社内マニュアル作成のポイントやおすすめのマニュアル作成ツールを解説
終身雇用制度が崩壊し、企業から企業への転職が一般的になった現代において、マニュアルを残しておくことは非常に重要です。
マニュアルがないと業務の知識が俗人化し、社員が抜けてしまったタイミングでノウハウも消失してしまうからです。
そのようなことにならないよう、些細な業務もマニュアルを残し、誰が引き継いでも効率や質を落とすことなく業務ができる体制を作りましょう。
マニュアル作成ツールとは?
マニュアルを作る方法にも様々なものがあります。会社のパソコンであればたいてい入っているOfficeのワード関係のソフトを使えば、それっぽいマニュアルを作ることは可能です。
しかし作成者のまとめる能力によって質が変わってきてしまったり、作成にかなりの時間や手間がかかってしまうというデメリットがあります。
そこで活用したいのがマニュアル作成ツールです。
マニュアル作成ツールは簡単に作業手順を図式化したり、品質の高い編集をだれでも手軽にできるように開発されたソフトです。
企業のマニュアル作成の実態
実はマニュアル作成をワード系のツールに頼っている会社は圧倒的に多く、90%以上の会社がOfficeを利用しているという調査結果もあります。
Officeは便利なツールでほとんどのパソコンに入っているので使い勝っても良いですが、作成者が自由にデザインすることができるため、癖が出てきてしまうのが難点です。
作成者の編集能力にも左右され、マニュアルの品質の確保が難しくなる場合もあります。また、大量の画像や動画を挿入するとファイル自体が重くなってしまい、開くのに時間がかかってしまったり、必要なマニュアルを見つけるのが難しくなってしまうことも難点です。
個人がマニュアルを作ることで、バージョン管理が難しくなってしまい、最新のデータが個人のPCの中に埋もれてしまうという可能性もでてきます。
マニュアル作成ツールの利用メリット
マニュアル作成ツールにもいくつか種類がありますが、動画形式にすれば簡単に理解できるコンテンツを作ったり、手順式マニュアルにすれば作業工程ごとに理解を深めるのに役立てることがあります。
専用のツールなので決まったフォーマットから作成でき、個人の癖が出てしまうことも少なくなります。
1.マニュアルの質の向上とばらつきの防止
マニュアル作成ツールを導入するなかでも大きいメリットが、マニュアルの品質向上です。
せっかく作ったマニュアルも理解しにくい内容であれば意味がありません。別の人が読んだとき、人から細かく説明を受けなくても、マニュアルを読んだだけで内容が理解できるようになるのがゴール地点です。
マニュアル作成ツールは基本フォーマットが用意されているため、品質のばらつきを防ぐことができ、別々の人が作ったとしても内容にまとまりが出てきます。
画像や動画をうまく活用することで、文字だけでは伝わりにくい箇所を丁寧に説明することも可能です。
2.情報共有がしやすくなる
業務は常に一定というわけではなく、その時々に合わせて内容が変わることも珍しくありません。
そのため、マニュアルは一度作ったら終わりというわけではなく、工程が変わるたびに新しく改定していく必要があります。マニュアル作成ツールを使えばクラウドで一括管理することもできるため、追加された内容を自動更新でき、情報共有が簡単になります。いつ更新されたかも記録に残るので、長い間更新されていない場合は誰かが気づくこともでき、間違った古い工程でミスをする危険性も少なくなるかもしれません。
3.作成工数・コストの削減
Office製品でマニュアルを作るとなると、かなりの時間がかかります。時間がかかるということはそれだけ人件費もかかるため、コスト的にも負担は大きくなるでしょう。
マニュアル作成ツールのテンプレートは、フォーマットを統一するというだけでなく、作成にかかる時間を大幅に削減することにも役立ちます。
必要な画像を用意して加工するのにも時間がかかりますが、マニュアル作成ツールの中には画像を自動で適切なサイズに変更してくれるものもあるため、加工にかかる時間も短縮させることができます。
マニュアル作成ツールの選ぶポイント
マニュアル作成ツールにはいろいろなものがありますが、自社に合った製品を選ぶことが大切です。
無料のソフトもありますが、便利なものの中には有償のものも多いため、コストのことも考えて選択しましょう。
1.自社の使用用途にあっているか
用途に合わせたサービスを使うことは重要です。登録できるアカウント数や要領に制限があるため、膨大な量のマニュアルを作る必要があるときは、できるだけ容量の多いサービスを選ぶことが大事です。
また月額利用料や初期費用にも差があります。それほどページ数がない場合は容量のことを気にする必要がなくなりますので、初期費用がかからず、月額料金も安いマニュアル作成ツールを利用すると良いです。
マニュアル作成ツールを選定する前に、自社の業務の量や更新の頻度を考えてから検討すると良いです。
2.作りやすさ・機能面・操作性
作らなくてはならないページが多いときに重要になってくるのが、作りやすさです。
せっかくマニュアル作成ツールを導入するのであれば、作成者の工数を減らせるようなものを選ぶのが良いでしょう。また、同時にマニュアルを読む人が目的の作業をこなせるようになるかも重要です。
操作性が悪く理解を深めることができなければ、せっかく作ったマニュアルの意味も失われてしまいます。
検索機能、音声認識機能、過去に観たマニュアルの履歴の保存など、必要なシーンに応じた機能があるものを選択しましょう。
3.サポート面が充実しているか
マニュアル作成ツールの導入直後に重要になってくるのがサポート面の充実です。電話やメールでのサポートが受けられるものであれば問題ありませんが、中にはサポートが充実しておらず、返事を貰うまでに時間がかかるものもあります。
急いでマニュアルを用意しなくてはならないケースもありますので、困ったときにすぐにサポートが受けられるものを選ぶと良いです。
機能面は製品情報を見ればわかりますが、サポートの内容は発売元の企業の情報を検索したほうが良いです。
おすすめのマニュアル作成ツール
マニュアル作成ツールの導入に当たっては、費用対効果を重要視したほうが良いです。
必要以上の機能がある製品でコストがかかってしまうより、必要な機能だけがそろったものを選んだほうが作り手としてもマニュアルを作りやすく、見やすいマニュアルが出来上がります。
Stock
stockはシンプルに情報をストックすることができるというサービスです。社内のメンバーとのやり取りをチャットツールで行っている会社も多くありますが、チャットでは過去の情報がどんどん流れてしまい、検索するのも大変になることがあります。
stockを使うことによって情報を整理でき、流れていかないようにすることができるだけではなく、ファイルや画像もブラウザー上でプレビューすることができるため、利用者が毎回ダウンロードして開く手間もなくなり、間違って削除してしまったときも30日間はデータが保存されるので、情報が失われる危険性も減ります。
記載内容は編集履歴に自動的にバックアップもされるので、いつでも過去の時点に復元できるのがメリットです。
外注先などの社外のメンバーとやりとりするときにも招待することで閲覧ができるようになるため、情報共有に役立ちます。
フリープランであれば無料で試すことができ、チームの人数に合わせて最大11400円/月のコースまであります。また、IPアドレスの制限などがついたセキュリティー強化プランは最大で29800円です。
Teachme Biz
飲食店のマニュアルなどでの導入が多いTeachme Bizは、テンプレートに沿って写真や文字を入れるだけで簡単にマニュアルを作ることができます。
特に頻繁にマニュアルが更新されるような業種では、更新のしやすさは重要です。無料トライアルプランの他、5万円のスタータープラン、10万円のベーシックプラン、30万円のエンタープライズプランがあります。
編集アカウントを増やす場合は高額なプランが必要になりますが、少ない人数で更新をするのであれば低額なプランでも良いです。
閲覧アカウント数にも制限がありますが、オプションで月1万円で20アカウント追加することができます。
動画は1000本アップロードできますが、こちらもオプション追加で上限を変更することができます。
マニュアルの閲覧状況のログをとることができるのも特徴の1つで、作ったマニュアルが教育に役立っているかどうか判断する材料になります。
NotePM
社内情報の属人化を防ぐのがNotePMの大きな特徴です。
ページを見た人がわかったり、コメントやいいねが付けられる、チャット連携ができる、アクセス制限がつけられるなど、組織のナレッジ共有をうまく進めるための機能が備わっています。
強力な検索機能がついているため、WordやExcelの中身まで全文検索することができます。
料金プランは8人からで、8人であれば月額4800円です。ユーザー数は規模に応じて自由に追加することができ、見るだけのユーザーの場合はユーザー数の3倍まで無料で利用することができます。
ストレージの量も比較的多く、8人プランでは80GB、1000人プランでは10TBまで利用可能で、オプションで追加することも可能です。
Dojo
製品マニュアルや社員教育資料、業務指示書、eラーニングコンテンツなど幅広い分野に利用できるのがDojoです。マニュアル作成ツールとして18年以上の歴史があり、2600社以上の導入実績があります。
Dojoはライセンス数に合わせた契約が可能で、国内の同一法人においてコピーフリーとなるフローティング版もあります。
操作指導講習会を開いてもらうことができるのも利点の1つです。1回あたり1.5時間で最大50名まで受講することができます。
作成したマニュアルはOffice文書やPDFの他、動画やHTML5など12形式で出力ができる高い機能が搭載されており、1ユーザー80万円、初年度保守料10万円の費用がかかります。
TeんDoについて
TeんDoはDojoをクラウドで利用できるサービスとして展開されました。最低利用期間が3か月で日本語、英語、中国語ライセンスに対応しており、月額74800円、オプションで自動音声合成やマニュアルエディタを使うこともできます。
マニュアル作成ツールとしてだけでなく、プレゼンテーション用の資料作成や製品デモの紹介、eラーニングコンテンツの制作など、様々な用途に利用したいときにおすすめです。
特に社内の研修にかかるコストは会社の負担でも大きく、教育にかけるコストを削減できれば費用に見合った効果を発揮してくれます。
旅行業やIT業、医療、金融豪快などでの利用実績があります。30日間の無料トライもできます。
i-ShareRDX
多くのマニュアルは制作された後、閲覧者に情報を提供する一方的な存在ですが、i-ShareRDXの場合は閲覧者側から作成者にコメントを送ることができるため、マニュアルをより良いものに改善することができます。
更新履歴も記録されるため、最新の文書を読むことができ、バージョン管理も簡単です。コンプリートプランとベーシックプランがあり、ともに初期費用は55万円です。
コンプリートプランは月額22万円で編集ユーザーは5名、レビューや承認ユーザーは20名、閲覧ユーザーは無制限となっています。
ベーシックプランは月額16万5千円です。コンプリートとベーシックの差は、公開サーバーを使っているかどうかです。
公開サーバーでログイン認証を付ければ、好きな時に好きなところからアクセスしてマニュアルを閲覧できるようになります。
tebiki
tebikiはスマートフォンで撮影するだけで、誰でも簡単に動画マニュアルができるマニュアル作成ツールです。
音声認識システムが自動で字幕を入れてくれるので、1シーンごとに字幕を入れる手間もかかりません。
製造業の現場には様々な国籍のスタッフがいるケースがありますが、tebikiの場合は自動翻訳され、100か国語以上に対応しているため、外国人スタッフの理解度が格段にあがります。
誰が閲覧してできるようになったかもレポートでみることができるため、現場の理解度も可視化できるでしょう。
料金はホームページ上には記載されておらず、個別の見積もりが必要になります。現場の規模によって料金が変わるため、見積依頼を出さなくてはなりません。
はたらきかたマニュアル
紙のマニュアルからの脱却に便利なのがはたらきかたマニュアルです。業務マニュアルに特化しているため低コストで、はたらきかたエディターで編集や更新をするだけで多くの店舗で共通のマニュアルを共有することができます。
遠隔地でもWebで新人研修ができるようになるため、社員の業務の質を落とさずに済みます。
14日間無料でトライアルを試すことができ、スタンダードプランとプレミアムの2種類はともに初期費用税込み88000円、スタンダードは月額55000円、プレミアムは月額110000円で利用可能です。
プレミアムは多言語での翻訳管理に特化しており、より大規模な運用に適しています。ユーザーやマニュアル、ストレージはプレミアムプランの場合のみ追加料金でプラスすることができます。1年間は契約を解除することができません。
iTutor
「iTutor」にはパソコンに直接インストールするスタンドアローンタイプと、ライセンス管理サーバーを通したフローティングライセンス版があります。
撮影した動画も直接iTutor上で編集することができるため、編集ソフトを使う手間が省けます。
あらゆる機能をそろえたプロフェッショナルエディションの他、動画だけの利用がしたいなど、機能を抑えたエントリービデオエディションなど5つのコースがあり、プロフェッショナルエディションは66万円から、エントリービデオエディションは27.5万円から利用可能です。
COCOMITE〔ココミテ〕
COCOMITE〔ココミテ〕はレイアウトに沿って入力するだけで、様々なタイプのマニュアルを作ることができるツールです。
フォルダごとに複数ユーザーのアクセス管理もできるため、事業に合わせた公開範囲を設定することができます。
ユーザーを自由なタイミングで追加や削除できるため、社員の入れ替わりが起きたときにも面倒になりません。作ったマニュアルをPDFで出力したり、紙に印刷することもできます。
アップロードした画像もマニュアル作成ツール内でトリミングしたりテキストや図形を感覚的に配置でき、今後はいいね機能などが追加される予定です。初期費6.5万円、月額2.2万円から利用でき、30日間の無料トライアルがあります。
toaster team
toaster teamは画像や動画に対応しており、業務を料理のレシピ感覚で簡単に文書マニュアルが作成できます。
画像をアップロードするときも専用の編集ソフトは必要なく、マニュアル作成ツール内で完結するのが便利です。
チャットツールとも連携しているため、通知を受け取ることもできます。ライト、スタンダード、ビジネスプランがあり、初期費用はいずれも10蔓延です。
ライトは50人までで3.5万円、スタンダードは100人までで6万円、ビジネスは200人までで12万円です。1人当たりで換算すると月額600円~700円で利用することができます。
スタンダード以上のコースの場合は自動翻訳機能がついており、セキュリティー制限も向上しているので、安心して利用できます。
EZLecture
EZLectureは様々な形式への出力が可能なマニュアル作成ツールです。動画形式にも対応しているほか、トレーニング教材に使えるチュートリアルや理解度確認テストもHTML5形式に出力することができます。
クイズのようなコンテンツを作ることもできるため、ただマニュアルで情報を社員に与えるだけでなく、理解したかどうかの確認をすることもできます。
月額性ではなく、ライセンス制となっているため、長期間利用するのであればラーニングコストを抑えることが可能です。1ライセンス35万円、3ライセンスの場合は84万、5ライセンスの場合は125万円です。
KnowledgeSh@re
他のマニュアル作成ツールと比較しても、長い無料トライアル期間が用意されているのがKnowledgeSh@reです。
60日間体験版を利用でき、実際の業務シーンを想定した検証が可能です。マニュアル作成のコンサルティングサービスもあるため、使いこなせなかった場合にもサポートを受けることができます。
情報を伝えるだけではなく、複数の選択肢から1つを選ばせるなどの理解度確認テストを行うこともできます。
料金は編集IDが10個、閲覧IDが100個で月額11万円で、初期費用として別途11万円がかかります。IDや容量の増設は利用規模に合わせて追加すると良いです。
VideoStep
VideoStepは簡単に動画マニュアルが作れるマニュアル作成ツールです。
パワーポイントのように図形や文字を挿入することができ、他の人が作ったマニュアルも更新ができます。動画に特化しているマニュアル作成ツールのため、動画で何かを説明することが多い職種に向いているでしょう。
機械翻訳や多言語音声吹き込みもできるため、外国人のスタッフがいる場合にも対応ができます。AIが自動音声文字起こしもしてくれる機能も2022年にリリース予定です。
初期費用15万、月額5万円となっていますが、利用規模によって料金が異なるため、導入には問い合わせが必要です。
soeasy buddy
soeasy buddyは職場にノウハウを広げるためのマニュアル作成ツールです。動画で閲覧することができ、自動で字幕も表示されます。
聞きたいことがあるけど忙しそうだから聞けないという時間を無駄にしないためのツールです。
現場の事例投稿をしていくだけで会社のデータベースができます。料金は利用人数に応じたシンプルな月額性となっており、3万5千円から導入することができます。
マニュアル作成のポイント
せっかくマニュアル作成ツールがあっても、伝えたい情報をうまく伝えられなくては意味がありません。
まとめるためにはコツがあるので、どのようにしたら読み手の理解が深まるのか、考えながら作成をすることが大切です。
1.フォーマットを統一する
全体のフォーマットを統一することは非常に大切です。見る側にとってもどこにどのような情報があるのか予測できるので理解力が深まるだけではなく、作り手にとっても決まったルールのもと作成することで、マニュアル作成の工数を下げることができます。
マニュアル作成ツールでは決まったフォーマットを選択してデータを入れていくだけで、自動で見やすいページを作ってくれるものも多いため、マニュアル作成ツールの使い方自体を1つの手順として理解して作成を進めていくと良いでしょう。
動画や画像を効果的に使い、ビジュアル化することによって理解を深めることもできます。
2.「5W1H」を意識する
5W1Hとは、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにの英語の頭文字を取った言葉です。
マニュアルの中には手順だけで、いつやるのか、なぜやるのかが抜けていることも多くあります。理由を理解して手順を進めるのと、理解せずにマニュアルの通りに進めているのでは、理解に大きな違いがあります。
マニュアル作成ツールを使っても意識していないと5W1Hが抜けてしまうことがあるので、作成するときに注意すると良いでしょう。
3.視覚的な表現を重視すること
文字だけの説明では情報がうまく伝わらないことがあります。映像や画像、時には音声を用いて様々な方法で情報伝達をすることで、読み手の理解を、より深めることができます。マニュアル作成ツールの中には動画編集が簡単にできるものもありますので、動画を多用する場合はそのようなツールを駆使して作成すると良いです。映像や画像があると、頭の中でイメージトレーニングするのにも役立ちます。
マニュアル作成ツールまとめ
業務のノウハウは会社の資産であるにも関わらず、属人化して失われてしまうことも少なくありません。
誰が担当しても仕事の質を落とさないよう、読み手が理解しやすいマニュアルを作ることは、会社の発展にも役立ちます。
社員教育にもコストはかかりますが、マニュアルを充実させることで社員の理解が深まれば、将来的には会社の成長に寄与してくれるでしょう。
マニュアル作成ツールは便利なツールですが、使い手が伝えたいことをしっかりとまとめることが大切です。
道具は上手に使って、会社の資産を後世まで残すようにすると良いでしょう。