オンボーディングとは?実施目的とプロセスを解説
人材業界で、オンボーディングという考え方が注目されています。
このような考えが注目されているのは、オンボーディングがさまざまなメリットを持っているからです。
ここでは、オンボーディングの意味や実施される目的について、詳しくご紹介します。
オンボーディングの本来の意味
オンボーディングの本来の意味は、船などの乗り物に乗船しているという意味です。
英語の「on-board」が語源になっています。
オンボーディングとは?
オンボーディングとは、企業に入社したばかりの社員を、企業にとって役立つ人材に育てる目的でおこなわれる、施策や課程のことです。
オンボーディングをおこなうことで、入社したばかりの社員が起こしやすい早期の退職を予防できる効果もあります。
入社した社員を会社に定着させることもオンボーディングの目的です。
こうした施策は大学から会社に入った新入社員だけでなく、中途採用者に対しても実施されています。
オンボーディングが従来の新人研修とは、いくつかの点で内容が異なっています。
新人研修は入社した直後だけに基本的な内容の研修が実施されることが多いですが、
オンボーディングは会社内の部署に配属された後もおこなわれます。
時間をかけて新卒や中途採用の社員を育てていく制度であることから、
社内で働く多くの社員がオンボーディングと関係することもあります。
1.人材業界の領域における「オンボーディング」
人材業界の領域におけるオンボーディングとは、新入社員が会社の即戦力として働くことができるように、会社全体でサポートすることです。
その会社が所属している業界や新入社員が担当する業務について、研修や教育をおこないます。
同じ職場で働くスタッフとの関係性を向上したり、会社内の制度を共有することで、
新入社員が新しい職場で活躍できる体制を整えています。
オンボーディングは業務研修よりも広い内容を含んでいるので、
こうした施策を十分におこなうことで、会社の考え方を新入社員に定着させることができます。
社員同士の横のつながりを強くすることもできます。
2.SaaSビジネスなどのCSにおける「オンボーディング」
SaaSビジネスなどのCSでも、オンボーディングは実施されています。
このようなケースにおけるオンボーディングとは、サービスの利用者が利用を始めた後に迷うことなくサービスを
使い続けるように導くためのプロセスを意味しています。
無料の試用期間を利用してサービスを利用している利用者に対し、
サービスを利用する方法を早期に理解してもらうことも、このような取り組みの一つです。
こうした取り組みをおこなっているのは、利用者に早い段階から成功体験を感じてもらうことで、
サービスを継続して利用したいと感じてもらうためです。
3.OJTとオンボーディングとの違い
OJTとオンボーディングは混同されることもありますが、実際にはその内容には違いがあります。
OJTとは仕事の実施訓練をおこなうことです。現場でおこなわれている作業を実際に担当させることによって、訓練をする方法です。
それに対してオンボーディングは、新入社員が職場の環境に慣れることを目的にして、他の社員とのコミュニケーションが重視されます。
オンボーディングが注目されるようになった背景とは?
オン・ボーディングが注目されるようになった理由の一つは、転職をする人が増えたことです。
2010年代になって転職者の数はさらに増えています。
特に若年層の社員の早期離職が、社会的に大きな問題となっています。入社した若い社員が途中で会社を辞めてしまうと、
社内で人材を育成することが困難になるので、オンボーディングが注目されるようになりました。
実施目的とは?
ここからは、
離職防止や教育格差解消などオンボーディングを実施するさまざまな目的について、解説していきます。
1.新入社員の成長スピード向上
オンボーディングを実施する目的の一つは、新入社員の成長スピードを向上させることです。
新入社員が短期間で成長できるようにするために一番重要なことは、できるだけ早く会社の組織に順応することです。
組織への順応が必要となるのは、新入社員は組織のルールなどを知らないことが多いからです。また職場で採用されているシステムなどを知らないことも多いため、このようなことをそのままにしておくと、成長のスピードが遅くなってしまいます。
その一方で新入社員は、社風や他の社員との人間関係に適応することも必要です。
こうした組織への順応を手助けする目的でオンボーディングは実施されていて、社員は働いている組織に慣れれば、自分の能力を発揮しやすくなります。
2.部署毎の教育格差解消
部署によって人材育成の違いが出ないようにする目的でも、オンボーディングはおこなわれています。
所属する部署によって人材育成の成果が大きく異なると、将来的な会社全体の業務にも支障が出ます。教える人によって人材育成の成果が大きく変わることもあるので、
新入社員が平等に質の高い社員教育を受けられるようにすることは、会社にとって非常に重要なことです。
オンボーディングはこのような目的のためにおこなわれています。人事の担当者が体系的にオンボーディングを実施することも大切になります。
実習やOJTは、教える人の能力などが大きな影響を与えるからです。
企業倫理やコンプライアンスのような全ての社員を対象とした教育は、外部の会社に委託することも可能です。
3.離職防止
新入社員の離職を防止することも、オンボーディングの重要な目的です。
こうした施策をおこなうことが必要になるのは、新入社員が早期に職場を辞めてしまう原因の中でも、
仕事の内容や職場の人間関係が大きな割合を占めているからです。ですが、新入社員が仕事の楽しさを十分に理解しないうちに、仕事を辞めてしまうことも少なくありません。職場の同僚とのコミュニケーションが足りなかったことが、職場を辞める原因となることもあります。
このような原因による新入社員の離職を予防するために効果的な方法ということで、オンボーディングは注目されています。
この施策をおこなうことによって、新入社員に具体的な目標を与えることもできるので、働くためのモチベーションを高めることもできます。
話し合いの場所を用意することにより、新入社員の理想と現実の隔たりを調整することも可能です。
オンボーディング支援を実施する5つのメリット
1.人材育成・採用コストの削減
企業がオンボーディング支援を実施するメリットとしてあげられるのは、人材の育成や採用コストを削減できることです。
新人研修の枠を超えて、自社の人材をより効率良くおこなうことができます。
またオンボーディングをおこなうことによって離職者の数を減らすことで、新たな人材を採用するための費用を減らすことも可能です。
2.従業員満足度の向上
オンボーディングをおこなうことにより、会社で働いている従業員の満足度を高めることができるメリットもあります。
この場合の従業員満足度とは、仕事に対する社員のやりがいや人事評価などに関する満足度のことです。福利厚生も社員の満足度に含まれ、職場の環境全体に対する満足度が含まれています。
オンボーディングを実施することで、社員間の活発なコミュニケーションが実現することにより、従業員の満足度を高めることもできます。
3.新入社員の即戦力化
新入社員を即戦力にできることも、オンボーディングを実施することのメリットです。
このような施策が必要になるのは、新入社員は職場の環境になじまないと、自分の実力を発揮して仕事をすることが難しいからです。
新入社員を会社の戦力にするためには、文章にされていない会社のルールや企業文化を理解してもらうことも不可欠ですが、こうしたことを早期に身につけさせるためには、会社のサポートが必要になります。
4.社員定着率の向上
社員定着率を向上できることも、オンボーディング支援を実施するメリットです。
社員が会社内で良好な人間関係を築くことができれば、社員の会社に対する帰属意識を高めることもできます。
新入社員が仕事や人間関係のことで悩みができた場合でも、同じ部署の人やその他の会社内の人間に相談ができれば、退社を予防できるからです。
5.チーム力の向上
オンボーディングサポートをすることで、社内のチーム力を高めることもできます。
新入社員が所属する部署の上司や同僚だけでなく、社外のその他の人も社員の育成に協力をすることで、会社全体のチーム力を大きく向上させることが可能です。
新入社員の部署と関連がある部署の社員や、指導を専門にしている社員なども、重要な役割を果たします。
オンボーディングのプロセス
ここからは、
オンボーディングのプロセスとしておこなわれている一連のプロセスについて、詳しく解説していきます。
入社前
オンボーディングは入社する前の内定者に対しておこなわれることもあります。内定の段階で企業が対策をとっているのは、内定者の誰にでも起こる可能性がある内定ブルーです。内定ブルーになる人が多いのは、さまざまな選択肢の中から1つの社を選ぶことは、内定者にとって自分の未来を決める重要な決断だからです。
このような内定ブルーになってしまった内定者をオンボーディングでサポートすることにより、会社に入社する気持ちを固めさせることができます。このような不安を解消するために重要となるのは、内定者が感じている疑問を解決してあげることです。
入社をする前から人事の担当者が内定者としっかりコミュニケーションをすることによって、新入社員の不安や疑問を取り除くことができます。
入社直後
入社直後も、新入社員にオンボーディングが必要となる重要な時期です。
この時期は新入社員にとって、新しい環境にもまだなじめず、わからないことも多い不安な時期だからです。この時期の新入社員に対して一番してはいけないことは、自分の仕事が忙しいことを理由にして、新人をほったらかしにすることです。
職場になじめない新入社員が、先輩からも助けてもらえなければ、早期に退職をしてしまう危険性もあります。中途採用者なども、即戦力として期待されている分、他の社員から放置されることが多いです。他の会社で働いている人でも、新しい会社のルールや文化をすぐに理解できないことも多いので、サポートが必要になります。
入社直後におこなうオンボーディングとして最適なのは、新しい環境に慣れてもらうことを目的として、会社のルールや文化を教えることです。
入社数か月後
入社直後だけではなく、入社数か月後もオンボーディングによるサポートが必要になります。
入社数か月も、新入社員に早期離職されてしまう可能性があるからです。入社数か月の時期は、新入社員が新しい環境にも慣れ自分の今後の将来も見えてくる時期ですが、周囲の人とのコミュニケーションが不足している場合には、退職を考えてしまうこともあります。
社員によっては、自分が所属している部署に対する不満を感じることもあります。理想に描いていたキャリアとの隔たりから、離職してしまうこともありえます。
こうした離職を予防するために最適なのは、キャリア面談の実施です。所属している部署の上司には話せないようなことも、相談できるようにする必要があります。
オンボーディング実施のポイント
ここからは、オンボーディングを実施する際に重要となる、人間関係の友好化などのポイントについて解説していきます。
1.人間関係の友好化
オンボーディングを実施する際に重要なポイントの一つとなるのは、コミュニケーションをサポートする体制を整備することです。このような体制を整備する必要があるのは、新入社員と先輩の社員がより親しい関係になれるようにするためです。悩みを解消できるようにするためにも必要な施策です。
メンター制度やランチミーティングなどにより、コミュニケーションをスムーズにすることもできます。
新入社員が相談できる窓口を作ることによって、サポートすることもできます。
2.教育体制の整備
教育の体制をしっかりと整備することも、オンボーディングを実施する時には必要です。社内の教育制度を充実させることで、新入社員のサポートもしやすくなります。
オンボーディングはテレワークで実施することも可能で、その際に準備しておく必要があるのは、インターネット会議システムやビジネス用のチャットツールなどです。
インターネットを利用した外部の研修を、オンボーディングの実施のために効果的に利用することもできます。
3.期待値のすりあわせ
期待値をすりあわせることも、オンボーディングを実施する際の重要なポイントです。
企業側が求めていることをあらかじめ新入社員に伝えることにより、互いの意向をすりあわせることができます。こうしたことが必要になるのは、会社と社員が抱いている期待にずれが発生している場合、それぞれが求めている利害が一致しなくなるからです。
それにより、新入社員の定着率が下がってしまう危険性もあります。このような考え方のずれが発生しやすいのは、業務の内容や仕事における役割です。仕事の成果に関する考え方にずれが生じる場合もあります。
企業と社員の期待値を互いにすりあわせることにより、こうしたずれを少なくすることができます。
両者の期待値にずれが発生している時には、それぞれの求めている期待値を超えるための改善方法について、十分に話し合いをする必要があります。
4.スモールステップ法を取り入れ
オンボーディングを実施する場合には、スモールステップ方を取り入れることも重要なポイントです。
スモールステップ法とは、小さな目標を設定しながら最終的に大きな目標を達成するための方法です。教育の方法として主に使用されていて、学校だけでなく子育てのためにも使われています。この教育方法は、オンボーディングを実施する時にも有効的に使用できます。
このような方法を取り入れた方が良いのは、入社してから時間が経過していない新入社員にとって、ストレスを感じさせるものが多いからです。
結果が出るまでに多くの期間を必要とするものは、特にストレスを感じやすくなります。結果が簡単に出ないと、目標を見失う危険性もあります。
オンボーディングにスモールステップ法を採用することにより、新入社員が自分の目標を見失いにくくなるのがメリットです。
まとめ
新入社員を教育するための方法として、オンボーディングを実施する企業が増えています。
多くの企業がオンボーディングを重要視しているのは、新入社員の早期離職を防ぐことが大きな目的です。
新入社員が職場の環境にできるだけ早くなじめるようにすることで、離職を効果的に予防できます。
離職者の数が減少すれば、採用にかかるコストを減らすことも可能です。