減らしたりすることが可能です。
本人確認の厳格化と顧客が利用しやすいことを両立させなければならない状態になっているので、本人確認を必要としている企業はeKYCを積極的に取り入れてみると良いでしょう。
紹介したようなeKYCサービスを活用すればスムーズに導入できるので、前向きに検討することをおすすめします。