VRIO分析とは?メリットや分析項目について簡単解説!
自社分析の際にVRIO分析という手法を用いる企業は多いです。客観的に慎重に分析するために役立てる方法であり、マーケティング活動を進める上で知っておいて損はありません。
VRIO分析の基本的な情報から実施方法、事例まで解説します。
紹介した内容を参考にして、自社分析を行うことができるようにしておきましょう。
VRIO分析とは?
VRIO分析は自社分析の際に用いることができる便利な手法です。
オハイオ州立大学のジェイ・B・バニー氏によって提唱された理論であり、経営資源に基づいた競合優位性を調べることができます。
マイケル・E・ポーター氏が提唱した5F分析の補完的な存在です。
ポーター氏は環境分析におけるポジショニングを重要視していますが、VRIO分析では企業ごとの経営資源に焦点を当てています。
経営資源は企業ごとに違ったものを有していることを前提としており、分析対象は業界全体ではなく個別企業となっている点が特徴的です。
VRIO分析では4つのフレームワークを用いることによって、企業の特殊性や異質性を発見することができます。
同業他社に存在していない自社特有の経営資源を保有しているかどうかを、VRIO分析で調べられると理解しておきましょう。
VRIO分析のメリット
VRIO分析を活用するのであれば、経営資源に基づく自社の強みを浮き彫りにすることができます。
自社のどういった部分に競争優位性があるのか調査することが可能です。強みが分かるだけでなく、反対に弱みまで知ることができるため、弱みの克服や強化についても考えることができます。
実施することで自社に内在する競争優位性をハッキリさせることができ、優位性の維持や向上に役立てることが可能です。
マーケティング活動の際に使える分析手法は多数ありますが、VRIO分析は一覧表やフローチャートを用意して実施するケースが多いと言えます。
4つの評価項目を順番に評価する仕組みなので、視覚的に現状を把握するできることもメリットだと言えるでしょう。
VRIO分析は中小企業ではより重要
自社は小さな会社だから分析に時間をかけていられないと思う人もいるかもしれませんが、実は中小企業ほどVRIO分析を大切にするべきだと言えます。
中小企業は大企業と比べると資源に限りがあり、物量や価格で勝負することは難しいです。資金が潤沢な企業は広告費に莫大なコストをかけたり、薄利多売という戦略を選んだりすることもできます。
類似する商品やサービスで大企業にこういった売り方をされてしまうと、中小企業は太刀打ちできません。
大企業との差別化を実現するためには、続的な競争優位性を持つ商品やサービスの開発が必要不可欠です。
VRIO分析だけでも重要なことがたくさん分かりますし、中小企業で実施することが多いランチェスター弱者の法則に基づく戦略策定の際にもVRIO分析は役立ちます。
3C分析との関連性
自社分析に欠かすことができないVRIO分析は、3C分析と深く関係していることまで理解しておくべきです。
3C分析では自社(Company)・競合(Competitor)・顧客(Customer)の3つを詳しく調査することになりますが、3C分析における自社の部分でVRIO分析が用いられることが多いと言えます。
分析要因を外部と内部に分けて考えていることが特徴的なフレームワークであり、外部分析にはPEST分析、内部分析にはVRIO分析を用いることが効果的です。
全く別のものだと認識していたい人は多いはずですが、マーケティングに重要な3C分析を実施するときにもVRIO分析は必要不可欠であることを理解しておきましょう。
VRIO分析の分析項目
VRIO分析には4つの分析項目があります。
ここからはその項目について詳しく紹介するので参考にしてください。
1.Value(価値)
VはValue(価値)をあらわしており、VRIO分析では経営資源における経済価値の調査からスタートすることになります。
自社の経営資源が顧客や社会に価値を提供することができているかどうか判断するステップです。
経済価値に関する確認項目に「はい」か「いいえ」で答えることで、客観的な評価を得ることができます。
市場機会に対してどれほどの付加価値を生み出せるか、考えられる外部からの脅威に耐えるための資源があるのかなどを調べることができるでしょう。
Valueの調査は、市場への進出機会を考える際にも役立てられることまで知っておくと良いです。
2.Rarity(希少性)
RはRarity(希少性)を指しており、他社が持っていない経営資源について分析することになります。
希少性が高ければ高いほど他企業の新規参入を防ぎやすくなりますし、参入されたとしても市場での優位性を保てる可能性が高いです。
自社の商品やサービスについて、競合他社がどれほど似たようなものを提供しているか、どのような理由から顧客から選ばれているかなどを調査することになります。
たとえば、他社とは違った生産技術が受注理由となっている場合は、自社は希少性が高いサービスを提供していると判断することができるでしょう。
3.Imitability(模倣可能性)
IはImitability(模倣可能性)を示し、自社のサービスが他社に模倣される恐れがないかどうか調べる項目です。
模倣が困難な資源を有していると、市場で長く競争優位性を保つことができます。
歴史性・因果の曖昧さ・政治や社会による複雑性・特許による制約の4点を調べることで、他社から模倣されにくいかどうか調査することが可能です。
独自の歴史的要因で成り立っている、経営資源調達の仕組みから外部から把握されにくい、社会的な要因の影響を受けている、特許で保護されている場合は模倣が難しいと言えます。
4.Organization(組織)
OはOrganization(組織)のことであり、自社が持っている経営資源を有効に活用できる組織となっているかどうかを判断するための項目です。
経済価値や希少性があり、他社から模倣されにくい状態であったとしても、経営資源を活用できなければ意味がありません。
十分な利益を生み出したり、事業を継続していったりすることが難しくなるため、ここで組織についてもきちんと分析しておくことが大切です。
自社の組織体制の確立度合いや企業文化が醸成されているか、意思決定はスピーディーで柔軟なものであるかなどをチェックすることになります。
VRIO分析のやり方
VRIO分析を取り入れたいのであれば、具体的なやり方を理解しておかなければなりません。
順序や方法を間違ってしまうと、正しくVRIO分析を実施することができないです。
基本的には価値から希少性、模倣可能性から組織といった順番で分析を行っていきます。
チェックに使用する表はインターネット上でテンプレートを見つけることもできますし、自社でオリジナルの表を作成して活用することも可能です。
それぞれの項目に「はい」または「いいえ」で答えていくことになりますが、答えによって自社の状態を次のように判断することができます。
経済価値を有しているかどうかの質問でいいえと答えた場合は、競争劣位と判断することができ、経済価値はイエス、希少価値はノーと答えた場合は競争均衡だと判断することが可能です。
更に、経済価値と希少性はイエスでも模倣可能性がノーであれば一時的な競争優位と判断できます。
最後に、組織の優位性まで全てイエスと答えることができたのであれば、持続的な競争優位性があると判断できるでしょう。
このように、VRIO分析では価値から順番に判断していく必要がありますが、実施することで自社の状態を把握できるようになります。
VRIO分析の注意点
便利なVRIO分析ですが、実施する際には注意点があることを忘れてはいけません。
注意点についても解説するので、これを踏まえた上で実施できるようにしてください。
1.「価値」の評価の判断
VRIO分析では社会的価値も評価する必要がありますが、これの判断は簡単ではないです。
自社の商品やサービスに社会的な価値があるかどうか見極めることになりますが、どの企業も市場価値があることを前提として商品やサービスをつくっているため判断が難しくなりやすいと言えます。
実際に市場に出てみなければ判断しづらい点も注意点であり、まだ市場に出ていない製品では正しく価値を知ることができないことを理解しておきましょう。
2.市場は常に変動する
市場が常に変動していることもVRIO分析における注意点です。
外部環境は日々変化しているため、判断基準を一定のものと考えることができません。
時代の流れに合った判断が必要となるので、VRIO分析を実施するたびに、そのときの外部環境をきちんと把握しておく必要があります。
顧客の価値基準が変化することで市場も変動するので、どのような変化があり、現在はどのような価値基準なのか丁寧に調べることを大切にしてください。
3.比較対象する企業の選び方
比較対象となる企業を選定する必要がありますが、選び方を間違えてしまうと分析の精度が低くなります。
同業他社から選んでいたとしても、ターゲットが異なる場合は比較対象にするべきではありません。ターゲットが同じ企業を選ぶことが大切なので、いい加減に選んでしまうことがないようにしておくべきです。
比較対象を間違っていれば分析結果も間違ったものになり、それを参考に戦略を立てると投資内容や注力する内容を見誤り、取り返しのつかないことになるリスクもあるので要注意だと言えます。
VRIO分析の活用事例
VRIO分析のやり方を知っても、ピンと来ない人もいるかもしれません。
これから有名企業を例として具体的に活用事例を解説するので、自社に取り入れる際の参考にしてみてください。
1.トヨタのVRIO分析事例
トヨタは世界最大級の自動車メーカーであり、特殊な生産方式を採用していること、車のサブスクリプションサービスにいち早く取り組んだことが特徴的な企業だと言えます。
生産に焦点を当ててトヨタのVRIO分析を行う場合、経済的な価値では自社工場があることで生産台数などを素早く細かく設定できるという強みがあり、柔軟な対応が可能なので価値があると判断することが可能です。
希少性について、自動車メーカーの自社工場は珍しくないと思うかもしれませんが、同業他社にはあまり見られないロボット共存型工場なので希少性が高いと判断できます。
トヨタは7つの無駄をなくすことでトヨタ生産方式を確立しており、他社には真似することができないので模倣可能性もクリアしていると言えるでしょう。
長年生産方式を整えてきたトヨタだからこそ、現在は十分な組織体制も整っています。実際に市場で長く優位性を維持していますし、海外でも組織づくりに成功しているので、組織に関してもクリアしていると判断することが可能です。
VRIO分析によって価値から順番に評価していくと、トヨタは全ての項目をクリアしているため、持続的な競争優位性があると判断することができます。
2.セブンイレブンの分析事例
セブンイレブンは全国的に広く展開されており、知名度が高いコンビニの1つだと言えるでしょう。
最大手のコンビニで店舗数が最大であることからも、セブンイレブンの経済的な価値は高いと判断できるはずです。
国内最大の流通業者による自社独自の配送システムを持っているため、希少性も高いと言えます。
コンビニだけの経営ではなくスーパー業態でもサービスを展開していることが特徴的であり、分散的な経営を実現しているので他社から模倣されづらく、模倣可能性についても問題ないです。
セブンプレミアムのようなプライベートブランドを展開するだけの開発力や販売力がある人材が揃っており、組織がきちんと構築されていることが分かります。
VRIO分析を行ってみると、セブンイレブンも継続的な市場での競争優位性があることが理解できるはずです。
3.マクドナルドの分析事例
マクドナルドでVRIO分析を実施する場合は商品の質や価格から価値を考えることができ、同社は安価な肉に美味しいとされている脂身を混ぜることで、安くても味が良い製品を生み出しています。
違った挽き肉を混ぜることで顧客が満足できる価格と味の商品を提供しており、価値はあると考えることが可能です。
マクドナルドは世界的に展開されており、イメージブランドが確立しています。ブランドがここまで確立されているバーガーショップは珍しいので、希少性が高いと判断することが可能です。
現在の状態に至るまでにはかなり長い年月がかけられており歴史があるので、模倣される可能性も低いと言えます。
そして、世界中で店舗を経営していても社員や流通が問題なく機能しているため、組織力もあることが分かるはずです。
VRIO分析を実施してみると、マクドナルドも類似するサービスとは違った特徴がある競争優位性の高い企業であると判断することができます。
4.スターバックスの分析事例
日本で店舗を展開しているスターバックスコーヒージャパン株式会社でVRIO分析を実施する場合、価値としては高級感があるオシャレな店内で味の独自性が高いコーヒーが楽しめることがあげられるでしょう。
他のコーヒーショップと比較したときに独特の世界観があるため、希少性が高いと判断できます。
スターバックスはスタッフの対応が素晴らしいことで人気が高いですが、従業員マニュアルが存在しないため、同業他社が接客を真似することは難しいです。
スタッフは自分の判断で動いていますが、全ての店舗で高品質なサービスを提供することができています。
企業理念に基づいて社員1人1人が適切な判断ができる企業なので、組織力も高いことが分かるはずです。スターバックスも全ての項目をクリアしており、競争優位性が高いと言えます。
VRIO分析まとめ
マーケティング戦略を考える上では様々な調査が必要ですが、VRIO分析も重要度が高いです。
VRIO分析を実施することによって自社についてより詳しく分析できるようになるので、紹介した基本的な知識や実施方法をしっかりと覚えておきましょう。
優れた分析手法の1つですが、間違ったやり方では逆効果になる恐れがあるので正しい知識を持っておくことが重要です。
やり方や活用事例も解説したので、それらを参考にしながら自社でもVRIO分析を行ってみてください。
その他のビジネスで活用できる便利なフレームワークはこちらで解説しています。