SMARTの法則とは? 目標の設定方法や事例、派生した3つの法則も解説!
何かを達成するために目標を立てても、三日坊主で終わってしまった経験はないでしょうか。
時間をかけて目標を作っても、それを実現することができなければ設定しても意味がありませんし、かと言って簡単に達成できてしまうものも目標とは呼べません。
ここでは、しっかり実現できる目標の立て方「SMARTの法則」について解説します。
SMARTの法則とは
SMARTの法則とは、目標達成の実現を最大限に高める5つの基準に基づく目標の立て方です。
1981年にジョージ・T・ドラン博士が提唱した法則で、ビジネスを含むあらゆる場面において使われています。
5つの基準とは、「Specific(具体性)」「Measurable(計量性)」「Achievable(達成可能性)」「Relevant(関連性)」「Time-bound(期限)」で、この5項目の頭文字を取ってSMARTの法則となりました。
目標に対してこれらの要素を埋めていくことで実現性の高い具体的な設定が可能となり、「立てた目標は適切か」「達成できる水準にあるか」といったあらゆる角度からチェックすることができます。
この5つの要素に従って設定することで常に高いモチベーションが維持され、成功への確率が高まると言われています。
FASTの法則との違い
FASTの法則は、SMARTの法則と同様にマネジメントの専門家が作った新しい目標設定の法則で、「Frequent(頻繁)」「Ambitious(野心的)」「Specific(具体的)」「Transparent(透明性)」の4項目の頭文字を取って命名されました。
FASTの法則とSMARTの法則の違いは、FASTの法則で立てられた目標は、現実的というよりは「野心的」な設定となっていることにあります。
SMARTの法則の「A」は達成可能性で、FASTの法則の「A」は野心的を意味していることがポイントです。
つまりFASTの法則とは、「野心的な目標設定ではあるものの、ただし実現不可能ではない範囲で」という設定方法となっています。
目標設定の重要性
目標設定が重要な理由は、達成のためのステップを可視化できることにあります。
設定せずに物事を進めていくということは「目的地を決めずに歩き続けるようなもの」で、モチベーションを維持することが困難です。
また何を目指すのかわからないままでは、どれが正しいのか間違っているのもわからなくなってしまうなど、方向性を見誤ってしまう可能性もあります。
目標を設定することによって達成するまでにたどるステップが見えてくるなど、通る道筋がはっきりすれば途中で何か想定外のことが発生しても、自分は何をやるべきなのかということが常に明確になります。
SMARTの法則の各要素
ここからは、SMARTの法則による目標設定に必要な5つの要素の頭文字である「SMART」の各項目について詳しく解説します。
Specific〔具体性〕
SMARTの法則で設定する際に、一番重要な要素が具体性です。
目標が抽象的では達成するための行動が明確にならないため、手段や時間なども含めて具体的に設定することが重要です。
ただ漠然と「スキルアップを図る」「ヒットする商品を作る」などの抽象的な目標を立ててしまうと、さあ今日から始めようと思っても何をどのように始めたらよいのかが分からず、最初の一歩を踏み出すことができなくなってしまいます。
関係者全員が共通の認識・意識を持って達成に向けて突き進んでいくためには、明確で且つ具体性のある目標が必要不可欠です。
この「Specific」を意識しながら目標を設定することによって、個人やチームのパフォーマンスを達成へ向けて最適化する力が生み出されます。
Measurable〔計量性〕
2つ目の要素は、達成度を測れるかどうかです。Measurableには計量できるという意味があり、測定可能、すなわち「数値化できること」と置き換えてもよいでしょう。
効率的で有効性の高い目標に向かって行動するためには、数字で測れるように設定することが重要となっています。
中には未来の理想像などの単純に数値では表せない定性的な場合もありますが、可能な限り測定可能で定量的なものであることが理想です。
そのようにすることで、数値によって実際の達成度を把握できるようになりモチベーションの向上と維持にも繋がります。
自分の立てた目標を測定するのに適したなんらかの「指標」を用意し、達成と呼ぶことのできる数値を設定することが大切です。
Achievable〔達成可能性〕
3つ目の基準は「達成可能か」どうかです。
「夢」と「目標」を分ける重要な部分でもあり、理想ではなく現実的であることをチェックしながら設定することがポイントです。
人は誰でも理想を高く掲げがちですが、実現性が低くては立てる意味がありませんし、モチベーションの低下によって効率も悪化してしまうなど、目標を設定することの意味自体を失ってしまう可能性もあります。
ただ、達成が簡単すぎるものを設定するのも問題で、適度に努力が必要な目標が設定されているのかをしっかりと考える必要があります。
自分自身の性格や生活習慣、会社を取り巻く状況などを冷静に分析した上で、実現可能な目標を設定することが大切です。
Relevant〔関連性〕
SMARTの法則における4つ目の基準は「関連性」、つまり目標の達成が自分のメリットに繋がっているどうかです。
達成できたらその先には何があるのか、何を目的として達成するのか、という双方の関連性を明確にすることでモチベーションの向上と行動の継続をすることが可能です。
例えば毎月節約して5万円ずつ貯金するという目標を掲げた場合、1年間で60万円貯まるので今よりも広い部屋に引っ越して生活環境を改善するなど、何かを達成することで何かができるようになるというイメージです。
達成してもメリットがない目標を掲げてしまうと継続する意欲を失ってしまうため、その関連性を明確にしておくことが大切です。
Time-bound〔期限〕
SMARTの法則の最後5つ目の基準は、「期限が設定されているか」どうかです。
期限のない場合は集中して取り組むことができなくなったり、いつまでも見通しが立たなくなってしまうため達成が困難になります。
ゴールの期限だけではなく、一定のタイミングで進捗状況の確認を行い、必要に応じて達成のための方法の変更など軌道修正をすることも重要です。目標を立てるということは、その行動や物事の変化に対して一定の必要性や意味を感じたということです。
期限を意識しながら適切に行動することによって「今何をするべきなのか」が明確となり、適度な緊張感を保ちながら達成という重要なミッションに向き合うことができるようになります。
SMARTの法則の具体例
ここまでSMARTの法則について解説しましたが、より具体的に企業の営業における例を挙げてみましょう。
企業にとって売り上げをアップさせることは、営業に課せられた重大な使命です。
商品やサービスが売れて上司や会社から認められるためにも、SMARTの法則による目標設定をすることが大切です。
具体的には1日に最低1件だけでも顧客にアポイントを入れたり、1件だけ飛び込み営業を試みることです。
これがSMARTの法則における「S」の具体性で、「0」を「1」にするような、すぐに達成できる簡単なことから挑戦することが大切です。
「M」の計量性については、「1週間で名刺を7枚入手する」などにすると達成度が計りやすくなります。
そして「A」の達成可能な目標については、プレゼンの方法やアプローチ方法を考えたり、売り上げのよい先輩や上司からロールプレイングを受けると効果的です。
「R」の関連性では、売り上げがアップすればいずれは企業内でも評価されるようになりますが、そうなるためにはある程度の期間が必要なため、目の前の目標を達成した場合に自分にご褒美をあげるなどがあります。
最後に「T」の期限ですが、まず1ヶ月を目安に行動してみましょう。その上で、設定した結果に対する進捗を確認して新たな目標を立てることが大切です。
SMARTの法則の利用のポイント
次に、計画の成功を判断する指標となるように、実際にSMARTの法則を取り入れる場合のポイントについて解説します。
1.成果だけでなく行動目標も設定する
目標には「成果目標」と「行動目標」の2つがあります。成果とは最終的な成果を目標化することですが、外的な要因も含むことがあるため自身の行動だけでは達成できないことも少なくありません。
行動とは自身が動けば達成できるもので、これを組み込むことで目標の達成率を上げることができます。
具体的には「今年中に英語検定2級を取る」を成果とした場合、それを実現するために「英語検定に関する書籍を10冊読む」や、「英語の専門学校に通う」などが行動になります。
行動目標の良い面は、するべき行動が明確になる点にあります。
そのため「迷い」が生じないことから淡々と行動を積み重ねるだけで、結果は後から付いてくる方式です。
不確定要素が多い結果に行動を重ねることで達成への近道となります。
2.PDCAサイクルをしっかり行う
目標を設定する場合は、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」のPDCAサイクルをしっかりと行うことが重要です。
「Plan」の段階では、目標までのプロセスを逆算して具体的にやるべきことをリストアップし、「Do」ではPlanの段階で立てた計画を実行に移します。
そしてDoで実行した内容がどれくらいの成果に繋がったのか評価・検証を行うことが「Check」で、「Action」ではCheckで検証した結果に基づいて、次にどのような行動や対策を行うのか考え改善を行います。
特に計画通りに上手く行かなかった場合は改善策を十分に考えることが大切で、その策を次のPlanの段階で活かせるようにすることがポイントです。
また、これらを常にチェックしていることで、高いモチベーションを常に維持することも可能となっています。
SMARTの法則の派生
1981年に誕生したSMARTの法則は既に40年以上も経過しています。
そこで新たな概念を取り入れた派生版の代表的な3つの法則について解説します。
1.SMARTER
SMARTERは、SMARTに「E」と「R」が追加された法則です。
Eは「Evaluated」の頭文字で「他者の評価」を意味しており、主にビジネスの世界では上司に評価されるという意味があります。
社会人になると年齢や社歴などに関係なく、課せられた仕事の結果に対して責任を負うのが宿命です。
必要なのは自分の目線ではなく、相手の目線で相手が何を望んでいるのか考えて行動することが大切です。
Rは「Recognized」で「認められた」という意味があり、その目標設定に対して承認されたものかを指標に取り入れています。
企業の意としないことを目指しても評価されることはありません。企業と自分の目指すベクトルが同じ方向の設定をすることが大切です。
2.SMARRT
最近では、SMARTにRがもうひとつ付いた「SMARRTの法則」を提唱している人も増えています。
新たに付けられたもうひとつの「R」は「Realistic」の頭文字で、現実的かどうかを意味しています。
どれだけ素晴らしい目標を立てたとしても、それが現実離れしてしまっていては達成することは困難です。
また、努力したのに達成できなかったのでは、その後の活動にも悪影響を及ぼします。
この現実的かどうかを組み込むことで、ハイリスク・ハイリターンを避けることにも繋がります。
最終目標をぎりぎり達成できるラインに設定することで、その時点におけるパフォーマンスを最大限発揮することが可能となります。
3.SMARTTA
SMARTTAは、SMARTの法則に「T」と「A]を加えた法則です。
Tは「Trackable」の頭文字で「辿る」や「追跡する」を意味しており、最終的な目標に対して現時点でどのレベルまで到達しているか、今までに取った行動がどのように結果に結びついたかを検証することができます。
Aは「Agreed」の頭文字で、「合意がある」という意味です。
ここでの合意とは目標に関わる社内のメンバー間の合意を指しており、メンバーの誰もがその目標について納得し、コミットしているものかどうかが指標に加わっています。
独りよがりで設定しても周囲はついてこないため、全員が納得できる目標を立てることが大切です。
SMARTの法則まとめ
このようにSMARTの法則は、個人のスキルアップはもちろんのこと、企業における業務の改善や新入社員の育成などに大変有効です。
始めから手の届かない高い目標を設定するのではなく、届きそうな少し上を設定し、成功体験を積み重ねることで更なる成長を促すことができます。
目標を達成「できた」「できない」という視点で評価されることも多いですが、目標達成に向けて行ったアプローチは将来的な自分自身の糧となるので、SMARTの法則を活用してみてはいかがでしょうか。