情報収集のコツは深掘りすること!テレビ番組を支えるリサーチャーに聞いてきた!

最終更新日 : 2016-06-14 Box

いまやWebはコンテンツの時代です。
文章や画像に動画と、膨大な量のコンテンツが生まれ続けています。

しかし、残念ながらその多くは、あまり手間を掛けずに作られたお手軽なものばかり。
果たしてそんなお手軽コンテンツで、情報を正しくユーザーに伝えられているのでしょうか?

その点において、Webにとって大先輩といえるのがテレビです。
ここ数年テレビ離れが叫ばれていますが、そんな中でもやはり手間を掛けて作られた番組は面白いものです。

「俺、テレビ見ないんで」なんてこと言っていないで、偉大なる先輩の秘密を探ってみましょう!

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1.情報収集のプロ集団、リサーチ会社に行ってみた!

テレビ番組制作は、とても手間が掛かります。
番組1本作るのに、2~3週間掛かるのも普通なことです。
収録や編集なども大変な作業ですが、そもそもどういったネタをどのように扱うのかといった会議は何度も開かれ入念に検討されます。

そんな会議の場で「こういうネタはどうでしょう」とネタを用意してくるのがリサーチ会社に所属するリサーチャーという方です。
まさに情報収集のプロ!

フルタイム入り口

というわけで今回は、テレビ番組のリサーチを行なっている会社、株式会社フルタイムさんに伺いました。
本日は、渡邉社長にお時間をいただき、お話を伺います。
どのようにして面白い情報や面白いモノを見つけてくるのか、その秘密を探ってきました。

フルタイム 渡邉社長

渡邉匠(株式会社フルタイム 取締役社長 COO)

1973年 新潟県柏崎市生まれ。
1996年株式会社フルタイム入社。
入社以降、毎年約50番組のリサーチを担当。放送作家としても活動。
2011年フルタイム取締役社長COOに就任。
現在は番組リサーチの他、地元である新潟県柏崎市のシティセールス運営委員としても活動中。

1-1.フルタイムとはどんな会社?

まずは、フルタイムという会社がどんな会社なのか、そこから伺いました。

もともと、テレビ番組制作におけるリサーチは、台本を作る放送作家さんの見習いさんたちが行う作業だったそうです(現にいまも放送作家さんがリサーチすることもあります)。
その中で、今後、番組制作においてリサーチの需要が高まることを見据えて、現在の会長さんがフルタイムを立ち上げたのが約30年前。

その頃は、“素人”が出演する番組が多く、フルタイムは番組のテーマに沿った様々な素人を探してその人がどのようなネタを持っている人なのかというリサーチを受け持つようになります。
このあたりから、いわゆる調べ物やアンケート収集、マーケティングリサーチなどとは異なるキャスティングリサーチ(=人のリサーチ)を得意とするようになったそうです。

現在はさらにネットアンケートなども組み合わせて、テレビ業界における“リサーチの総合商社”としてさまざまな番組に情報提供を行っています。

1-2.テレビ番組におけるリサーチとは?

では、テレビ番組制作においてリサーチとはどんな作業なのでしょうか?
現在携わっている番組を例に挙げて、どんなものか伺いました。

1-2-1.ネタ出し

番組で扱う情報=ネタをテーマに沿って提案します。

例えば、世界中を舞台に体当たりロケをする番組では、訪問する国について情報を集め、「こんなアクティビティがある」とか「こんな珍獣がいる」とかネタ出しをしていきます。
当然日本語の情報だけではないので、通訳さんなどの力を借りて現地情報に直接当たることもしているそうです。

逆に、日本の超ローカルなネタを扱う番組もあるので、地球の隅から隅までが業務範囲、といったところでしょうか。

そうした国や地域のネタ以外にも、トーク番組ではゲストの芸能人・有名人に関する情報を集めることもあるそうです。
「雑誌のインタビューでこんな発言をしていた」とか「ブログにこんなこと書いていた」とか、そのゲストについて、企画のネタになる情報をひたすら調べていくそうです。

1-2-2.キャスティングリサーチ

もうひとつ、フルタイムの武器ともいえるのがキャスティングリサーチ。

“普段はなかなかオシャレできない生活だけど、変身してみたいママ”とか、“国旗を見れば国名を答えられるスーパー小学生”とか、番組からの依頼でテーマに合った“素人さん”を見つけてくるというお仕事です。

行ったこともない国の面白い情報を探すのも大変そうですが、こちらもかなり大変そう。
あとのところで詳しく聞いていますが、ネットや雑誌・新聞などでの情報探しも行いつつも、実は重要なのは電話なんだそうです。

2.リサーチャーに学ぶ情報収集のコツ

フルタイムにはおよそ30人リサーチャーが所属しています。
皆さんは実際にはどのように情報収集を行っているのでしょうか?
Webコンテンツを作る私たちにとっても役立つ情報収集のコツを伺いました。

2-1.ネットはきっかけ、電話での深掘りが勝負

まずは、リサーチにネットはどのくらい使うのかという点から。
渡邉「もちろん使いますが、ネットの中だけで完結ということはほとんどないですね」とのこと。

あくまでも、ネットの情報は取っ掛かりで、そこで得られた情報を起点に深掘りをしていくそうです。
そもそもSNSやブログは、その情報が信頼できるものなのかをしっかり確認しなければなりません。

そこで活用するのが、電話。
電話で関係者の方たちに深くお話を伺うことで、ネタにせよ人にせよ良い情報が見つかってくるんだそう。

ただ、闇雲に電話をしても意味はないわけで、大事なのはどこに電話をするのかです。

例えば日本のあるエリアだけで流行っていることを紹介する番組では、その地域の役場や観光協会に聞くのが取材として手っ取り早い手段のように見えますが、渡邉さん曰く「テレビ番組で紹介してもらえるのはPRにつながるからと、役場や観光協会の人は良いことしか言わないんですよ(笑)」。

一度その番組でこんなことがあったそうです。
ある地域で古くから続く行事の発祥の地を調べていた時のこと。
やがてある町が発祥の地らしいという情報が入ったので、観光協会に話を聞いたところ「そうです」という答えがあるものの、どうも歯切れが悪い。
妙に感じて改めてよくよく調べてみると、実は本当の発祥の地は隣町!
「テレビに取り上げられて話題になって、PRになるだろう」と観光協会の方が思わず「そうです」と答えてしまったそうなんです。

実際にロケに行く前に真実がわかったので事なきを得たのですが、こういうことも起こりうるということで、
それ以来、観光協会などではなくて“実際の声を聞く”ということを強く心がけているそうです。

ある食べ物が本当にその街で人気なのかを調べるためには、地元のスーパーや企業などに電話して売れ行きや認知度を聞いて、とリアルな情報を集めていくんだとか。
手間は掛かりますが、それによって確実な情報を視聴者に届けることができます。

「こんな情報を見つけるには、こんなところに聞けば良い」という“線”をいかに思いつくか。
これも、Webコンテンツの作成においても同じことが言えるのではないでしょうか。

フルタイム 資料棚
オフィスの中は散らかってるから写真は勘弁して…と言われつつ、一枚だけ使わせていただきました。
資料がたくさん並べられている、というより、詰まっている棚。
調べ物の際には、雑誌や新聞など紙の資料にもたくさん当たるそうです。

2-2.面白い人を探すのではなく、面白いところを引き出していく

続いては、“面白いネタ”の見つけ方。
キャスティングリサーチを得意としているフルタイムですが、どうやって面白い人を見つけているんでしょうか。

渡邉「これはですね、面白い人を見つけるのではなくて、面白いところを引き出していくんです。」

“今までテレビに出たことがないガンコ主人のいるラーメン屋”なんてどうやって探すの!?と私たちは思ってしまいますが、リサーチャーの皆さんはそういった番組側から挙がった条件を満たす人たちを何組も見つけた上で、取材交渉をしつつその面白さ・魅力を探っていくほうに力を注いでいるとのこと。

突然「テレビで紹介できそうな面白い話ありますか?」と聞くのではなく、じっくりとお話を伺っていくことで思わぬ話が飛び出してくるそうです。
そのため、どうしても長電話になってしまいがちで、1時間以上になることも少なくないそうです。

私たちに置き換えるならば、ネットでの情報収集でもただ検索結果を見てOKというわけでなく、そこからさらに積極的に情報を引き出す努力をしてみるということでしょうか。
その情報を書いた人に追加取材をしてみるとか、同じようなことを他の人が書いていないか調べてみるとか、別の視点はどうだろうとか考えることでコンテンツに深みが生まれてくるはずです。

2-3.ボツネタも視点を変えれば光る、かもしれない

リサーチャーさんは街を歩いているときなどにも常にアンテナを張りまくっていて、ネタのストックを大量に持っているようなイメージがありますが、実際のところはどうなんでしょうか?

渡邉「ストックは…そういうのはあまりないですね(笑)基本的には依頼を受けてリサーチを始めますよ。でも、一度ボツになったものが、あとでまた使えそう、ということはありますね」

ある番組Aに出したところボツになったネタも、番組Bで別の見せ方をすることによって採用、ということはよくあるとのこと。
形にならなかったボツネタや“アイデアの欠片”のようなものも、視点を変えたり別の要素を付け加えたりすることで、別のところで活かせるかもしれません。

関連記事:最新Evernoteの使い方。ビジネス活用方法【保存版】
 ちなみに、アイデアメモは、Evernoteに細かく貯めていくのものちのち便利です!

2-4.つながりが大事な仕事です

人との繋がりは重要なポイント
ちょっと調べてはい終わりではなく、丁寧にとことんまで深掘りして情報収集する。
これが番組の面白さにつながるんですね。

ただ、当然大変なことも多々あるようです。
渡邉「出演交渉をした上で10組に取材しても、採用は1組とか。9組の方には大変申し訳ないとは思うんですが…これも日常茶飯事です」

他にも、テレビに出たがりな素人さんが、素人さんなのに同時期にダブルブッキングしていたとか、10秒のナレーションのために数時間掛けてリサーチをしたのに結局使われなかったとか、最近は何かとネットで叩かれてしまうので、そこにも十分気を遣わなければならないとか。

でも、2chなどもたまにはチェックするそうです。そこで見かけた情報がネタのきっかけになることもあるそう。
リサーチは、ひとつのキーワードを見つけて、それをきっかけに広げて深めていくのが仕事の重要な部分であり、同時にやりがいでもあると渡邉さんは言います。

渡邉「どれだけ頼れるつながりを持っているか、という点は情報収集において重要なポイントのひとつではないかと思います。リサーチをしていく中で、お世話になったり仲良くなったりと人脈も増えていきます。一度ロケに参加してもらったご縁で仲良くなった人が、よくよく話を聞いてみると色々な要素を持っていて、その要素がドンピシャで当てはまる別の企画にも出てもらったり、本人が有名人になってやがて議員さんになったこともある。そういうご縁っていうのは面白いなと思いますね」

3.まとめ ~じっくり情報と向き合う時間を!~

テレビ番組のリサーチと、Webコンテンツの情報収集を単純に横並びにして比べるのは難しいかもしれないですが、情報をユーザー(視聴者)に伝えるという点では同じことです。

適当に作って適当に運営しているWebメディアもありますが、自社のブランディングの一端を担うメディアである以上、誤った情報やいい加減な情報は扱うべきではありません。

出来るだけムダな手間を減らして手軽にコンテンツを増やすのも大事ですが、その一方で、どれだけ時間が掛かってもムダ足になっても、ユーザーにとって有益な情報を集めて伝えるということを意識するのも大事なのではないでしょうか。

テレビ番組を裏側から支え続けるリサーチャーさんから、情報収集のコツを学ばせていただきました。
渡邉社長、本日はありがとうございました!

企画協力:テレビ番組リサーチ会社 フルタイム

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