部下との距離感に悩む“新米上司”に送るコミュニケーションのポイント
若かりし頃、「私が上司になったら・・・」と思いながら先輩上司の姿を見ていたという経験、社会人なら誰しもあるのではないでしょうか?
「◯◯さんのような上司になりたい」
「◯◯さんにしてもらったことを、私も部下を持ったらやってあげよう」
こんなことが思える素晴らしい上司に出会えているでしょうか。
あるいは、
「◯◯さんのマネジメントにはついていけない」
「◯◯さんは私のこと、全然わかってくれていない」
と、自分の上司を反面教師にしている方もいるかもしれません。
しかし、どちらの場合でも、いざ自分が上司となった時には、様々な悩みが生まれるものです。
多くの新米上司が悩むのが、部下との距離感です。
今回は、「こうするべし!」という必勝パターンではないかもしれませんが、距離感やコミュニケーションのあり方を考える上で役に立つポイントをご紹介します。
同僚や後輩が“部下”になる
辞令を受けて、とある日から突然上司と部下の関係がスタートすることもあります。
自分が部署を異動したり、新卒が部下になったりする場合であれば良いですが、同じ部署で昇進・昇格したとなると、これまで同僚だった人、単なる後輩だった人が自分の指示で動くようになることになり、その距離感の作り方は難しいものとなるのです。
とある新米上司は、これまで仲良くしていた後輩との関係が上司・部下の関係になった途端、急に距離が出来てしまい、それまでは毎週のように2人で飲みに行っていたにも関わらず、会社全体の飲み会でしか一緒に飲む機会はなくなったそうです。
対立する必要はもちろんないし、かといって馴れ合いになってしまっても、仕事に支障が出てしまいます。
上司と部下の関係性は、それだけデリケートな問題なのです。
上司と部下は仕事の関係であるという前提
仕事には、必ず目的や目標があります。
上司・部下という関係は、この目的や目標を達成するために必要な関係であるという前提を忘れてはいけません。
部下に気持ちよく働かせることばかりを考えてしまい、部下の顔色ばかりを伺っている「勘違い上司」がよくいます。
もちろん、気持ちよく元気に頑張ってもらえる環境を作ることが上司の役目であることに異論はありません。
しかし、何のために働いてもらうのか、その目的を忘れてはいけないのです。
あくまで目的は、仕事の目的・目標を達成することです。
ここからズレた動きや接し方は、どんなに良さそうなことをやっていても、間違った行動なのです。
怒ることがあるのも当然
怒ったら、部下のモチベーションが下がるのでは・・と、心配している上司の方をこれまでにもたくさん見てきました。
もちろん、怒る側も気分が良いものではないですし、それは怒られる側だって同じです。
しかし、この怒るという行動が会社や部下のためになるのであれば、”嫌でも”怒るべきです。
仕事の目的・目標達成のためといえども、間違った行動をし、それを続けてしまう可能性があるのであれば、それは注意すべきであり、しっかりと修正させなければなりません。
(たまに、自分のストレス発散で怒っている上司もいますが、これは無意味です。気分が良いのは上司だけですから。)
部下の未来を考えて接しよう
目先の気持ちよさ・楽さだけを考えた上司の接し方は、ゆくゆくは部下をダメにしていきます。
若手であればあるほど上司の一挙手一投足を見ており、その影響力は大きいものです。
そんな影響力のある上司からチヤホヤされるだけの部下が、成長できるわけがありません。
間違っていることは正し、正しいことをやったら褒める。
当たり前ですが、この当たり前を徹底することが、上司に求められる関わり方なのです。
この正しいか否かの判断は、仕事の目的・目標達成につながっているかです。
そして、その視点で部下と接することができれば、部下の未来も必ず良い方向に進むはずです。
上司に求められるのは、感情で動かないこと
とはいえ、なかなかそういった一貫した動きを取るのは、難しいものです。
上司も人間ですからね。イラッとすることもあれば、疲れているときもあるはずです。
しかし、感情で動いては、一貫した動きを取ることはできません。
自分の今の指示や注意が、感情的になっていないかは常に注意を払うことが必要です。
同じ部下でも、皆違う
会社や部署の規模などによって、部下となる人数はさまざまですが、ひとくくりに「部下」と言っても、それぞれみな一人ずつ大きく異なります。
立ち位置・役割が同じでも、部下もまた人です。
皆、考えていること、悩んでいること、思っていることは違います。大きな方向性、目指すもの、目的・目標は全員に統一しなければなりません。
しかし、それを理由に個々を見るのを怠ることは、間違っています。
ドラマやマンガに出てくるような上司の指示に、こんな言葉があります。
「会社の方針なんだから、黙ってやれ!」
いかにもありそうなセリフですよね。
しかし、これは個々を無視した、部下を手足としてしか見ていない典型的なセリフです。
もちろん、理屈の前にやらなければいけないこと、やってもらわなければいけないことが出てくるのが仕事です。
ただ、だからと言ってこのような十把一絡げにするような関わり方を続けていては、部下の心はどんどん離れていき、上司であるあなたと部下の間にいつしか壁ができてしまうことでしょう。
上司は、大きく全体を見ながらも、同時に個々のメンバーにも気を配ることが大切なのです。
今からできる部下との関わり方テクニック
ここまで部下との関わり方に関する考え方をお伝えしてきました。
しかし、具体的なアクションを変えなければ、部下との関係は変わらないことも事実です。
そこで、今からでもできる部下との関わり方が変わるコツをお伝えします。
1)挨拶を上司からしてみる
挨拶は部下からするもの、という先入観を捨ててみてください。
上司であるあなたから挨拶をすることで、話しやすい空気ができるのです。
部下が上司に声を掛けるのは、勇気がいるものです。
そのハードルを上司から取っ払ってあげることで、より話しやすい空気が生まれます。
2)ほうれんそうを徹底する
報告・連絡・相談をしやすい環境を作りましょう。
今、「ほうれんそう」の文化がない場合は、まずはルールとして「ほうれんそう」を義務化しましょう。
正直なところ、はじめのうちはかなり面倒なものです。
しかし、積み重ねていくことで、仕事の精度やスピード向上につながっていきます。
3)まずは聞く姿勢を持つ
上司で多いのが、部下の話を最後まで聞かず、自分の話をしてしまうことです。
これでは、部下も報告・相談をしたいと思えません。
むしろ、上司の接し方次第では、報告や相談をすること自体に怯えてしまうかもしれません。
まずは、「最後まで聞くこと」を徹底してください。
4)スケジュールややっていることを「見える化」する
部下に「いつも忙しそう」「いつ話しかけて良いのだろう」と思われてしまうのは、コミュニケーションのタイミングを失う要因になります。
予定やどういう作業をしているのかを「見える化」することで、部下が上司に声を掛けやすくなります。
5)雑談の時間を作る
常に仕事の話だけをしていては、新しいアイデアなどは生まれにくいものです。
ときには上司から雑談の場を作ることも大切です。
結局一緒にいれば、最終的には仕事の話に変わっていってしまうものですが、そうした場を持つことで、話しやすい関係ができあがっていきます。
関わり方の前に誰にでも完璧な上司を自分で求めないこと
部下との関わり方に関する悩みの原因の多くは、上司であるあなた自身が完璧を求めすぎてしまうことにあります。
誰にとっても、何をさせても完璧である上司などいません。
しかし、嫌われたくない、よく見られたい、尊敬されたい、そんな雑念が、上司と部下の関係をややこしくしてしまい、結局誰も幸せにならない、というケースが多々あるのです。
過度に完璧を求めすぎることなく、部下とは一緒に目標を達成する仲間として接していくのが良いでしょう。
この記事を書いた人 笹田裕嗣
社員数1,000名超の会社で新卒で入社し、1年目からトップの成績を残し、現在は営業代行、営業研修、さらには営業マンの育成を行っている。担当したクライアントは3ヶ月で売上200%増、初の受注獲得の実現等の実績を持つ。また、営業マンの個別コンサルティングでは、全てのメンバーがコンサルティング開始後、1ヶ月以内に受注をあげている。
「営業で苦しむ人をなくし、営業を楽しめる世界を作る」ことを目指している。