離職率が高い!退職の原因を知り平均離職率を下げろ!

最終更新日 : 2016-05-09 Box

「また、退職者か。今月で何人目だ」

このセリフを聞いて、なんとなく絵が浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
採用担当からすれば「頑張って入社までこぎつけた優秀な人材を簡単に辞めさせるな」とですし、現場からすれば「なんであんなやつを採用したんだ」となります。まさに負のスパイラルを生む「離職」。

しかし、お互いの言い分も確かに納得できるところはあります。
例えば中途採用の場合、1名の採用に平均40万円の費用が掛かることがわかっています。年間で数人を採用するとなれば、合計で100万円以上の予算が投じられていることになります。
一方、現場からしても、入ってきた人材が簡単に辞めてしまえば、研修の工数も無駄になり、マネジメント職の方は会社から課せられている目標も達成できなくなってしまいます。

辞める側は簡単でも、残る側にとっては非常に大きなインパクトを残すのが、「離職」なのです。

関連:苦手な部下をマネージメントする為の8つの心構え

1.離職率とはどのようなものなのか?

1-1. 離職率はどのように算出されるのか?

「離職率」は法律などで定義が決まっているわけではありませんが、一般的に言われているのは、

(ある一定期間の離職人数)/在籍の従業員数

で計算されたものが離職率です。
ちなみに「離職」には「退職」と「失業」が含まれます。

例えば、2015年度(2015年4月~2016年3月)の離職率を算出する場合は、

(2015年4月1日~2016年3月31日の離職人数)/2015年4月1日在籍の従業員数

となるわけです。

1-2.業界・職種別の離職率平均データ

厚生労働省が行った『平成26年雇用動向調査』によると、平成26年の離職率は15.5%となっています。前年比0.1%の低下となっていますが、平成22~24年は14%台でした。

産業別に見ていくと、例年と変わらず、サービス業の離職率が高いことがわかります。
「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」など複数に分かれていますが、どれも平均を大きく超え、特に「宿泊業・飲食サービス業」の離職率は31.4%となっています。
入力率も高いので人の出入りが激しいということなのかもしれませんが、それでも他産業に比べ突出した数字です。
サービス業にかぎらず、人と関わることの多い産業の離職率が高くなっている印象を受けます。

一方で離職率が低いものは、金融業や建設、製造業があります。
ただし製造業に関しては、離職率は10.6%と平均より低い値ですが、入職率が9.6%と離職率を下回っています。

参考:平成26年雇用動向調査結果の概況(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/15-2/

2.そもそも何故人は辞めるのか

人と関わる仕事は離職率が高いことがわかりましたが、本当にそれだけがやめてしまう理由なのでしょうか。出産や介護など、やむを得ず退職する人もいますよね。
そこで、退職の理由として多いものをピックアップしてみました。

2-1.求人情報とのミスマッチ

よくこんな言葉を耳にしませんか?
275-2
「思っていたのと違った」

ここは採用する側が非常に葛藤する部分でもあります。なぜなら、よく魅せなければそもそも応募が来ないから。しかし、よく魅せすぎると、今度は「思っていたのと違う」と退職が増えてしまいます。

紹介会社においてもこういったことはよく起こります。紹介会社からすれば、結局は求職者に入社してもらえなければ売上にならないので、とりあえず入社させるために悪い部分を伝えない、ということが少なからずあるようです。

2-2.休日、休暇、勤務時間

残業時間の多さが理由で辞める人も多いイメージがあります。しかし、本当の原因は、時間の多さではありません。
例えば、新入社員。最初は、「頑張ります!」と休日出勤も残業も厭わず、むしろ「残業させてください!」くらいの勢いで頑張っていた新入社員が、入社2年、3年もすると、残業をしなくなっていく。
関連記事:新入社員がすぐ辞める…上司や先輩は注意したい新人教育の心構え

これは、働くことへのモチベーションが下がっているサインではないでしょうか。勤務時間を短くする工夫も大切ですが、それ以上に働くモチベーションを高める工夫が大切ですね。

2-3.人間関係

退職するとき、退職者は様々な理由を言います。家族やプライベート、条件など様々です。しかし、いざ本音ベースで聞けば大半の理由が「社内の人間関係」のようです。

リクナビNEXTが2007年に行った退職理由の「ホンネとタテマエ」についての調査では、退職理由の本音として、「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(23%)、「同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」(13%)、「社長がワンマンだった」(7%)などが挙げられています。
つまり、本音ベースでは、43%(人間関係で決まる「社風」も含めれば、なんと49%!!)が「人間関係」を理由に退職しているのです。
(ちなみに、建前としての退職理由のトップは「キャリアアップ」で38%でした。)

参考:退職理由のホンネランキングベスト10 (リクナビNEXT)http://next.rikunabi.com/01/honne2007/honne2007_01.html

2-4.ノルマや責任

他にもある退職理由では、ノルマや責任の重さに耐えられない、という方も多いですが、これもノルマや責任の重さだけが問題ではありません。それに対する見返りがない、という方が原因としては多いのではないかと思います。

3.一人採用のコストと採用動向

257-3
これだけある退職理由ですが、そもそも採用にはどれだけのコストが掛かっているのでしょうか。

3-1.採用にはこれだけのコストが掛かる

新卒採用の場合、年間の採用費の総額は約692万円、一人当たりの採用コストは約55万円という調査結果が出ています。
また、中途採用の場合は、「求人広告」に掛かる年間費用が約227万円、「人材紹介」に掛かる年間費用が約561万円、一人当たりの求人広告費用は約40万円という結果が出ています。

参考:【新卒採用費総額:平均は692.6万円】”採用コスト×求人媒体の選定”、調査レポートから、求人戦略を検証しました。(Office Heart Rock

こちらの記事は2014年のものですが、現在は採用市場がより過熱しており、コストはさらに掛かる可能性も大いにあるのです。ちなみに、今年の採用市場の過熱ぶりを物語る数値が、新卒求人媒体であるリクナビ・マイナビの掲載企業数を見るとわかります。

・リクナビ2017:22640社 ← リクナビ2016:11870社(昨年比190%増加)
・マイナビ2017:17148社 ← マイナビ2016:14450社(昨年比119%増加)
 ※各年度グランドオープン時(2015年、2016年の3月1日)の掲載企業数

3-2.離職率低下の為の効果的な施策

採用にこれだけのコストが掛かり、さらにもっと増えるかもしれない中で、「どう採用するか」以上に、「どう離職率を減らすか」が非常に大きな課題と言えます。

離職率を減らすためには、2つの視点で考える事が大切です。その視点とは、「インプット」と「スループット」です。

3-2-1.離職率を防ぐインプットの施策

「インプット」とは、採用のタイミングでミスマッチをなくす工夫が大切ということです。
欧米では、「RJP(Realistic Job Preview)」という考え方が浸透しています。採用活動のタイミングで、良い面だけでなく、悪い面も含めたよりリアルな情報を伝える工夫をするというものです。

RJPには4つの効果があり、その結果が仕事への定着を促すのです。その効果とは、下記です。

1)セルフスクリーニング効果
企業のことを正確に理解することで、自分自身で会社に会うか否かを判断できるようにする効果
2)ワクチン効果
就職活動を通して、生まれた過剰な期待を低減させ、入社後の失望を軽減させる効果
3)コミットメント効果
良い面・悪い面を含めた上で求職者自身が会社を選ぶことで、組織への愛着が高まり、定着を促す効果
4)役割明確化効果
事前に採用する人材の役割を伝えることで、企業に求められている業務を行っているという実感が高まり、仕事への満足度や意欲を高める効

採用段階で、夢ばかりを持たせるのではなく、しっかりと現実を理解させたうえでの採用がお互いの幸せを生むのです。

3-2-2.退職を防ぐスループットの施策

「スループット」とは、採用した後の人材を辞めないようにする施策です。

多くの企業が人材を辞めないようにする工夫として行うのは、条件面や働き方の改善です。
給与水準を上げる、残業を減らす、休日出勤を禁止する、個々人の負担を減らす、などは多く行われています。

しかし、人間は条件が改善しても、慣れてくればさらに上を求めたり、他と比較してみたりしてしまうもの。つまり、単に条件を改善しても、それは一過性のもので終わってしまうのです。
そこで大切になってくることは、メンバーが抱えている仕事に対して、しっかりと意味を持たせてあげることです。

「なんでこんな仕事をしているんだ」「この仕事をやっている意味がわからない」ということから、悩みが次第に変化し、やがて条件面の不満という退職理由につながるのです。だからこそ、今メンバーがやっている仕事の意味や期待をしっかりと伝えてあげることが、実は最も効果的な退職を防ぐ施策なのではないでしょうか。

もちろん、改善できる条件面の改善はしてあげてください。

この記事を書いた人 笹田裕嗣

sasada社員数1,000名超の会社で新卒で入社し、1年目からトップの成績を残し、現在は営業代行、営業研修、さらには営業マンの育成を行っている。担当したクライアントは3ヶ月で売上200%増、初の受注獲得の実現等の実績を持つ。また、営業マンの個別コンサルティングでは、全てのメンバーがコンサルティング開始後、1ヶ月以内に受注をあげている。
       「営業で苦しむ人をなくし、営業を楽しめる世界を作る」ことを目指している。

http://hiroshi-sasada.com/hiroshi-sasada/

Twitter Facebook Bing