動画などデジタルコンテンツの著作権を守るためのDRMとは

最終更新日 : 2021-01-29 Box

インターネットの普及とアクセスするためのデバイスのが身近になることで、オリジナル作品のコピーを入手することが容易になりました。

インターネット空間上でデジタルデータをDLするだけで、オリジナルと変わらないコンテンツを入手することが可能です。

無制限にコピーを許容していては、著作者が逸失する利益は膨大な金額になります。

現にコミックを無料提供して広告収入を稼ぐ事例は刑事事件として立件されているほどです。データ化されてコンテンツの複製を制御し、著作物の適正な利用を実現するのが、DRMになります。

DRMとは

DRMとは、DigitaRightsManagementの略称のことで、デジタル著作管理のことを意味している言葉です。

製作者以外の第三者によるデジタルコンテンツの無制限な複製・再生・閲覧・視聴・印刷などを制限・防止する著作権の管理技術を意味します。

ここにデジタルコンテンツの意義を確認しておくと、映像や音楽・書籍・ゲームなどの電子機器を駆使して製作されたコンテンツのことです。

もちろんデジタルコンテンツも著作権法による保護が適用されることになりますが、「私的利用での複製」は許容されています。

私的利用を超えるファイル共有ソフトや記録メディアに記録して頒布すると違法になります。

デジタルコンテンツは複製を繰り返しても、品質が劣化しないためオリジナルと同等のクオリティのの複製品を無数に生産できる特性を持ちます。

そのためインターネットが普及した今日ではとりわけ複製を規制する対策の必要性が高くDRMが注目を集めています。

DRMフリーとは

DRMフリーとは、暗号化や複製防止のための保護が実装されていない、ソフトウエアやコンテンツのことです。

商品として流通している音楽や映像・ソフトウエアなどのうち、不正・違法な複製や利用を防止・制限する技術的措置が実装されていないのが特徴です。

利用者の意思次第では無制限に、再生や送受信を無制限に行われるリスクを内包しています。

あくまで技術上の対策が採用されていないだけで、DRMがある場合と同様の著作物としての保護は受けます。

違法利用したユーザーは法的制裁を受けることに変わりはありません。消費者サイドにとっては、DRMが実装されていると適法な利用であっても使い勝手の悪さを感じることがあります。

DRMフリーをあえて提供することで、競合他社のシェアに切り込むなどの経営戦略で採用されることがあります。

DRMの必要性

デジタルコンテンツは対策をとらないと、無断に複製しても品質は劣化しないため、オリジナルファイルから無限にコピーを作ることができます。

オリジナルよりも安い値段を価格設定することで、開発費用を負担することなくフリーライドして多くの収益を簡単に手にできます。

このような事態を防止するべく、DRM(デジタル複製管理技術)では、コンテンツ本体とは別に、再生に不可欠な鍵となるメタデータを提供し、特定のユーザーに対してのみメタデータを交付します。

コンテンツ本体を入手できても、メタデータを持っていない限りユーザーはコンテンツを保有していても再生することができません。

またメタデータは再製するコンピューターやユーザーにのみ公開されるため、結果として無制限な複製を制御することを可能にしています。

そしてDRM技術を実装しても、リバースエンジニアリング(ソフトを解析しソースコードを不正入手する)により骨抜きにされるため、リバースエンジニアリング自体も不正競争防止法で規制対象となっています。

①市販のブルーレイやDVD

映画やアニメ・音楽映像などのコンテンツが収録されているブルーレイやDVDなどの商業用メディアのなかには、CSSと呼ばれるDRMが実装されています。

CSSとは、DVDの映像信号を暗号化する技術のことです。CSSでは再生ソフトウエアに埋め込んだ単純な暗号化を行いますが、リバースエンジニアリングにより鍵のソースコードは事実上公開されてしまっており制御技術としては有名無実化しています。

商業用ブルーレイでは、このCSSを教訓により強固なAACSというDRM技術を実装しました。

しかしやはりAACSも暗号化キーがインターネット上に流出してしまい、目下その効力は喪失しつつあります。そこで最近ではさらに強固なAACS2.0が開発実装されるに至っています。

②音楽CD

現在では音楽CDそのものを保管管理するよりも、コンピューター上のデータとして管理するのが主流になっています。

CDそのものを保管すると物理的に管理するのが負担で、デジタルデータで管理するほうがはるかに膨大な数のCD内容を管理することを可能にしているからです。

しかしかつてはコピー防止技術(SCMS)によりCDの音源コピーが規制されていたこともありました。

民生用オーディオを使用して録音するさい、他のデジタルメディアにコピーするときバックアップ使用に限り1回だけ録音できる仕様が採用されていました。

しかしSCMSはあくまで民生用オーディオに適用しているもので、現在主流のPCを使ったクリッピングには対応していません。

PCにCD音源を取り込むことは違法ではなく、利用者の裁量に委ねられるところとなっています。Ipadに代表されるデータ形式の音源管理の普及に伴い、コンテンツ制作者のCDのDRMへの関心はかなり低下したと見られています。

③音楽配信

店頭でCDを大量販売するスタイルは過去のものとなり、現在では音楽コンテンツは配信サービスを経由して入手するのが主流になっています。

ダウンロード型音楽配信がスタートしたのは1999年でした。当時はソニーが開発したDRM技術のMagicGateなどが注目を集めました。しかし全米レコード協会など著作権者の希望するルールは複雑でユーザーにとっては使い勝手が悪いのが現実でした。

その後はDRMフリーのITunesなど制限を緩和したサービスの登場で音楽配信におけるDRMフリーの流れは定着します。

現在では音楽配信ソフトのほとんどは、DRMフリーの仕様となっています。もちろん私的利用が無方図に解禁されたわけではなく、私的利用に制限されます。

④テレビのデジタル放送

普段のテレビ視聴しているデジタル放送には、CASと呼ばれるDRM技術が採用されています。

CASとは、限定受信システムのことで契約をしたテレビのみが視聴できる放送管理システムのことです。テレビやブルーレイレコーダーに内臓されているCASカードに暗号キーが収納されており、視聴するにはコンテンツの暗号を解除する必要があります。

またブルーエイディスクなどに録画したコンテンツをダビングする際には、ダビング10などのコピー回数に上限を定めたルールの適用を受けます。BSデジタルの有料放送などでは、一層厳格なコピーワンスが適用。コピーワンスではDNDなどにコンテンツをコピーすると、元のハードディスクからデータが消去する仕組みになっています。

2008年以降の地上デジタル放送では、コピーワンスより緩和されたダビング10が基本です。

⑤HDMIによる伝送

HDMIを用いたコンテンツ配信では、コンテンツのソースに使用される暗号や映像圧縮信号を解除したデジタルデータを取りだすためより高いセキュリティ技術が必要です。

HDMI技術の登場当初から、DRM技術としてHDCP技術が採用されてきました。送信側(プレーヤー)と受信機(テレビなどの映像装置)との間で相互認証を行い、確認できた場合にのみコンテンツの転送と暗号の解除が可能になります。

4K時代の今日では、超高画質な映像データを保護するべく、より強固なHDCP2.2が採用されているそう。

近年販売されているテレビなどの映像装置は、このHDCP2.2に対応しているものの、複数の端子の内ひとつだけが対応している場合もあり注意が必要です。

⑥ホームネットワーク

近年のAV機器ではホームネットワークでの使用を前提にしています。

具体的にはリビングのBDレコーダーで録画したコンテンツをWiFiネットワークを経由してベッドルームの携帯端末で再生すると言うような家庭内配信が典型的です。

このようなネットワーク放送には、DTCP-IPというDRM技術が実装されており、同一家庭内の同一LAN内でのみ配信されます。

さらにDTCP-IP1.4では、DTCP+という機能が追加されました。DTCP+を備えたBDレコーダーなどを使用していれば、リモート視聴が可能です。出先でスマートフォンなどの端末で自宅BD内のコンテンツを再生できます。

⑦動画・音楽ストリーミング配信

動画配信サービスは視聴者にとっては、手軽にデジタルコンテンツを楽しむことを可能にした点で画期的でした。

しかしコンテンツ作成者や配信者にとっては、承認していない違法コピーがインターネット上に拡散してしまうリスクを抱えています。

その対応策として適切なデジタルコンテンツの保護が必要です。動画配信サービスでは、動画そのものを暗号化し再生時に解除しなければ視聴できない仕組みが採用されています。

仮に動画データをコピーで入手しても、複合キーがない限りコンテンツを視聴することはできません。例えばiOsやAndroid4以上の端末に動画配信する場合には、HLS方式に対応するAES-128が採用されているのは具体例のひとつです。

動画配信で使用されるDRM

最近の新型感染症の蔓延の影響で、屋外での大型イベントの開催は困難になり、動画配信の形で代替する動向が活発になっています。

動画配信は視聴者にとって便利ですが、配信者側では収益源としての重要性はより大きくなっています。そこでDRM技術の重要性も高くなっているのが原状です。

①PlayReady

PlayReadyはマイクロソフト社が開発したDRM技術です。古いブラウザではSilverlightに対応し、インターネットエクスプローラーでは最新バージョン、新たなブラウザのMicrosoftEdgeではHTML5動作します。

WindowsMediaAudioやWindowsMediaVideoなど数多くの形式のコンテンツファイルに対応しているのが特徴で汎用性が高いと評価されています。家庭用ゲーム機のXboxや多くのスマートテレビ・OTTデバイスでも採用されています。

②Widevine

WidevineはGoogleと同じ親会社であるAlphabet社をもつWidevineテクノロジー社が提供しているDRM技術です。

マイクロソフト社やアップルなどと並んで主要DRMの一翼を担っています。Widevineはスマートフォンになどのモバイル端末や多くのスマートテレビに対応するModularと、旧来型の端末に対応したClassicの2種類があります。

Widevineを使用することで、Silverlightなどのプラグインが利用できないiOS・Androidアプリ内へのDRM動画配信を実現できます。

ただし注意が必要なのは、WidevineにはL1からL3までのセキュリティレベルが存在し、映像コンテンツの利用が制限される場合があることです。

③FairPlay Streaming

FairPlay-Streamingとは、Appleが開発したDRM技術のひとつで、QuickTimeマルチメディア内部に内臓されたもの。

同社のiPodをはじめiTunesやiTunesStoreなどによって使用されているDRMです。DRMはライセンス費用が発生することが多く、導入にも特殊な技術を必要とすることからコストが嵩みます。

他方でエンターテインメント系コンテンツや機密情報を含むようなコンテンツは一度漏洩するろ回復困難な損害を被るリスクを抱えています。

自社サービス内部で実装と運用を図るのが困難と想定される場合には、動画配信プラットフォームにDRMが実装されている場合があるので、利用を検討するのはいかがでしょうか。

DRM以外での動画コンテンツ保護方法

一般的に重要性・機密性の高いコンテンツの場合、DRMの実装は必要不可欠です。他方で社内のセミナー動画などではムリにDRMを実装する必要性はありません。

ただ完全に動画の複製を排除することは不可能です。また最近ではDRMを回避する傾向もあります。

時間や場所の縛りを受けることなく自由にコンテンツを視聴できるメリットを損なう恐れがあるからです。もちろんDRMを実装しないことによるリスクもありますが、利便性を優先することもあります。

具体的にDRM以外には、IP制限・ドメイン認証・暗号化やワンタイムパスワードの導入などを指摘することができます。数ある選択肢の中からコストに見合ったものを選ぶのが重要です。

DRMの問題・批判

DRMはコンテンツ作成者のデジタル上の著作権保護の課題を解決するために、多くのコンテンツで採用されています。

確かにインターネット上では著作権者の許諾なく違法に複製されたコンテンツが、流通しているのは確かです。しかし最近ではDRMのあり方に対して批判がでているのも抑えておく必要があります。

まずDRM技術のほとんどは、技術的詳細が公開されていないため、メーカーやユーザーが活動を停止した場合に、購入したコンテンツが将来にわたって利用可能なのか、必ずしも担保されていないという主張があります。

また再生機器を買い換えた場合に、データ以降ができずそれまでに購入したコンテンツを利用できなくなる恐れがある点も指摘されています。

そして消費者の権利を侵害しているとの観点からの批判もあります。そもそも一般的な著作物では、私的利用の範囲内では複製が許容されています。

ところがDRMではその技術的特性ゆえに理由の如何をとわず、複製を制限しています。これでは本来許されるべき私的利用という消費者の権利を侵害しているとの主張も見られます。

さらにDRMは、データとそれを再生するプレイヤーソフトが対応して初めて実現する仕組みになっているので特定のソフトウエアに依存したものになりやすいとの批判も展開されているそう。

DRMの導入方法

機密性や重要性の高いコンテンツを配信することで、DRMが必要と判断した場合、導入方法が問題になります。この場合、具体的には二つの選択肢があります。

DRMの専門サービス事業者に問い合わせるか動画配信サービス事業者に問い合わせると言う方法です。

①DRMの専門サービスを利用する

動画コンテンツの内容が特に機密性が高く、漏洩リスクを回避したいときはDRMの専門事業者に問い合わせてください。DRMの導入運用にはあ、専門知識と技術が必須だからです。

ゲームメーカーや出版会社・それらのコンテンツを販売する会社に向いています。高度な保護技術が提供されているのでコンテンツを守れるはずです。

導入に手間やコストはかかりますが、高い安全性を実現できます。コストはサービス内容に左右されますが、数万円ほどの月額料金で利用できます。

②動画配信システム会社に確認する

動画配信ベンダーに問い合わせると言う方法も、DRM導入実現の選択肢のひとつです。その際には現在どのような保護法法を採用しているのか、そもそもDRMに対応しているのかを確認してください。

また一口にDRMといってもいくつもの技術があります。どのDRMを採用しているのかによっても、配信対象になる端末も変わってきます。

他方でMPEG-DASHという方法で配信する場合は、マルチデバイス対応での動画配信が可能になります。もっともこの規格を採用していない動画配信システムベンダーは多いので要確認です。

DRMまとめ

最近ではインターネットを経由して各種の端末で、動画や音楽などのコンテンツを配信することが容易になりました。

著作者の権利を保護しながら、ユーザーも安全に視聴するように考案されたのが、DRMという技術です。DRMはDVDやCDなどのコンテンツだけでなく、動画配信・テレビデジタル放送から家庭内LANネットワークでも実装がすすんでいるほどです。

近時では批判もありますが、今後もニーズが拡大するものと見られます。
 

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