おすすめのETLツール15選と選ぶポイントを解説

現在、IoTテクノロジーの進歩やDXの推進などの影響から、企業が扱うデータ量は日々増大していますが、収集したデータの連携・統合・活用に欠かせないのがETLツールです。

ここでは、ETLツールの基本機能やメリットなどの基礎知識を解説するとともに、おすすめのETLツールについてもご紹介していきます。

ETLツールとは?

ETLツールとは、組織が保有するデータを収集・抽出し、用途に応じて加工した上で書き出しを行えるツールです。

ETLとは、「Extract(抽出)」「Transform(変換)」「Load(格納)」の頭文字を取った略語で、複数のデータソースに保存されているデータを抽出・変換・加工して統合データベース(DWH)で一元管理する際に用いられます。

統合データベースは、過去に収集した膨大なデータをまとめて管理できるというメリットがありますが、統合データベースに保管するデータは形式を揃えておかなければなりません。

この役割を担うのがETLツールで、販売管理システムや購買管理システムといった基幹システムに保存されているデータをDHWへと格納する際の工数を大幅に減らすことが可能です。

ETLツールの基本機能

上記の通り、ETLはExtract・Transform・Loadの略語となります。

これらはETLツールに搭載されている基本機能となりますが、ここからはそれぞれの機能について解説していきます。

1.Extract〔抽出〕

Extract(抽出)は、各データソースに保管されているデータを抽出して、一か所に集約するための機能です。

基幹システム・PC・クラウドサービスなどあらゆるデータソースと連携を図り、必要に応じて売上・予算・勤怠・会計・人事といったデータの抽出を行います。

2.Transform〔変換〕

Transform(変換)は、抽出したデータを分析しやすい形式のデータに変換するための機能です。

各データソースから抽出したデータは、多くの場合機械的な数値となっていますが、Transformを行うことで人間が分析しやすい形式に統一することができます。

3.Load〔格納〕

Load(格納)は、Transformしたデータを統合データベースへ保存するための機能です。

変換したデータをDHWに保管しておくことで、必要なときにBIツールですぐに分析に取りかかることができます。

Loadを行わないと分析のたびに抽出と変換が必要になるので、分析までに時間がかかってしまいます。

ETLとEAIの違い

ETLとよく似たツールにEAIがありますが、これら2種類のツールは使用目的が異なります。

EAIとは、「Enterprise Application Integration」の略で、組織内のシステムを統合するためのツールを指します。

EAIは企業合併に伴うシステム統合に利用されるケースが多く、ETLがデータを一か所に集約することを目的としているのに対し、EAIはシステム間の連携をスムーズにすることを目的としています。

ETLツールの利用メリット

ここまで、ETLツールの概要を解説してきましたが、ここからは導入した際の具体的なメリットについて確認していきましょう。

1.データをまとめて整理でき加工できる

ETLツールを利用するメリットとしてまず挙げられるのは、データをまとめて整理・加工できることです。

従来は、組織内に散在するシステムから必要なデータを取り出し、Excelなどで担当者が手作業でまとめる作業を行っていました。

しかし、ETLツールを導入すれば、組織内の各データソースから必要なデータをすばやく抽出して整理できるとともに、必要に応じて加工を行うことができます。

これにより担当者にかかる負担が軽減されるとともに、人為的なミスの予防にもつながります。

2.プログラムスキルが不要で利用できる

通常、複数のデータにまたがる高度な分析を行うためのシステムを構築するには、プログラムスキルが必要です。

そのため、専門的なスキルを持つ人材が組織内にいない場合、外部に委託する必要がありましたが、ETLツールを導入すればノンプログラミングで分析システムを構築できます。

加えて、メンテナンスについても組織内で行えるので、コスト削減にもつながります。

3.工数の削減

組織内に散在するデータソースからDWHへ保存し、その後にインデックスを再作成したりデータを加工したりするのは、多くの労力と時間がかかります。

データ移行・インデックス作成・データ加工のそれぞれ数時間を要することは決して珍しくなく、場合によっては数十時間かかるケースもあるでしょう。

しかし、ETLツールを利用すれば従来の方法の半分程度の労力に留められる可能性があり、データの加工処理に要する工数を大幅に削減することが可能です。

ETLツールのデメリット

上記の通り、ETLツールには様々なメリットがあります。

一方で、どのようなツールにもデメリットは存在するので注意が必要です。

1.コストがかかる

ETLツールのデメリットとしてまず挙げられるのは、導入コストがかかることです。

有料のETLツールの中には、数百万円から数千万円もの導入コストがかかるものもあります。

中には数万円ほどの月額料金で利用できるツールもありますが、高額な製品と比べると機能面で劣ります。

そのため、まずは無料トライアルなどを活用して、費用対効果をチェックした上で導入を決定すると良いでしょう。

2.学習コストがかかる

費用面だけでなく学習コストがかかるのもETLツールのデメリットです。

ETLツールは高度な機能が数多く搭載されており、それらを使いこなせば大きなメリットを得ることができますが、使い方をマスターするのに時間がかかります。

使い方を十分に理解した上で運用を開始すると、作業に時間がかかってしまうとともに、分析の精度も低下する恐れがあります。

ETLツールのメリットを最大限享受できなくなるので、ツール選定の際は学習コストが高すぎないか十分に確認しておくことが大切です。

ETLツールの選ぶポイント

現在、ETLツールは様々なベンダーから提供されていますが、ETLツールを選ぶ際は下記の4つのポイントを押さえておくことが大切です。

1.自社の規模、データの活用範囲と合っているか

ETLツールを選定する際は、まず自社の規模やデータ活用の範囲にマッチしているのかを確認しましょう。

ETLツールには、大規模なデータベースや大容量のデータを想定した大企業向けのものから、比較的シンプルな構成の中小企業向けのものまで様々なタイプの製品が存在します。

そのため、まずは自社の規模に合った製品を絞り込むことが大切です。また、スケジュール管理やオフィスなどの情報系データを主に扱いたいのか、人事給与や財務会計などの事業の中核となる基幹系データを扱いたいのかで選ぶべきツールやプランは異なります。

したがって、活用したいデータの範囲についても明確にした上で、導入するツール・プランを決定しましょう。

2.専門知識がなくても使えるか

運用に求められる専門知識も、ETLツール選定時にチェックしておきたい項目のひとつです。

ETLツールの利用には、基本的に高度なプログラミングスキルは不要ですが、中にはデータベースやSQLなどの知識が求められるものもあります。

一方で、ドラッグ&ドロップ操作など直感的に使用できるものも多くあるので、利用するスタッフのITスキルや知識に応じたツールを選ぶようにしましょう。

3.他社ツールと連携できるか

そもそもETLツールは、データソースからデータを抽出・変換して統合データベースに格納するためのツールなので、データソースとの連携ができなければ導入する意味はありません。

連携可能なデータソースはツールによって異なるので、ETLツールを選定する際は必ず自社が導入している他社ツールとの連携が可能かどうかチェックしておきましょう。

4.データの処理速度

ETLツールを選ぶ際は、データの処理速度にも注目しましょう。

データ処理の速度が遅いツールだと分析開始までに時間がかかってしまい、ETLツールで得られるメリットが薄れてしまいます。

そのため、データを分散して並列処理できるなど、処理速度を高めるための工夫が施されているツールかどうかも確認しておくことが大切です。

おすすめのETLツール15選

ここからは、数あるETLツールの中から特におすすめできるツールを15製品ご紹介していくので、是非ツール選定時の参考にしてみてください。

Waha!Transformer

Waha!Transformer」は、株式会社ユニリタが提供しているETLツールです。

大手企業を中心に2,000ライセンス以上の導入実績を誇るツールで、基幹系システム・クラウドデータベース・Web API・Excelファイルなど様々な環境のデータ抽出・変換・加工・連携が可能です。

SQLやプログラミングなどの専門知識も不要で、メモリに依存しないマルチスレッドによる高速処理ができるという特徴もあります。

加えて、純国産のツールでサポート体制も充実しているので、初めてETLツールを導入する場合でも安心です。

ASTERIA Warp Core

ASTERIA Warp Core」は、アステリア株式会社が提供しているETLツールです。

9,000社以上の導入実績を誇り、国内シェアで14年連続No.1を誇ります。アイコンをつなげるだけでデータ分析ができるため、専門知識を持たない方でも簡単に利用することが可能です。

また、データベース・クラウドサービス・Excelなど様々なデータソースとの連携が可能で、複数のデータソースへの連携を自動化してくれるRPA機能も有しています。

30日間にわたって、全ての機能が利用できる無料トライアルも提供されているのも嬉しいポイントです。

Precisely Connect〔旧Syncsort DMExpress〕

Precisely Connect」は、アメリカのPrecisely社が開発したETLツールです。

全世界の15,600社以上に導入されている実績があるツールで、業種や規模を問わず幅広い企業に利用されています。

また、「開発はシンプルに、処理時間は短く」をコンセプトに開発されたツールとなっており、GUIによる開発が可能なので利用者は意識せずとも高速な処理を開発することが可能です。

メインフレームから主要クラウドのプラットフォームに幅広く対応しているとともに、アクセス元のデータが更新されてもリアルタイムで同期されるという特徴もあります。

trocco

trocco」は、株式会社primeNumberが提供しているETLツールです。GUIで設定可能な7種類のテンプレートが提供されているので、プログラムなどの専門知識は不要ですが、Ruby・Python・Java・JavaScriptなどの言語で処理を記述することもできます。

データ転送・データマート作成・ジョブ管理なども可能なツールで、ETLの機能としてはマスキング・フィルタ・ハッシュ化・文字列置換・型変換・JSON展開などが搭載されています。

初期費用無料で、月額10万円から利用可能な月額定額制を採用したツールとなっているので、導入コストを抑えたいという場合におすすめです。

Talend

Talend」は、アメリカに本社を構えるTalend社が提供しているETLツールです。

世界中の数多くの企業で導入されており、ガードナー社が実施しているデータ総合ソリューションのベンダー20社に対する評価において5年連続でリーダーの評価を獲得している非常に有名なツールです。

GUIによる直感的な操作が可能なので初心者でも扱いやすく、主要なクラウドデータベースやパブリッククラウドベンダーに対応しています。

無料で利用できるオープンソース版も提供されているので、まずはオープンソース版を導入して、必要に応じて有料版への切り替えを検討するのがおすすめです。

RapidMiner

RapidMiner」は、株式会社KSKアナリティクスが提供しているETLツールです。

プログラムの知識がなくても高度な分析を行うことが可能で、操作もドラッグ&ドロップを基本としているので初心者でも簡単に扱えます。

また、機械学習を活用したモデリング機能により、データ加工の効率を高めることが可能で、継続利用することでモデルの精度も向上していきます。

なお、RapidMinerには無料版もありますが、10,000行以上のデータを扱う場合や日本語のマニュアル・サポートが必要な場合は有料版を利用する必要があります。

Reckoner

Reckoner」は、株式会社スリーシェイクが提供するクラウド型のETLツールです。

オンプレミスからクラウド、外部アプリケーションまで幅広いデータ連携が可能で、誰でも使える直感的なインターフェースも備わっています。

新たなデータ連携もストレスフリーで行えるとともに、転送処理をスケジュール指定することも可能です。サポート体制も充実しているので、初めてのETLツール導入の際でも安心です。

料金体系もシンプルで、使用した分だけ課金される完全従量課金制が採用されており、ベースとなる月額利用料などは一切発生しません。

IBM InfoSphere DataStage

IBM InfoSphere DataStage」は、日本アイ・ビー・エム株式会社が提供するETLツールです。

大企業向けのETLツールとなっており、並列処理およびロード・バランシング(負荷分散)によって大量のデータを高速処理することが可能です。

開発・テスト・デプロイといった一連のプロセスを自動化できるので、開発コストが軽減できるとともに、障害の検出や解決も自動化可能なのでインフラ管理のコスト削減も期待できます。

拡張性が高いという特徴もありますが、付加機能を追加料金なしで利用できるという魅力もあります。

DataSpider Cloud

DataSpider Cloud」は、iPaaSクラウド型のETLツールです。クラウド間のデータ連携に特化しており、kintone・Salesforce・AWS・Google・Microsoft Azure・Microsoft Dynamics 365など、幅広いクラウドサービスとの連携処理をノンプログラミングで作成できます。

純国産のツールなので、半角カナや西暦・和暦といったきめ細やかなデータ変換に対応しているのも魅力です。

加えて、独自のThunderbusの技術により、VPN不要で安全にオンプレミスとの連携が可能です。

Informatica PowerCenter

Informatica PowerCenter」は、アメリカのInformatica社が開発したETLツールです。

データ連携を変換パレットによるグラフィカルツールを活用して行うので、データ連携を視覚的に把握することが可能です。

これにより、専門知識がない方でも直感的に利用できるので、部門を超えてのデータ共有が容易になります。

あらゆるデータソースとの連携も可能で、データ量や複雑性にも対応可能な柔軟性も備えています。

Informatica PowerCenterは、規模や業種などを問わず様々な企業で導入されていますが、全社で社内データを活用したい企業に特におすすめです。

Pentaho

Pentaho」は、ETLとBI(データ分析基盤)がオールインワンとなっているツールです。

データの抽出から加工までをドラッグ&ドロップの直感的な操作で行えるとともに、100種類以上のデータソースに標準対応しています。

柔軟な分析が行えるという特徴もあり、大量のデータ処理もハイパフォーマンスで行うことができます。

OLAP分析・レポート・ダッシュボードなどの機能が搭載されているとともに、データ取り込み時に工数単位で結果を確認することも可能です。

30日間の無料お試し版も提供されているので、使用感を確かめてからの導入がおすすめです。

AWS Glue

AWS Glue」は、Amazonが提供するETLツールです。AWSのフルマネージドサービスで、分析・機械学習・アプリケーション開発用のデータ検出・準備・統合をサーバーレスで実施することができます。

データ統合に必要な機能が漏れなく搭載されているので、わずか数分間でデータを分析することができます。

視覚化インターフェイスが提供されているので直感的な操作が可能ですが、コードベースのインターフェースも提供されています。

また、使用した分だけ課金される従量課金制のツールとなっているので、使用頻度が低い場合でも無駄なコストは発生しません。

Qanat2.0

Qanat2.0」は、システム間の情報連携を効率化してくれるデータ連携ツールです。

ドラッグ&ドロップやアイコンなどによる直感的な操作で、企業内外のあらゆるデータを連携・統合できるので誰でも扱いやすいツールとなっています。

Salesforce・kintone・AmazonS3など豊富なアダプター連携により、基幹システムとクラウドのデータ連携が可能です。

スケジューリング機能が搭載されているのも特徴で、帳票作成や配信といった業務を自動化することで、担当者の負担軽減や作業効率の向上につなげることができます。

Stitch

Stitchは、Stitch社が提供するクラウド型ETLツールです。

100種類以上のデータソースに対応しており、ノーコードでの開発も可能です。分単位で設定可能なスケジューリング機能により詳細な繰り返し設定も可能で、エラーが発生した際に自動的に修復したり通知したりするエラー処理機能も充実しています。

また、定期的に脆弱性スキャンが自動的に実行され、セキュリティアップデートとパッチインストールが行われるので、常に高いセキュリティレベルを維持することが可能です。

Tableau Prep

Tableau Prep」は、Tableau社が提供するツールです。

分析用のデータを結合・形式変換・クリーニングできる「Prep Builder」と、データフローのスケジュール・監視・管理などが行える「Prep Conductor」の2種類の製品で構成されています。「

Tableau Prep」は正式にはデータプレパレーションツールなので、厳密に言うとETLツールではありませんが、「Tableau Prep」はETLと同じような処理を行うことが可能です。

ETLツールまとめ

ETLツールは、データの抽出・変換・書き出しなどの作業効率を大幅に向上させてくれるツールです。

そのため、扱うデータが膨大で処理が追い付かないという企業は導入を検討すべきですが、現在は数多くのETLツールが提供されています。

ツール選定を誤ると得られる効果が小さくなってしまうので、ツール選定時は自社の企業規模にマッチしているのか、専門知識が必要なのか、自社が導入しているデータソースとの連携が可能か、処理速度は十分かといった点を十分に確認することが大切です。

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