論理的思考法の基本 MECE(ミーシー)とは?活用できるフレームワークを徹底解説
MECEは論理的思考の基礎となる考え方であり、ビジネスに利用できることから多くの企業やビジネスマンが注目していることを知っておきましょう。
ここでは、MECEの基礎情報から使用時のポイント、MECEに活用できるフレームワークまで紹介していきます。
どのようなものなのか詳しく解説するので、MECEへの理解を深めたい人は参考にしてみてください。
MECEとは?
MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略称です。
直訳してみると、互いに重複することなく、全体に漏れがないとなります。
これだけ聞いても何のことか分からないと思うかもしれないですが、MECEは論理的思考(ロジカルシンキング)の基礎的な考え方です。
論理的思考において、物事は順序に従って矛盾がないように考えていく必要があります。
正しい順序で矛盾なく思考するためには、重複と漏れがないというMECEの考えが重要です。
間違った順序で試行する場合、重複や漏れ、矛盾が存在する場合は論理的に考えることができていません。
ロジカルシンキングは難しいと感じる人が多いはずですが、MECEを意識することで客観的かつ論理的に思考できるようになります。
MECEを考えるためのアプローチ
いくつかのアプローチでMECEを考えることが可能です。2つのアプローチを紹介するので参考にしてください。
1.トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチは、全体から細かい部分にブレークダウンしていく手法です。
初めに全体から要素を分析し、目的と課題に合ったやり方で分類を行うことが特徴だと言えます。
全体像がハッキリしているとき、分類の想定が容易な場合に便利な方法です。
トップダウンアプローチを選ぶ場合は、全体像が最初にロジックツリーで描かれるので検討から開始できます。
俯瞰的に考えたい、体系的に考えたい場合に最適であることが利点です。ただし、全体像がハッキリしていない場合は漏れが発生することになりますし、ゼロベースにおけるスタート段階では使用することが難しいと言えます。
不明瞭なこと、未知の内容に対しては、次に紹介するボトムアップアプローチの後にこちらを使うことも可能です。
2.ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチは、トップダウンアプローチとは逆のやり方だと言えます。
細かい内容を集めた後に全体像を描いていく手法であり、ブレインストーミングのような洗い出すやり方で作業を進める点が特徴的です。
全体が明確ではないとき、分類について見当をつけづらいときにおすすめの手法だと言えます。
新たな領域での思考の助けとなるアプローチ方法であることが大きな魅力だと言えますが、注意点があることも知っておかなければなりません。
ボトムアップアプローチは要素を洗い出す過程にて、分類に漏れが生じてしまうことが多いです。
丁寧にしっかりと行えばこの問題は起こりにくいですが、失敗しやすい部分なので気をつけておくべきポイントだと言えます。
MECEで考えるポイント
MECEを用いるときには、4つのポイントを知っておくことが大切です。
切り口となる重要なポイントなので、紹介する内容を参考に理解を深めておきましょう。
1.要素の分解
要素の分解は積み上げ型・足し算型という呼ばれ方をすることもあり、全体をハッキリさせた後で構成する要素を取り出していく手法です。
俯瞰的に見たときに、どういった整理が可能なのかチェックします。
一定のルールに従って切り分ける作業を行ってください。要素の分解を実施することで、各要素に目を向けて分析できるようになりますし、解決策を検討することも可能です。
2.時系列の分解
時系列の分解は、名前の通り対象となるものを時間の流れや段階に従って分けていきます。
製品がお客さんに提供されるまでの流れを対象とする場合は、時系列に従いつつ仕入・製造・出荷などに分けることが可能です。
顧客が取る購買行動に関しても、段階ごとに考えていくことができます。
バリューチェーン・AIDMA・プロダクトライフサイクルなどが、この部分に該当することを理解しておきましょう。
3.対称概念で分類
対称概念での分類は、名前の通り対称となるものを列挙していく方法です。
メリットデメリット・法人個人・主観客観など、対称となっている概念を考えていきます。
対称概念の分類によって、偏った思考を避けつつ論理的に考えられるようになるはずです。人に説明を行うときにも、対称概念を意識しておくことが効果的だと言えます。
4.因数分解
因数分解は一般的な計算方法を指しているわけではありません。
MECEにおける因数分解は、分析対象を計算式で表し、それを要素に分解していくことを指しています。
加減乗除のどれでもMECEで用いることが可能です。
例をあげると、利益ついて考慮するときには、顧客ごとの単価・顧客の数・リピートの頻度を掛け合わせてあらわすことができます。
MECEの注意点
MECEには注意点もあります。多くの人が失敗しやすいポイントや重大な問題を招きやすいポイントを紹介するので、参考にしてください。
1.本来の目的を忘れないようにする
論理的思考のためにMECEを使いたいのであれば、目的を見失わないようにすることが大事です。
何のために実施しているのか見失ってしまうと、主観的に判断しやすくなる、分類を間違えてしまうという問題に繋がりかねません。
そして、いつの間にかMECEを行うことが目的となってしまっている可能性があります。MECEは手段に過ぎないことを十分に理解しておきましょう。
2.「漏れ」に注意する
漏れに注意することも重要です。重複は後から削除すれば問題ありませんが、漏れに気づかないまま進めてしまうと重要な要素が欠けたままになってしまう恐れがあります。
MECEは抜けたり漏れたりすることを防ぐために使える考え方ですが、意識しておかなければミスをする可能性があるので要注意です。
3.思い込みで分類しない
MECEを実施するときには、思い込みで分類することがないように意識しておく必要があります。
きちんと裏づけとなる情報を集めたり、客観的な情報に基づいて判断したりすることが大切です。
また、MECEを使っても全て分類できるわけではありません。ときには、ハッキリグループ分けできないものもあるので注意が必要です。
思い込みは漏れや重複、曖昧な分類は効果の減少を招くことになるので気をつけておきましょう。
MECEの具体例
使いこなせるようになるためには、ビジネスにおけるMECEの具体例を知っておくことが大切です。
新たな飲料を販売したいときにMECEを用いるのであれば、次のように考えていくことができます。
パッケージ別では、缶・ビン・ペットボトル・紙パック・カップのいずれかで販売できると考えることが可能です。
容量は50ml・300mL・500ml・1L・1.5L・2Lなどと分類していくことができます。アルコール・ノンアルコールのどちらか、販売する場所は自動販売機・スーパー・コンビニ・専門店のいずれかなど考えていくことができるでしょう。
つくりたい製品の味から何となく考えたくなるかもしれませんが、思いついたままに書き出すだけでは漏れが発生して効果が薄れます。
分解しやすい内容からピックアップして絞っていくことによって、論理的に開発すべき飲料を考えられるようになるでしょう。
もちろん、ここであげた内容は一例です。他の内容に対しても応用できるので、具体例を参考にMECEを使ってみることをおすすめします。
MECEと活用できるフレームワーク
MECEを使うときには、他のフレームワークを一緒に使うことが可能です。
併用しやすい便利なフレームワークを紹介するので、MECEを実施する際には積極的に使ってみてください。
3C分析
3C分析は、市場(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の3要素が関係する分析手法です。
市場や競合企業といった外部要因の観点によって、自社を分析するために使用できるものだと言えます。
ビジネスを行う際には、外部要因を参考に自社の立ち位置を把握することが重要です。
3C分析を用いるのであれば、何となく立ち位置を考えることにならず、自社を取り巻く環境を含めて精度の高い分析ができるようになります。
4P分析
4P分析は、流通(Place)・価格(Price)・製品(Product)・販売促進(Promotion)の4要素に分けて戦略を立てる手法です。
流通経路や配送経路、値引きや支払いの条件、品質や返品の可不可、プロモーション方法などを分析することになるでしょう。
どのような製品やサービスを、どういった方法で販売するのか考えるために役立てることができます。
マーケティングに関する複数の要素を考慮することになるため、マーケティングミックスと呼ばれることも少なくありません。
SWOT分析
SWOT分析は、強み(Strengths)・弱み(Weaknesses)・機会(Opportunities)・脅威(Threats)の4つの要素に分けて分析を行うためのフレームワークです。
様々な要素を内部環境・外部環境・プラス要因・マイナス要因に分けて考えられるというメリットがあります。
多面的な視点から考察を重ねられるため、事業が成功するための発見に繋げやすくなるでしょう。
SWOT分析を行えば、重要な分析項目を漏らすことなく自社の企業活動について考えられるようになります。
PEST分析
PEST分析は政治的(Politics)・経済的(Economy)・社会的(Society)・技術的(Technology)といった観点から、事業戦略やマーケティング戦略を考える手法です。
中期的もしくは長期的にマクロ環境を調査し、得られた情報をマーケティングに役立てます。
情報を集めるだけではなく、機会と課題について仮説を立てるところまでがPEST分析だと知っておきましょう。
自社に与える要因を探りながら仮説が立てられるので、効果的な戦略を立てやすくなります。
AIDMA
AIDMA(アイドマ)は、注意(Attention)・関心(Interest)・欲求(Desire)・記憶(Memory)・行動(Action)の5つからマーケティング戦略を立てる方法です。
購買に至るまでの顧客の変化を5つの段階に分けており、ステップごとにマーケティング戦略を立てることで効果的な内容を考えることができます。
フェーズごとに最適なアプローチ方法は違っていますが、AIDMAを活用することで的確なアプローチを実現しやすくなるはずです。
5フォース分析
5フォース分析は5つの脅威を分析するやり方だと言えます。
既存の競合他社だけではなく、売り手の交渉力・購入者の交渉力・新規参入企業・代替品などを脅威として取り扱うことになると覚えておくと良いです。
自社を取り巻く外的な脅威であることだけでなく、収益に直結する内容であることも共通しています。
5フォース分析を行う際に収益に影響をもたらす要因を深く掘り下げることによって、具体的な戦略を考えることが可能です。
7S分析
7S分析はソフトの4Sとハードの3Sを組み合わせた分析方法だと言えます。
ソフトには能力(Skill)・人材(Staff)・価値観(Shared Value)・経営のスタイル(Style)、ハードには仕組み(Systems)・組織の構造(Structure)・戦略(Strategy)をあげることが可能です。
一般的にソフトは改善に時間が掛かり、ハードは改善しやすい内容となっています。
自社における7つの要素の関係を明確にすることによって、問題点を多面的に洗い出せるようになることが特徴的です。
バリューチェーン
バリューチェーンは事業の活動を1つの連鎖として捉える考え方です。
あらゆる活動が製品やサービスの価値にどのように貢献しているか調べることができます。
価値が繋がったものと考え、時間の流れや段階ごとに分類を行っていくことになるでしょう。
原料の調達から顧客が製品を使うまでの主活動と、技術開発や事務作業などの支援活動に分けて考えることが一般的です。
こうした考え方によって、自社の事業活動における改善点と強化ポイントを探っていきます。
ロジックツリー
ロジックツリーはMECEの考え方をもとにして分解した要素を並べたものを指しており、ツリーのような形をしていることからこの名前がつけられました。
分析した内容を可視化しやすい手法であり、縦ではロジックの結びつき、横では同じレベルの要素を確認することができます。
製品の売上が低迷しているときを例にあげるのであれば、ロジックツリーで主な原因を書き出し、原因別の要因を書き出していくというような方法で分析を進めることが可能です。
MECEは万能ではない
MECEはロジカルシンキングを養うための便利な考え方ですが、万能なものではないことを知っておかないといけません。
抜けや漏れをなくすために貢献してくれるものではありますが、絶対にこれらをなくせるわけではないです。
実施者がいい加減なやり方で取り組んでしまうようなことがあれば抜けや漏れが生じてもおかしくないので、注意して使うようにしましょう。
MECEまとめ
論理的な思考を実現したいのであれば、MECEや併用できるフレームワークを活用すべきです。
これらを活用すればロジカルシンキングを実現しやすくなりますが、取り掛かる前には基礎的な知識や注意点をきちんと知っておくことが大事だと言えます。
ビジネスで役立てることができるものであることには間違いがありませんが、正しい知識を有していない人では使いこなすことができません。
紹介した内容を理解した上で、MECEを用いることができるようにすると良いでしょう。