ファイブフォース分析とは?分析の方法や注意点など徹底解説

最終更新日 : 2021-08-26 Box

マーケティングに関するフレームワークには様々なものがありますが、基本となるフレームワークのひとつがファイブフォース分析です。

ファイブフォース分析は、業界構造を明確にできるフレームワークとして広く使われていますが、ここではファイブフォース分析の概要からメリット、分析する際の注意点などについて解説していきます。

ファイブフォース分析とは?

ファイブフォース分析とは、アメリカの経営学者マイケルポーター氏が提唱したフレームワークで、ファイブフォースモデルと呼ばれることもあります。

ファイブフォース分析のフォースとは脅威のことで、競争要因のことを表しています。

また、一般的なマーケティング戦略策定は、まず環境分析から始まり、戦略立案した後に施策立案するという流れで行われますが、ファイブフォース分析は環境分析の手法のひとつです。

ファイブフォース分析は、5つの競争要因を分析するフレームワークで、ひとつひとつの要因を分析していくことで、業界構造を把握するとともに、自社の競争優位性を明らかにすることを目的にしています。

業界の構造や自社の競争優位性を明らかにすれば、どのような戦略が有効なのか、問題や課題へどのように対処すべきか、その業界へ参入すべきかといった判断が行いやすくなります。

ファイブフォースの5つの要素

ファイブフォース分析のファイブフォースとは、自社にとって脅威となる5つの要素のことを表していますが、ここからはファイブフォース分析の5つの要素について詳しく解説していきます。

1.売り手の交渉力

1つ目の要素は、売り手の交渉力です。

ここで言う売り手とはサプライヤー(仕入先)のことで、例えば製造メーカーであれば原材料のサプライヤー、販売会社であれば卸会社のことを指します。

そして、売り手の交渉力とは自社とサプライヤーの力関係のことを表します。

自社が商品やサービスを提供するには、当然ながら材料などの仕入れを行う必要がありますが、サプライヤーの影響力が大きい業界では仕入れコストが高くなりがちです。

つまり、売り手の交渉力は、自社の利益を左右する要因になるということです。

2.買い手の交渉力

2つ目の要素は、買い手の交渉力です。

買い手とは顧客のことで、買い手の交渉力とは自社と顧客との力関係のことを表しています。例えば、競合他社が多く価格競争が激しくなると、買い手優位となって自社の収益性は低下していくでしょう。

また、この要素は顧客のスイッチングコストに左右されます。

スイッチングコストとは、顧客が現在使用している商品・サービスを切り替える際に発生する、金銭・手間・心理的負担のことで、スイッチングコストが低いほど顧客の交渉力は強く、高いほど顧客の交渉力は低くなります。

3.競合企業の脅威

3つ目の要素は、競合企業の脅威です。

これは、既存の競合他社との直接的な競争を表していますが、この脅威は自社と競合他社の規模によって変わります。

例えば、自社が市場を独占しているような状況であれば、競合企業の脅威は少なくなりますが、競合他社の規模が自社と同程度、もしくは自社以上であった場合は大きな脅威となります。

他社との競争が激しい場合、商品やサービスの差別化を図っていかなければ、基本的には他社に打ち勝つことはできません。

しかし、簡単には差別化できないケースも多いので、基本的に競合他社が多いほど自社の収益性は低下していきます。

4.新規参入者の脅威

4つ目の要素は、新規参入者の脅威です。

これは、文字通り新たな企業が業界に参入してくることに対する脅威のことを表しています。

新規参入のハードルは業界によって大きく異なりますが、業界に新たな企業が参入すると競争が激化するので自社の収益性は低下するのが一般的です。

そのため、飲食店などの新規参入のハードルが低い業界では、現状では競争が激しくない場合でも、将来的には次々と新規参入が起こって自社の利益が低下していくことが予想されますが、逆に新規参入のハードルが高い業界の場合は、一定以上の収益性を確保できる業界と判断することができます。

5.代替品の脅威

5つ目の要素は、代替品の脅威です。代替品とは、既存の商品やサービスとは異なるものの、顧客の立場では同じニーズを満たしてくれる新たな商品やサービスのことを指します。

つまり、代替品の脅威とは、同業他社の商品やサービスの脅威ではなく、雑誌や小説などに対する電子書籍、家庭用ゲームに対するスマホアプリゲームなど、業界外で誕生した新たな商品やサービスに対する脅威のことです。

代替品が登場した場合、その商品やサービスによって市場を奪われてしまう可能性が高く、自社の利益が低下していくことが予想されます。

ファイブフォース分析を行うメリット

ここまで、ファイブフォース分析の概要と5つの要素について解説してきましたが、ここからはファイブフォース分析を行うメリットについて確認していきましょう。

1.自社の強み、競合との違いが把握できる

企業が成長し続けていくためには、既存の事業を拡大したり、新たな業界に参入したりする必要がありますが、どちらを行うにしても、自社の強みや競合他社との違いを把握しておくことが重要です。

ファイブフォース分析は、環境分析の際に使えるフレームワークで、業界全体に目を向けることで自社の強みや競合との違いを把握することができます。

これらを把握できれば、既存事業の拡大を目指すケースでも、新たな業界に参入を計画するケースでも、有効な施策立案につなげることが可能です。

2.収益向上の戦略に結びつく

ファイブフォース分析を行って自社の強みや競合との違いを把握できれば、収益性の低下を防ぐための戦略や、他社との競争の中で優位性を保つための戦略を立案することもできます。

そして、具体的な戦略が立案できれば、現状の脅威に対する有効な施策立案にもつながるでしょう。

なお、ファイブフォース分析に限りませんが、分析手法はあくまでも手段であって、具体的な戦略や施策につなげなければ意味がないので、ファイブフォース分析を行う際はこの点を念頭に置いておきましょう。

3.今後の脅威

ファイブフォース分析は、業界全体の現状を把握できるだけでなく、将来的にどのような脅威が現れるのかを予想することもできます。

上記の通り、ファイブフォース分析を行うと自社の強みを把握できますが、同時に弱みも把握可能です。

自社の弱みは将来的な脅威になる可能性が高く、現状では大きな問題になっていないとしても、将来的には自社の利益を大きく低下させる要因となる恐れがあります。

しかし、ファイブフォース分析を行って自社の弱みを把握しておけば、大きな問題になる前に対策を講じることが可能です。

4.新規参入・事業撤退の判断

ファイブフォース分析を行うと、業界構造を把握できるので、その業界へ新規参入すべきか、その業界から撤退すべきかの判断を行いやすくなります。

自社の収益性が高い業界であれば新規参入すべきですし、著しく低いのであれば事業撤退すべきですが、ファイブフォース分析を行えばその業界における自社の収益性を把握できます。

新規参入・事業撤退の判断が容易になるので、新規参入や事業撤退を検討しているならファイブフォース分析は欠かさずに行っておくべきでしょう。

ファイブフォース分析の注意点

ファイブフォース分析を行うことで様々なメリットが得られますが、正しく分析を行わなければ十分な効果は得られません。

ここからは、ファイブフォース分析を行う際の注意点を5つの要素ごとに解説していきます。

1.売り手の交渉力

売り手の交渉力は、売り手の商品のスイッチングコストや、買い手グループの数、他社との差別化の有無などを基準に判断しましょう。

例えば、スイッチングコストが高い場合や、買い手グループが多い場合、他社との差別化がなされている場合は、売り手の交渉力は強くなるので、自社の収益性は低下します。

また、その業界を少ない企業で独占している場合も、売り手の交渉力は強くなります。

2.買い手の交渉力

買い手の交渉力は、スイッチングコストの高さ、買い手の規模、他社との差別化の有無といったポイントで判断します。

基本的には、売り手の交渉力の逆と考えて問題ありません。例えば、スイッチングコストが高いほど買い手の交渉力は弱まりますが、大企業などが買い手の場合や他社との差別化が図れていない場合は買い手の交渉力が高まり、値引きされやすくなります。

3.競合企業の脅威

競合企業の脅威を分析する際は、競合企業の数や各企業の知名度・ブランド力・資金力、業界全体の規模や成長率、差別化の状況といったポイントを確認しましょう。

競合企業の数が多い場合や、各企業が多種多様な差別化を図っている場合、業界の規模が小さかったり成長率が低かったりする場合においては、利益を出すのは難しくなります。

4.新規参入者の脅威

新規参入者の脅威の分析では、新規参入のハードルがどの程度高いのかを判断しましょう。

新規参入のハードルは、既存企業の経営状況や市場内の差別化の状況、運転資金の額などによって左右されますが、ハードルが低いほど新規参入者の脅威が高まります。

また、市場成長率も参入ハードルの高さに影響する要因で、成長率が低い場合は基本的に市場は飽和状態となるため参入ハードルは高くなります。

5.代替品の脅威

代替品の脅威を分析する際は、どのような商品やサービスが代替品になり得るのかを適切に考えることが重要となります。

代替品になり得る商品・サービスが多いほど利益を出しにくくなりますが、代替品として考える商品やサービスの範囲が広すぎても狭すぎても適切な分析はできません。

そのため、この要素を分析する際は代替品の費用対効果や、その業界の利益率や市場成長率を考慮して、どの程度の脅威になるのかを考えましょう。

SWOT分析への活用

ファイブフォース分析を行うと、自社を取り巻く外部環境を把握することができます。

そのため、企業の内部環境と外部環境をプラス面とマイナス面に分けて分析するSWOT分析の前段階として利用することも可能です。

ファイブフォース分析で得られる自社の収益性を反映させれば、SWOT分析の精度が高まるので、より効果的なマーケティング戦略へとつなげることができるでしょう。

ファイブフォース分析まとめ

自社にとって脅威となる5つの要素を分析するファイブフォース分析は、自社の強みや競合との違いを把握できる、今後の脅威を予想できる、新規参入・事業撤退の判断がしやすくなるといったメリットがあります。

しかし、ファイブフォース分析は、マーケティング戦略策定における環境分析の手法でしかありません。

分析結果をもとに具体的な戦略立案を行い、有効な施策につなげなければ意味がないので、この点を念頭に置いてファイブフォース分析を行うことが大切です。

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