振り返りのためのフレームワーク「KPT」とは?実施のメリットや注意点・ポイントを解説!
ビジネスの世界では、様々なフレームワークが活用されていますが、業務やプロジェクトの効率的な改善を実現してくれるのが「KPT」です。
ここでは、KPTのメリットや進め方、実施する際のポイントといった基礎知識を分かりやすく解説していきます。
KPTとは?
KPT(ケプト)とは、現在の業務やプロジェクトを振り返り、効率的に改善していくためのフレームワークです。もともとは、システム開発の分野で活用されていたフレームワークで、現在取り組んでいる業務やプロジェクトを「Keep(良かったこと・継続すべきこと)」、「Problem(悪かったこと・解決すべき課題)」、「Try(どのように改善すべきか・次に取り組むべきこと)」の要素に分けて検討します。
Keep・Problem・Tryの3つの要素の頭文字をとってKPTと呼ばれていますが、これまで行ってきた業務やプロジェクトをKeepとProblemに振り分けた後、Tryを検討することで今後のアクションを効率的に導き出すことができます。
ふりかえりのフレームワークとも呼ばれるKPTは、ビジネスシーンだけでなく、プライベートでの活動にも活用することが可能です。
KPTのメリット
KPTは個人・集団、仕事・プライベートを問わず活用できる便利なフレームワークですが、ここからはKPTの具体的なメリットを確認していきましょう。
1.課題の早期発見
KPTのメリットとしてまず挙げられるのは、課題の早期発見につながることです。
このフレームワークでは、まず業務やプロジェクトをKeep(良かったこと)とProblem(悪かったこと)に振り分けるため、現状の課題を発見するのに非常に有効です。
また、現状の課題だけでなく継続すべき良い部分も洗い出すKPTを実践すれば、多角的な視点から業務やプロジェクトを捉えることができるため、業務やプロジェクトを客観的に整理することができます。
加えて、KPTでは今後の具体的なアクションが参加者全員で共有されます。スムーズに改善に取り掛かることができるため、KPTは定期的に開催するのがおすすめです。
2.継続的な改善のループの構築
継続的な改善ループが構築できるのもKPTのメリットです。
このフレームワークでは、今後の具体的なアクションを検討・実践し、その結果を振り返ることまでがセットとなっているため、定期的に実践することで組織やプロセスは確実に洗練されていきます。
課題の発見と改善を繰り返していくことでポジティブなスパイラルを構築することが可能ですが、少しずつでも改善しているという実感が得られれば、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
さらに、一般的に振り返りを行うと悪いことばかりに目が向きがちですが、KPTでは最初にKeep(良かったこと)を洗い出すため、ネガティブにならずに振り返りができるというメリットもあります。
3.ナレッジの共有などチーム力の向上
KPTを集団で行う場合、参加者全員で意見を出し合うことになります。否が応でもコミュニケーションを取ることになるので、新たな気づきが得られたり、ナレッジの共有につながったりする可能性が高いです。
そのため、KPTを定期的に実践すればチーム力は徐々に向上していくでしょう。
なお、KPTでは付箋などに書いて意見を出せるという特徴もあるため、自ら意見を打ち出すのが苦手という人でも自分の考えを伝えやすいというメリットもあります。
口頭でのコミュニケーションでは発言されにくい意見が得られることがあるのは大きなメリットと言えるでしょう。
KPTの進め方
ここまでKPTの概要やメリットについて解説してきましたが、ここからは具体的な進め方をご紹介していきます。
1.実施のタイミング
KPTを実践するタイミングは、一般的に業務やプロジェクトが一区切りした直後が望ましいとされています。
記憶が新しく、細部まで覚えている段階で取り組めば、情報をスムーズに出し合うことができます。
加えて、一区切りついた直後の落ち着いた状態で取り組むことで、思い込みや勘違いを排除しながら情報が出し合えるので、KPTの精度を高めることが可能です。
2.用意するもの
KPTは、ホワイトボード・ペン・付箋があれば実践可能です。ホワイトボードは参加者全員で見るのに十分な大きさのもの、ペンは最低でも人数分、付箋は可能な限り多めに用意しておきましょう。
また、実践する際はホワイトボードを左右に2分割し、左側の区画をさらに上下に分割します。
そして、左上にKeep、左下にProblem、右側にTryを書き出していくのが一般的ですが、それぞれの要素を区別するためにペンや付箋は異なる色のものを用意するのがおすすめです。
3.Keep
KPTを実践する際は、まずKeepとProblemを書き出していきますが、Keepには良かったことや継続していくべきことを書き出します。
業務やプロジェクトに取り組んでいく上で、工夫したことや得られたこと、改善から成果につながったことなど、どんな些細な内容でも良いので数多く書き出していくのがポイントです。
どうしても数が出ない場合は、顧客や周囲の人に褒められたことを考えたり、自身が業務やプロジェクトを通して経験したことを細かく振り返ってみたりするのがおすすめです。
4.Problem
Problemには、改善すべき課題や問題を書き出していきますが、どの部分に問題があるのか、何故そのような事態につながったのかといった観点で考えていきましょう。
ただし、深く考えすぎると書き出しにくくなっていくので、問題や課題と感じる部分を直感的に書き出していくのがポイントです。
また、自身が我慢している部分がないか、無駄だと感じている部分はないかといった観点で考えていくと、スムーズにアイデアを書き出すことができるでしょう。
5.Try
Tryには、今後のアクションを書き込んでいきますが、この項目は実践することが前提となるため、抽象的な表現ではなく具体的な行動を書き出しましょう。
Keepからは、良かった部分をよりよくするためには何が必要なのか、Problemからは、その課題や問題をどのようにしたら改善できるのかといった観点で考えていくのがポイントです。
また、書き出した施策がなぜ有効と言えるのかという部分まで深掘りしておくと、スムーズに行動に移すことができるでしょう。
6.再び振り返る
KPTで導き出したアクションを実践した後は、再び振り返りを行いましょう。
前回のKPTで作成した表をベースに、前回のTryの中で良かったものはKeepに移したり、不要だったと感じたものは削除したりしながら、作成した表をブラッシュアップしていきます。
KPTは、繰り返し行うほど精度が高まっていきます。繰り返し何度も行うことでProblemは徐々に解消されていき、Tryの効果も高まっていくため、このフレームワークは業務やプロジェクトが一区切りついたタイミングで欠かさずに実践していくことが大切です。
KPTを行う上でのポイント
KPTは単に実践するだけでは、思ったような効果が得られない可能性があります。
ここからはKPTを実践する上で押さえておきたい4つのポイントを解説していきます。
1.時間
KPTは、1時間程度を目安に実施するのがおすすめです。長時間取り組んでも集中力は低下していきますし、重要度が低い項目ばかりが増えてしまって整理に手間がかかるという問題が生じます。
本質的な問題解決につながらなくなる恐れがあるとともに、本来の業務に支障が及ぶ可能性もあるので、KPTにかける時間は長くても90分程度に留めるようにしましょう。
2.人数
KPTは、個人でも活用できますが、集団で行う際は基本的に5~6人程度の小規模グループで実施するのが一般的です。
参加人数が多すぎると意見を整理するのが難しくなるので、最大でも10人程度を目安にすると良いでしょう。
3.意見を出しやすい場にする
KPTの効果を高めるためには、参加者全員が自身の意見を出すことが重要となりますが、参加人数が多いと周囲に遠慮して意見が出にくくなってしまうケースが少なくありません。
このような状況が予測される場合は、参加者を複数のグループに分けて実施することを検討しましょう。
加えて、ファシリテーター(進行役)を設置するのも効果的です。
特に、実践し始めたころは中々発言できない人も多いため、ファシリテーターから質問を投げかけることで発言を促すといった工夫が必要です。
また、ファシリテーターを設置しておけば、参加人数が多い場合でも議論が発散するのを防ぐことができるでしょう。
4.継続的に行う形に習慣化させる
KPTは、単発で実施しても十分な効果は得られません。
定期的に何度も繰り返し行うことで初めて正しく機能すると言っても過言ではないので、継続的に実施することを習慣化させることが非常に重要です。
KPTで次に取るべきアクションを導き出すということは、業務やプロジェクトが継続していくことを意味しています。
継続していく業務やプロジェクトの節目で実践することで、徐々に課題や問題は改善されていくので、KPTは継続的に実施することを前提に計画しましょう。
KPTで活用できるツール
KPTはホワイトボードなどを使ったアナログな方法でも実践できますが、継続的に実践していくためにはITツールを活用した方が便利です。
ここからはKPTで活用できるおすすめツールを3種類ご紹介していきます。
1.Trello
Trelloは、カンバン方式のタスク管理ツールです。タスクをカードに登録し、ボードと呼ばれる場所に付箋のようにカードを貼っていくことでタスクを管理します。
ボードは無制限に作成することが可能で、チームでの共有にも対応しているため、KPTで活用することもできます。
シンプルで直感的な操作が可能なのもTrelloの魅力で、ITツールに不慣れな方でも簡単に扱うことができるでしょう。
なお、Trelloは無料で利用できますが、無料版はチームボードが10件までしか作成できないので注意が必要です。
2.KPTon
KPTonは、オンライン上でKPTを実践できる無料のWEBツールです。
アナログな方法でのKPTが抱える問題を解決するために開発されたツールで、オンライン上のホワイトボードに付箋感覚で自身の考えを書き出すことができます。
ホワイトボードは、他人に見られる心配がない個人用と、チーム全員が閲覧できる会議用の2種類が提供されています。
また、会議を始めると前回のKPTで設定したTryの内容を確認できるので、効率的にKPTを実践していくことが可能です。
3.miro
miroは、3,000万以上のユーザーが活用しているオンラインホワイトボードツールです。
メモを付箋に登録してボード画面に貼り付けることで、タスク管理やプロジェクト管理などを行うことができますが、複数のユーザーがリアルタイムでボードを編集することも可能なので、KPTを実践する際に活用することもできます。
手書きのメモをスキャンしてデジタル付箋として使用することもできるため、アナログな方法で実践したKPTの内容を保存しておくために使うことも可能です。
KPTまとめ
KPTは、現在進行中の業務やプロジェクトの中で、継続すべき点と改善すべき点が明確になるとともに、今後の具体的なアクションを導き出すことができるフレームワークです。
非常にシンプルなフレームワークなので手軽に実践できますが、KPTは繰り返し行うことで精度が高まっていくため、継続的に実践していくことが重要です。
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