広告代理店売上・年収ランキングから見える日本の広告の今
広告業界に身を置いている人であれば常識的なことでも、周りの人たちからするとよくわからないことだらけです。
その最たるものといえるのが、“広告代理店”という存在です。
広告はそこらじゅうで目にするけれど、広告において誰の何を“代理”しているのか?
漠然と給料をたくさんもらっているイメージがあるけど、その他のことはよくわからない、という方も多いのが実際です。
今回は改めて広告代理店とはどういったモノなのかを説明した上で、日本の大手広告代理店の売上高や年収のランキングをご紹介します。
1.広告代理店とは?
広告代理店とは、広告を出す側である“広告主”と広告を載せる側である“媒体社”との間に入り、広告枠の代理販売や広告の制作代行などを行う会社のことを指します。
もともとは新聞広告などの媒体枠を広告主に手数料をもらって購入するところから広告代理店の歴史はスタートしていますが、現在はそれに留まらず広告の制作や、さらには商品開発などから関わることもあります。
規模はさまざまで、一般の方でもよく名前を聞く「電通」「博報堂」などの超がつくほどの大手から、“街の広告代理店”といったような規模の小さめな広告代理店まであります。
最近では、インターネット広告を専門に扱う広告代理店も力を伸ばしています。
広告代理店は、
- 総合広告代理店
- 専門広告代理店
- ハウスエージェンシー
の3つに分けられます。
総合広告代理店
総合広告代理店は、先ほども挙がった電通や博報堂などが該当します。取り扱う範囲が広いので、やはり大手が多くなります。
広告主の意向に合わせてさまざまな媒体や“枠”を提供していくのが特徴です。
広告を打ちたい商品やサービスがどのような形で露出すれば最も効果的であるかを検討した上で広告戦略を組んでいくことが可能になります。
専門広告代理店
交通広告や屋外広告、雑誌広告など特定の“枠”を販売しているのが専門広告代理店です。
総合広告代理店が広告主の側に立っているとすれば、専門広告代理店は媒体の側に立っている広告代理店といえます。
総合広告代理店のように媒体を跨いだ大規模なプロモーションには不向きですが、例えば「車両広告ジャックをやろう!」などと自社内で方向性が決まっていれば、交通広告の専門広告代理店に声を掛けたほうがより効果的な広告展開を、総合広告代理店に依頼するより比較的安価に行うことが可能です。
最近規模を拡大しているネット広告代理店もこの専門広告代理店であると言えます。
ハウスエージェンシー
特定企業の広告を専門に手掛ける広告代理店を指します。
その企業の子会社であることが多いです。
鉄道会社の多くはハウスエージェンシーを持っており、ジェイアール東日本企画や京王エージェンシー、メトロアドエージェンシーなどがあります。
もともとはハウスエージェンシーだったが後に他社の案件にも携わるようになった例としては東急エージェンシーなどが挙げられます。
このように規模も種類もさまざまある広告代理店ですが、では実際にはどのくらいの売上を出しているのでしょうか?
2015年版のランキングを見てみましょう。
2.広告代理店売上げランキング
広告代理店の2015年売上げランキング、上位20社は以下のとおりです。
順位 | 会社名 | 売上高 | 種別 |
---|---|---|---|
1 | 株式会社電通 | 1兆5,351億円 | 総合広告代理店 |
2 | 株式会社博報堂 | 6,587億円 | 総合広告代理店 |
3 | 株式会社アサツーディ・ケイ | 3,520億円 | 総合広告代理店 |
4 | 株式会社サイバーエージェント | 1,421億円 | ネット広告代理店 |
5 | 株式会社大広 | 1,400億円 | 総合広告代理店 |
6 | デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 | 1,174億円 | ネット広告代理店 |
7 | 株式会社ジェイアール東日本企画 | 1,052億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
8 | 株式会社東急エージェンシー | 954億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
9 | 株式会社読売広告社 | 716億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
10 | 株式会社オプト | 640億円 | ネット広告代理店) |
11 | 株式会社セプテーニ | 612億円 | ネット広告代理店 |
12 | 株式会社アイレップ | 580億円 | ネット広告代理店 |
13 | 株式会社デルフィス | 537億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
14 | 株式会社電通東日本 | 471億円 | 総合広告代理店 |
15 | 株式会社クオラス | 420億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
16 | 株式会社電通九州 | 410億円 | 総合広告代理店 |
17 | 株式会社朝日広告社 | 397億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
18 | 株式会社日本経済社 | 364億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
19 | 株式会社日本経済広告社 | 315億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
20 | 株式会社フロンテッジ | 294億円 | 総合広告代理店(ハウス系) |
出典元:【最新版】広告代理店 売り上げランキング(総合広告代理店からインターネット広告代理店まで) | 転職支援・人材紹介・求人情報のアドベンチャーズ
やはり、有名な電通と博報堂がトップ2という結果です。
長い間ずっと不動の順位を守り続けています。
とはいうものの、売上高をよく見てみると、電通と博報堂には実は2倍以上の差が開いていることがわかります。
日本の広告業界は電通が圧倒的に強く、その半分くらいの規模で博報堂が続き、さらにその半分くらいの規模でアサツーディ・ケイが続き、4位以降がさらにそれに続く、といった形なのです。
ちなみに、この上位20社の中に、ネット広告代理店が5社ランクインしています。
ここ数年で一気に順位を上げてきた5社です。
後ほど改めて解説しますが、日本の広告費において、近年インターネット広告費の占める割合が大きく増えています。
現在は5社ですが、今後このランキングの中で、ネット広告代理店がどれだけ増えて何位にまで上がるのか注目されるところです。
3.広告代理店年収ランキング
続いては、これまた注目の、平均年収ランキングを見てみましょう。
「年収ラボ」というサイトが調べた広告業界の推定年収ランキングです。
順位 | 会社名 | 平均年収 |
---|---|---|
1 | 電通 | 1,271万円 |
2 | 博報堂DYホールディングス | 1,036万円 |
3 | 株式会社アサツーディ・ケイ | 763万円 |
4 | サイバーエージェント | 720万円 |
5 | デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 | 574万円 |
6 | オプトHD | 571万円 |
7 | セプテーニHD | 562万円 |
8 | クイック | 558万円 |
9 | 現代エージェンシー | 546万円 |
10 | アキナジスタ | 525万円 |
出典元:広告業界の年収・給料、売上高ランキング(年収ラボ)
※2014年7月~2015年6月の決算時データから推定したランキングからPR会社などを抜いたもの上位10社
「広告業界の人たちは1000万プレイヤーがたくさんいて…」というイメージをつい持ちがちですが、推定年収平均はこのようになりました。
さすがの電通と博報堂は平均が1000万円を超えていますが、3位以降は700万円台、500万円台と続きます。
意外ともらっているような、案外もらっていないような…。
4.なぜ広告業界の売上や年収は注目されるのか?
下世話な気持ちいっぱいで売上や年収のランキングを見てきましたが、広告業界の売上や年収は他の業界に比べて特に注目されがちな印象があります。
もちろん、下世話な気持ちも大いにあるわけですが、もうひとつ理由として考えられるのは、広告費は景気の善し悪しを示す指標になっているから、ではないでしょうか。
広告を出すことは商売をする上で必要なものではありますが、景気が悪く懐具合が厳しい時に、まず縮小されるのは広告費です。
広告に出せる予算が捻出できないのと、広告を出しても売れないと思われるからです。
逆に景気が良くなってくれば、商売に弾みをつけようと広告費も増えていきます。
電通が毎年、前年1年間に使われた広告費の統計を発表していますが、その中で紹介されているここ10数年の総広告費の推移のグラフを見ると、景気と広告費の関係がよくわかります。
参考:2015年 日本の広告費・総広告費
(「(2)日本の総広告費と国内総生産(GDP)の推移」にある下のグラフが総広告費の推移です)
2005年から総広告費の計算方法が変わったため、増額していますが、7兆円規模まで増大していた広告費が、2008年・2009年で一気に下がっています。
これはリーマン・ショックの影響です。
さらに2011年は東日本大震災を受けて広告費は大きく下がりました。
テレビCMがACのものばかりになったのはまだ記憶に新しいところです。
そうして見てみると、2011年以降広告費は増加傾向にあります。
景気が上向きになりつつあると考えられるのではないでしょうか。
5.増える総広告費、変わる割合
総広告費はわずかながら増加傾向にありますが、実は大きく数字を落としているものがあります。
それが、総広告費における「マスコミ四媒体」の割合です。
マスコミ四媒体とは、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ、いわゆる“マスメディア”を指します。
特に2015年は、この四媒体は軒並み前年比100%を切りすべてマイナスとなりました。
それに代わって大きく伸びているのが、先ほどのランキングからもわかるように、インターネット広告です。2015年は前年比110%、つまり1割増となりました。
2016年以降もインターネット広告がその勢いを増すことは間違いないでしょう。
多様なインターネット広告の今を知るには、ぜひ資料JPも活用していただけたら幸いです。