アンゾフのマトリクスとは?活用方法や事例など詳しく解説!

最終更新日 : 2022-04-25 Box

ビジネスフレームワークの1つである、アンゾフのマトリクスについて解説します。

アンゾフのマトリクスは成長の可能性が可視化できる便利な存在です。特徴から利用時のポイント、事例まで紹介するので活用する際には参考にしてみてください。

アンゾフのマトリクスとは?

アンゾフのマトリクスは経営学者のイゴール・アンゾフによって提唱されたフレームワークです。

製品と市場に関して、既存と新規で4象限に分類し、戦略を考えていくことになります。アンゾフのマトリクスを活用するのであれば、4つの象限に潜んでいるリスクを踏まえながら、企業や製品の成長戦略を考えることが可能です。

経営戦略の父と呼ばれる人物が開発したフレームワークであり、戦略的な経営を実現する上で欠かせない存在の1つだと言えます。

アンゾフの成長マトリクスの利用場面

自社の既存事業が成熟しているとき、縮小しているとき、伸び悩んでいるときにアンゾフのマトリクスを利用することがおすすめです。

考えられる4つの戦略のうち、どこにリスクが少ないのか、何に注力すべきなのか的確に判断できるので、既存事業を成長させやすくなります。

各戦略マトリクスの説明

各マトリクスの詳細について解説していくので、アンゾフのマトリクスを導入する際の参考にしてみてください。

市場浸透:既存サービス × 既存市場

市場浸透は、既存サービスと既存市場が交差する部分です。

既に獲得している顧客に対して販売が開始されている製品を売ることをベースに、最もリスクが低くてビジネスを展開しやすいと考えられる戦略を考えていくことになります。

顧客ひとりあたりの購入数や購入金額が増えるようにしたり、購入頻度やリピート率をアップさせるための施策を考えたりすることになるでしょう。

具体的な施策の例をあげるとすると、商品購入時のセット割引、リピート割引の採用などがあります。

価格設定以外でも工夫できることはあり、充実したアフターフォロー体制を整えることでも成長を期待することが可能です。

リスクが低いため、市場浸透の施策は着手しやすいことが特徴的だと言えます。

市場開拓:既存サービス × 新規市場

アンゾフのマトリクスにおける市場開拓とは、既存サービスと新規市場をかけ合わせた存在です。

新市場開拓戦略と呼ばれることもあります。既存製品を新しい市場や顧客に販売するための戦略を考える部分です。

今までアプローチしていなかった市場へ働きかけることになり、新エリアへの出店、ターゲットの獲得などを実施することになります。

事業拡大を期待できる市場の特定には調査や分析が必要ですし、新たな市場で活動していくので市場浸透戦略よりもリスクが高くなることを覚えておきましょう。

地域専門サービスを全国対応のサービスにする、日本だけでなく海外の顧客を得る、子供向け製品を大人向けにも販売するなど、対称エリアや人物を変えながら実施していきます。

製品開発:新規サービス × 既存市場

製品開発は新規サービスと既存市場が交差するものであり、新商品開発戦略と呼ぶことも可能です。

簡単に説明すると、既存の顧客に向けて新しい商品を生み出していく戦略だと言えます。

商品開発に力を入れることになり、研究や開発のための施設、製造設備や人材などの新たな投資が必要となるケースが多いです。

既存顧客が相手なのでリスクが少ないと勘違いしやすいですが、新しい製品をつくり出すためにたくさんのコストが必要になりがちなので、市場浸透戦略と比べるとリスクが高くなる傾向が強いと言えます。

関連商品や付属製品の開発、バージョンアップした商品の販売などが、アンゾフのマトリクスではこの部分に当てはまると覚えておきましょう。

多角化:新規サービス × 新規市場

多角化戦略は最終戦略に位置する戦略です。新しい市場に向けた新しい製品の開発や販売を指しており、アンゾフのマトリクスの4象限の中で最もリスクが高くなりがちだと言えます。

過去に進出していない市場や製品分野へ進んでいくことになるため、それなりのリスクが伴うでしょう。

ただし、自社の既存事業が衰退したときに備えるという観点では、リスク分散の戦略だと言えます。

既存事業に頼り切っていると衰退時に巻き返すことが難しいですが、多角化を進めておくと新市場や新商品で乗り切れる可能性があると知っておくと良いです。

アンゾフのマトリクスでいちばん難しい戦略だとされていますが、自社の成長のために避けて通ることができない部分でもあります。

多角化戦略の4つのタイプ

多角化戦略は4つのタイプに分類することが可能です。

方向に合わせたタイプを紹介するので、詳細をチェックしておくことをおすすめします。

水平型多角化

水平型多角化は同じ分野で事業を拡大していく手法です。

既存のノウハウや戦略、サプライチェーンを活かすことができたり、既存事業とのシナジー効果を得やすかったりするところがこのタイプのポイントだと言えます。

アンゾフのマトリクスの4象限の中では、市場浸透戦略や製品開発戦略に近い多角化です。

乗用車をつくっていたメーカーが業務用トラックの開発をスタートしたり、清涼飲料水メーカーが日本酒製造を行ったりする場合は水平型多角化です。

乗り物や飲み物などの大きな枠組みの中で、違った製品を開発して売り出すものが水平多角型に該当します。

垂直型多角化

アンゾフのマトリクスの多角化戦略における垂直型多角化戦略は、バリューチェーンの上流や下流へ事業を広げていく手法です。

自動車メーカーを例にするのであれば、完成した車だけを売っていた企業が、部品製造や原材料調達まで携わるようになったり、販売会社をつくったりするようなやり方だと言えます。

既存事業の内容を変えることなく、川上と川下のいずれか、もしくはどちらにも事業を拡大していくことです。

食品メーカーが原料となる食材の栽培から始めたり、自社製品を使ったレストランをつくったりすることも垂直型多角化だと言えます。

集中型多角化

集中型多角化は中核となる技術や主要顧客に関連している分野に進出する方法です。

一見すると既存事業と全く関係がないように感じられたり関連性が低く感じたりするかもしれませんが、コア技術や主要ターゲットが重複しています。

集中型多角化の実際の例を確認してみると、フィルムを製造している企業が化粧品製造に乗り出していたり、避暑地にあるワイナリーが挙式会場の運営などブライダル事業を手がけていたりする例を見つけることができるでしょう。

肝となる部分を変えない状態で新しい分野に進出することは、集中型多角化に分類されます。

集成型多角化

集成型多角化は最も難易度が高い戦略です。これまでとは違った全く新しい製品を新しい分野で展開していくことが、集成型多角化だと言えます。

コングロマリット型多角化と呼ばれる戦略もこれです。製品も市場もほとんど関連性がないことが特徴であり、シナジー効果は得づらいと言えます。

単一事業としてのリスクは高いですが、企業全体で考えたときには業種が異なる事業が複数ある状態なのでリスク分散が実現できていると言えるでしょう。

自動車メーカーが金融事業に進出したり、家電メーカーが住宅事業に進出したりしているようなケースが集成型多角化です。

アンゾフのマトリクスを利用する時のポイント

アンゾフのマトリクスは非常に便利ですが、利用するときにはポイントを押さえておかなければなりません。

ここからは利用する際のポイントを紹介します。

1.自社の強みなどをしっかり把握しておく

自社にアンゾフのマトリクスを取り入れるのであれば、最初に自社の強みやビジネスモデルの付加価値などをきちんと把握しておくことが重要です。

強みや付加価値を理解していない状態で取り入れたとしても、アンゾフのマトリクスを活かすことはできません。

戦略が不適切なものになってしまうリスクがあるので、これらの把握から始めるべきだと言えます。

2.市場の動き・変化を意識する

アンゾフのマトリクス活用の際には市場の動きと変化を意識することも大事です。

最近ではビジネスに影響を与える要素が増えていますが、市場の動きや変化は変動しやすいものとなっています。

現状と先のことを考えて戦略を立てていかなければ、具体的な取り組みを開始したときにはアイデアが時代遅れになっている可能性もあるので危険です。

アンゾフのマトリクス事例

有名企業でもアンゾフのマトリクスを活用しているケースが多いと言えます。

事例を取り上げるので参考にしてください。

1.富士フイルムの事例

富士フイルムもアンゾフのマトリクスを見事に活用しています。

市場浸透戦略ではインスタントカメラの販売をあげられるでしょう。新商品の開発戦略では、診断システムを通じて医療業界に接点を持っていたので、新たな技術を開発してレーザー内視鏡や医療用画像情報ネットワークシステムの提供を開始しています。

新市場の開拓では、フィルム製造技術や光学レンズ技術を活用して、これまで参入していなかった市場に携帯電話用プラスチックレンズの提供や液晶用フィルムの提供を行いました。

多角化戦略は化粧品やサプリメント、医薬品分野への進出があげられます。

フィルム製造メーカーでありながら、こういった製品の開発や販売を行っていることが特徴的です。

このように、富士フイルムではアンゾフのマトリクスが十分に活用されています。

2.サントリーの事例

サントリーもアンゾフのマトリクスの活用を成功させている企業の1つです。

清涼飲料水やアルコール飲料、食品や健康食品の製造販売を行っています。

サントリーは国内だけではなく、アメリカやヨーロッパ、オセアニアやアジア諸国へも進出していることが特徴的です。

国内では根強い人気のある清涼飲料市場でシェアを拡大するための市場浸透戦略を行いつつ、新市場開拓として海外の進出も行っています。

買収による多角化戦略にも積極的で、米蒸留酒大手会社の買収、海外清涼飲料会社の買収などを行ってきました。

サントリーは海外の企業を買収することで、他社の魅力的な商品を得るだけでなく、新たな流通ネットワークの獲得や拡大も達成しています。

アンゾフのマトリクスまとめ

アンゾフのマトリクスを使うのであれば、自社の成長に結びつけるための戦略を考えられるようになるはずです。

4つの象限から効果的な戦略を考え、想定されるリスクを意識しながら行動に移せるようになります。

アンゾフのマトリクスを活用した戦略を実施している大企業も多いため、導入する際には事例を参考にすることもおすすめです。

特徴や事例を確認し、自社でもアンゾフのマトリクスを使いこなせるようにしておくと良いでしょう。

 

 

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