採用面接を実施する際に気をつけるべきポイント5つ
日本の採用活動は一般的に、面接に頼った採用をしていると言われています。
現に、ほとんどの企業が、内定を出す前に面接を設けています。
会って話をしないと評価ができないのが、今の日本の採用の仕組みになっているのです。
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例えば、採用人数100人のとある企業。
100人入社してもらうために、500人の学生と面接をしています。
1人の面接が約1時間とすると、確実に面接に500時間使っているということがわかります。
さらにこの会社では、内定をもらうまでに最低4回面接があるので、面接に掛かっている時間は想像を絶するレベルとなります。
ところが、採用に関する調査の結果を見ていくと、面接の結果と入社後のパフォーマンスには相関が出ていない、ということがわかっています。
つまり、面接で優秀と評価を受けた学生や求職者が、入社後良い結果を残していないのです。
早期で辞めてしまったり、仕事で成果が中々出ていなかったりしているのです。
多くのの時間とコストを掛けて行った面接が業績に繋がっていない、というのは非常にもったいないことです。
そこで、今回は面接を実施する上でのポイントをまとめました。
そもそも面接の目的とは何か?
まず、面接を何故行っているのか、をしっかりと考えましょう。
面接の目的は、「見極めること」と「惹きつけること」の2つです。
「見極める」とは、その言葉通り、自社で活躍してくれる人材なのかを判断する、ということです。
活躍するためには、2つの条件があります。
1つは、活躍するための能力やスキルを持っているか否か。
そしてもう1つは、ちゃんと入社をして、定着してくれるのか、という点です。
組織の風土や雰囲気、社員と合うか否か、という点や、そもそもモチベーションがあるかどうかが焦点です。
「惹きつける」とは、面接を受けに来た本人の入社意欲を高めることです。
どんなに優秀な人材でも、「入社したい!」と思ってもらえなければ意味がありません。
だからこそ、面接の場で、志望度を高めていくことが大切なのです。
なぜ、面接で人を見抜くことができないのか?
これだけ多くの会社が面接を行っているにも関わらず、面接で人を見抜くことができないのは何故でしょうか。
それには、2つ理由があります。
1.見るべきポイントがズレている
これは、面接の前段階の問題です。
面接における評価基準がそもそも間違っているケースです。
入社後、会社に定着して、活躍している人材をちゃんと分析していない企業ではこういった問題が発生します。
また、そもそもこういった視点がなく、とりあえず面接を行ってしまっている、という企業も少なくありません。
実際、日本経済団体連合会(経団連)が行っている新卒採用に関するアンケート調査結果では、選考時に重視している要素のトップが10年以上にわたり「コミュニケーション能力」という結果になっています。
これは主観ですが、コミュニケーション能力ほど、曖昧な基準はありません。
人の表情や話し方、身だしなみ、振る舞いなど、雰囲気で「コミュニケーション能力のある人/ない人」と評価してしまうのですが、そうした雰囲気と能力は、実はなかなかマッチしないものです。
極端に言えば、今の日本の採用方式は、「100メートルを速く走れる人」を面接で採用しているイメージです。
「何を意識して走っていますか?」「トレーニングの方法は?」「これからの目標は?」などを質問して、その回答で、足が”速そう”な人を採用しているのです。
いろいろ聞いて“速そう”な人を探るより、実際に一度走らせたほうがよくわかるだろうということは、すぐにわかるはずです。
2.見る方法が間違っている
人は得てして、自分の興味のあることや得意なことに目がいってしまいがちです。
これは心理学でも証明されていることです。
また、現場社員が面接官を行う際には、どうしても「自分の部下だったら」という視点で評価をしてしまいがちです。
しかし、こういった視点は、組織として“ちゃんと見なければいけない項目”を見落とす、1番の要因です。
例えば、採用基準に「ロジカルシンキング」があったとしましょう。
しかし、現場では、とにかく明るい子が欲しい、と思っていると、ロジカルシンキングのできる冷静沈着な求職者は、不採用になってしまうことがあるのです。
面接では面接官の興味ある範囲の話をし、盛り上がって終わり、ということが多々起こっているのです。
例えば、こんな面接です。
面接官:「君、野球部出身らしいね」
学生:「はい、ずっとショートを守っていました」
面接官:「そうなのか。実は私も若いころ、ショートを守っていてね。好きなチームはどこだい?」
学生;「私は地元のロッテです!」
面接官:「奇遇だな。私もだよ。君とは気が合うな」
→面接1時間経過・終了
これは、学生時代に私が実際に経験した面接です。結果は、見事内定でした。
何故内定だったのか。
野球が好きだった、ということから、コミュニケーションが盛り上がり、なんとなく良かったので、その結果面接の評価も良くなってしまった、というよくあるパターンです。
本当に面接で、貴社が採用したい人材を見極められるのか、ちゃんと考える必要があるのです。
面接で良い人材を適切に見極めるポイント
面接は、そもそも非常に忙しい作業です。
初対面の相手といきなりコミュニケーションを円滑に取りながら、その場を盛り上げ、質問をし、相手の良いところや懸念点を深掘りし、かつ自社・自分をよく魅せて入社意欲を高める。
その上で目の前の学生・求職者を評価する。
そもそも、面接で人を評価することは、人間のキャパシティを大きく超えていると言っても過言ではないのです。
では、その前提に立った上で、面接にどう取り組めば、しっかりと見極めができるのでしょうか。
1.見るべき項目・定義を決める
面接の評価は、同じ面接に一緒に参加していても、人によって異なります。
それは人によって、感じ方・捉え方が異なるからです。
しかし、能力を見極めるという観点では、このように人によって”違う”という結果は好ましくありません。
そうならないためには、まず評価項目の定義を明確にする必要があります。
例えば、前述の”コミュニケーション能力”。
これは、人によって、定義がばらつく典型的なものです。
一言で「コミュニケーション能力」といっても、「聞く力」「話す力」「プレゼン力」「雰囲気」など、人によって大切にするものが違います。
だからこそ、項目の定義をしっかりと定めることが大切なのです。
2.項目の評価の仕方を統一する
今の面接評価は、5点評価や3段階評価が多いです。
面接終了後に「採用・検討・不採用」や1~5点の点数をつけるといった方法です。
しかし、何をもって「1点」なのか、何をしたら「採用」なのか、その根拠が曖昧では、正しい評価にはつながりません。
こうした評価を行った場合、人は元々、答えが真ん中に寄りがちになる傾向があるのです。
よくわからないという時も真ん中に寄せます。
あまりよくわからないアンケートに回答する時、「どちらでもない」を多く選択しがちになることがあるかと思います。
そういった曖昧さの残った評価では、正しい評価とは言えません。
3.全体評価にしない
とある会社での1時間の面接で、開始から50分までは「採用」と思われていた学生が、最後に1つ「他社について」質問をした瞬間、「不採用」になったことがありました。
これは、面接において見るべき項目が決まっておらず、面接時間全体の印象で、良いか悪いかを総合的に評価をしてしまっているがために起こったのです。
1と2でもお伝えしましたが、評価項目を定め、基準を作り、全ての項目を見た上で、採用可否を決めなければ、全体評価という名の「雰囲気採用」は、いつまで経っても変わりません。
4.志望動機・エピソードに偏重にならない
人はどうしても、志望動機やエピソードに惹きこまれがちです。
しかし、こういったエピソードや志望動機は、その人の能力を測る上では、一切機能しません。
本当に採用する上で、必要な能力は何かを具体的に考え、そこから質問をすることが大切なのです。
5.自分の仮説に引っ張られ過ぎない
「たぶん、この人はこういう人だろう」
人間はそういった”仮説”を持つと、その答えが正しいのかを確認しようとする習性があります。
面接では、仮説を持つと、それを確認するための質問を集中してしまうのです。
その結果、ポジティブな仮説を持った相手は、ポジティブな質問がいきがちで、結果も「採用」になりやすくなり、逆の仮説を持たれた場合は、逆の結果をもたらすのです。
そのため、仮説を持つことは大切ですが、自分の仮説を疑う姿勢は常に保つ必要があるのです。
まとめ
面接は元々、人を雰囲気で評価しがちな採用手法です。
しかし、見るべきポイントを定め、その基準にそって、主観に頼りすぎずに面接をすることができれば、効果を見込むことが出来ます。
まず行うべきは、どんな能力を持っている人を採用すれば、自社で活躍してくれるのか、その項目や基準を固めることが大切になってくるのです。
「感覚的な面接」から「計画的な面接」への変化に、是非取り組んでみてください。
この記事を書いた人 笹田裕嗣
社員数1,000名超の会社で新卒で入社し、1年目からトップの成績を残し、現在は営業代行、営業研修、さらには営業マンの育成を行っている。担当したクライアントは3ヶ月で売上200%増、初の受注獲得の実現等の実績を持つ。また、営業マンの個別コンサルティングでは、全てのメンバーがコンサルティング開始後、1ヶ月以内に受注をあげている。
「営業で苦しむ人をなくし、営業を楽しめる世界を作る」ことを目指している。