ビジネスモデルキャンバスとは?作成するためのポイントを解説

最終更新日 : 2022-01-31 Box

ビジネスモデルをまとめるときには、ビジネスモデルキャンバスを活用することができます。

9つの要素から成り立つものであり、多面的な角度からビジネスモデルについてまとめたり分析したりすることが可能です。

ここでは、ビジネスモデルキャンバスの基礎的な知識を解説します。自社で取り入れる前に基本的な内容について理解を深めておきましょう。

ビジネスモデルキャンバスとは?

ビジネスで使えるフレームワークはたくさんありますが、ビジネスモデルキャンバスもその1つです。

スイスの学者によって提唱されたものであり、同国のコンサルティング会社が世界的にこのフレームワークを広めました。

BMCと略されることも多いものであり、近年では多くの企業がこれを取り入れるようになっています。

9つの要素についてバラバラに考えていくのではなく、関連づけながら作成を行っていくところが重要なポイントです。

全体像を可視化することができるため、新ビジネスモデルの開発から既存ビジネスモデルの分析や調査まで、このビジネスフレームワークを用いることができます。

自社はもちろんのこと、他社のビジネスモデルまで把握できるようになることもビジネスモデルキャンバスの魅力です。

ビジネスモデルキャンバスを作るメリット

作成することにどのようなメリットがあるのか知らない人もいるかもしれません。

ここからは、ビジネスモデルキャンバスをつくるメリットを紹介します。

1.ビジネスモデル全体を細かく把握できる

ビジネスモデルの全体を細かく把握できるところが、このビジネスフレームワークの素晴らしい部分です。

多彩なフレームワークが存在していますが、一点集中型のものや特定の分野のみを分析するものが少なくありません。

全体を俯瞰できるものは少ないですが、ビジネスモデルキャンバスであれば網羅的な俯瞰を実現できます。

9つのセグメントに分類することによって、多面的な視点で的確にビジネスモデルが把握できるようになるでしょう。

2.競合分析に利用できる

競合分析に利用できることも、ビジネスモデルキャンバスを作成することの利点です。

競合企業が成功しているのであれば、ビジネスモデルキャンバスに当てはめていくことによって成功の理由が探れるようになります。

自社に活かせる手法や工夫を発見することにも繋がりますし、ライバル企業の弱点が発見できる可能性も高いです。

ライバルに関する分析までこなしたいと考えているのであれば、ビジネスモデルキャンバスを活用すべきだと言えます。

3.社内・メンバーと共通認識が作れる

社内でビジネスモデルに対する共通認識を持てるようになることもビジネスモデルキャンバスの利点です。

自社全体や部署内、プロジェクトメンバー間で同じような認識を持てるため、円滑に業務を進めやすくなります。

新たなビジネスを開発したり、既存ビジネスに改善を加えたりするときには、会社全体や複数の部署が関わることになるケースが多いです。

ビジネスモデルキャンバスを用意しておくことで認識にズレが生じにくくなり、スムーズに目標を達成できるようになります。

ビジネスモデルキャンバスの9つの要素

ビジネスモデルキャンバスを作成する前に、9つの要素について十分な理解を持っておく必要があるでしょう。

1つずつ詳しく解説するので、参考にしてください。

1.顧客セグメント(CS:Customer Segments)

顧客セグメント(CS:Customer Segments)では、誰にサービスを提供することになるのか整理していきます。

ビジネスモデルを考えるときには、価値を提供する相手が重要となるので、地域や年齢、性別やニーズ、目的などで顧客を分類しましょう。

グループ化した上でどういったセグメントに関係しているのか調査したり、最も重視する顧客は誰なのか調べたりすることが顧客セグメントにおける大切なポイントだと言えます。

2.価値提案(VP:Value Propositions)

価値提案(VP:Value Propositions)は、先ほど書き出した特定の顧客についてどのようなサービスを提供するつもりか、どのようなニーズを満たしたいのかまとめるステップです。

書き出した顧客セグメント1つ1つにおける提供する内容を考えていくことになるので、複雑化する場合は価値提案ブロックだけを取り出して整理していくことをおすすめします。

顧客が得られるメリットや、どういったユーザーエクスペリエンスが期待できるのか考える過程です。

3.チャネル(CH:Channels)

チャネル(CH:Channels)は、特定の顧客にどのようなチャネルでアプローチするのか、サービスをもたらすのか記述してください。

具体的な販売方法だけではなく、顧客に製品やサービスが届けられるまで、届いた後のことまで考える必要があります。

顧客獲得のためのコミュニケーションやアフターフォロー、プロモーションまで、ここで考えておくことになると理解しておきましょう。

確実に価値が届けられるように、的確にサポートやアプローチができるように考えることが大事です。

4.顧客との関係(CR:Customer Relationships)

顧客との関係(CR:Customer Relationships)では、顧客とどういった関係を構築したいのか書いておきます。

チャネルと混同してしまう人が多いですが、CRとCHは別物です。CRは対面で直接的な接客を行うのかセルフサービスにするのか、継続した関係になるのか1回きりの関係なのかなどをまとめるステップだと言えます。

CHは接触する場所を考え出しますが、CRは具体的な手法を考えることになると覚えておくと良いです。

顧客やチャネルの特性に合った関係の築き方を考え出す必要があります。

5.収益の流れ(RS:Revenue Streams)

収益の流れ(RS:Revenue Streams)は、詳細な収益のフローを書き出す部分です。

顧客がどのようなサービスに対価を支払うのか、どういった方式でお金を支払うのか書いていきます。

固定価格を決定するだけでなく、安売りやキャンペーンの可能性はあるのか、オークション方式で販売することはあるのかなど、価格や売り方について幅広く考えておくことが重要です。

サブスクリプションサービスを用意するのか、オプション料金を設定するのかなども収益の流れにて考えておきます。

6.リソース(KR:Key Resources)

リソース(KR:Key Resources)は、製品やサービスを販売するために必要な資産を指す言葉です。

製造するための設備や材料はもちろんのこと、知的財産から労働力までリソースに含めて考えなければなりません。

自社内で賄えるものもあれば、新たに用意することになるものもあるはずです。リースや協力企業による提供リソースの有無も、ここで記しておく必要があります。

ヒト・カネ・モノ・情報の全てのリソースについてまとめられるようにしてください。

7.主要活動(KA:Key Activities)

主要活動(KA:Key Activities)は、価値提供までに重要な活動を指しています。

ビジネスモデルキャンバスを作成した後には、絶対に実行しなければならない重要な活動がたくさんあるはずです。

市場調査から人材確保、商品の製造を始めとする様々な活動があります。主要活動には必須である活動だけでなく、ライバル企業のビジネスモデルや自社の既存ビジネスとの差別化に繋がる活動をしっかりと記載しておきましょう。

細かい作業まで全て網羅する必要はなく、重要なものと特別なものを主要活動とします。

8.パートナー(KP:Key Partners)

パートナー(KP:Key Partners)は、言葉から分かるように協力相手のことを指しており、ビジネスモデルキャンバスにおいては代わりがいない相手を書くようにしてください。

ビジネスモデルを実現するために必要なサプライヤーとパートナーを書くことになりますが、顧客とパートナーが重複する企業もあるはずです。

その場合は、自社からお金を支払う相手はパートナー、相手にお金を支払ってもらう場合は顧客セグメントに記述すると良いでしょう。

9.コスト構造(CS:Cost Structure)

コスト構造(CS:Cost Structure)は、ビジネスモデルキャンバスをもとに構築されたビジネスを運営する際に発生するコストをまとめる部分です。

コストを書き連ねるだけでは分かりづらさを招くので、固定費と変動費に分けて記述することをおすすめします。

素晴らしいアイデアがあってもコストが用意できなければ実現は不可能です。ビジネスとして成り立たせるためにも、人件費や製造費、開発費や広告費などのコストを詳細に記載しておきましょう。

ビジネスモデルキャンバスの作成の流れ

ビジネスモデルキャンバスの9つの要素を理解することができたのであれば、具体的な作成の流れを確認しておくと良いです。

論理的に設定を行っていく必要があり、いい加減な手順では的確に作成していくことができません。

最初に顧客と価値提案に関するセグメントを埋めていくことが大切だと言えます。顧客と価値提案の内容を決めることができれば、他の要素はスムーズに決まっていくはずです。

そこからは、チャネル・顧客との関係・収益の流れ・リソース・主要活動・主要パートナー・コスト構造の順に進めていくことをおすすめします。

コスト構造は俯瞰的な視点を持って判断する必要があるため、最後に設定するようにしてください。

ビジネスモデルキャンバスの作成のポイント

ビジネスモデルキャンバスを作成する際のポイントを紹介します。

やみくもに行っても上手くいかないという問題を引き起こすので、ポイントを理解してから進めると良いです。

1.事前調査をしっかり行う

事前調査は入念に行っておくべきだと言えます。ビジネスモデルキャンバスをつくるときに、当てはめる情報の質が低ければ良いモデルを生み出すことができません。

調査には時間も手間もかかるため、おざなりにしてしまう人もいます。ですが、思いつきのアイデアやライバルの模倣では意味がないです。

自社と市場の過去から現状までリサーチし、確度の高い情報を仕入れておくべきです。

充実した調査の実現は、高精度なビジネスモデルキャンバスの創出に繋がります。

2.短時間でまずは簡単に作成する

ビジネスモデルキャンバスをつくろうとすると、作成に長い時間がかかってしまうことが多いです。

事前調査には時間をかけたほうが良いですが、9つの要素を書き出す過程では短時間でサッと作成することがおすすめだと言えます。

短時間で思いついた内容をもとにして、加筆修正を行うと良いです。こうしたやり方を取り入れると、思考の拡散によって多くのアイデアが浮かびやすくなります。

初めから書きづらいところに時間をかけるのではなく、スムーズに埋められる要素からテンポ良く書いていくと良いでしょう。

3.他のフレームワークも活用する

他のフレームワークを活用することも、ビジネスモデルキャンバス作成時に大事なことです。

ビジネスモデルキャンバスだけで完結させなければならないという決まりはないため、使えるビジネスフレームワークは使用しても問題ありません。

要素ごとに最適なフレームワークを使用することができれば、より高品質なビジネスモデルキャンバスを完成させることができるはずです。

既にフレームワークを用いて分析している内容がある場合は、必要に応じて既存データを活用することもできます。

リーンキャンバスとの違い

ビジネスモデルキャンバスと類似するものにリーンキャンバスがありますが、こちらはエリック・リース氏という起業家が提唱しました。

リーンキャンバスはビジネスモデルキャンバスの顧客に関係する部分をより詳細に分析するものであり、更に踏み込んだ分析や整理を可能とする手法です。

詳細を聞くとリーンキャンバスを用いるべきではないかと思うかもしれないですが、これはより細かくコストを把握しておかなければ成り立たせることができないものだと言えます。

細かくコストが分かっている場合は活用できますが、そうでない場合は手軽に利用できるビジネスモデルキャンバスを用いることがおすすめです。

まとめ

自社でビジネスモデルキャンバスを取り入れる場合、ビジネスモデル構築やライバル企業の分析を目的として活用することができます。

9つの要素や作成時のポイントを理解しておけば、誰でも作成に挑戦することができるでしょう。

細分化された要素のおかげで俯瞰的な視点を持ってビジネスモデルがつくれるようになるので、全体像を把握しながら創出や分析を行いたい場合は、ビジネスモデルキャンバスを積極的に活用してみてください。
 

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